0201:未踏破ダンジョン4日目その2
残ったオーガも蹂躙し、10階層への下り階段を見つけた。
「このまま10階層へ進むか、今日はここまでにするか。どっちが良いかな?」
『レイ殿、このまま進んでも良いと思うぞ。一応、昨日は休んだしね。しっかりと・・・では無いけど。』
あ、まだ忘れていないようだった。もうそろそろ忘れても良いだろうに。そして追い討ちとばかりにエリーが話に割り込んできた。
『レイくん。そういえば、私とアイリーンがオーガジェネラルに吹き飛ばされた時に私達の下着を見ていたよね?』
「え、えっと、何のこと? あんな戦闘中にそんな余裕なんてあるわけ無いじゃん?」
『良かったぁ、そうよね。私とアイリーンのピンクの下着は見なかったのね。』
「え? 白と黒じゃないの? って、しまった!」
あっさりと誘導尋問に引っ掛かってしまった。
『ご主人様、あなたって人はもう・・・』
アイリーンは呆れ果てている。これは怒られるよりも精神的ダメージがあるな。
でも俺にも言い分はある。見えてしまったものは仕方が無いだろうと。しかし、これを言ってしまうとスカートからズボンに変わってしまう可能性が高いので絶対に言えないな・・・
『ほら、レイさん。10階層に行きますよ。レイさんがスケベなのは分かってますから。』
サーラよ、何のフォローにもなっていないよ。とりあえず、皆で10階層に降りた。まずは仮のポータルを設置した。
他のポータルの本数は3本だ。ここには俺達以外には3パーティーしか到達していないということか。まだ調査隊が結成されてそれほど時間が経っていないから仕方が無いのかも知れないが少ないな。
10階層は9階層と同じく巨大な木が生い茂る森だ。1つだけ異なるのは森の奥には木ではなく岩山がそびえている。
「あの山を登れってことだよね?」
『そうだと思うけど・・・ちょっと険しそうだよね、レイくん。』
確かに険しそう岩山ではあるが、あの岩山に目的である下り階段があるなら登らざる得ない。
『まぁ、まずは行ってみてから考えようよ。ねぇ? 旦那様。』
「そうだね。確かにマリーナの言う通りだよね。まずは、あの岩山を目指すとするか。」
9階層の森と類似しているだけあって出てくるモンスターはオーガばっかりだった。さすがにゴブリンのような数は出てこないが2~3匹ずつが繰り返されると疲れてくる。
「これは人数が少ないパーティーでは厳しいだろうね。」
『そうね、こんなにモンスターが出てくるようだとパーティー同士で組まないと厳しいでしょうね。そういえば、レイは他のパーティーと組んだことが無いの?』
「そうだね。組んだことは無いかな。あまり組みたいとも思わなかったしね。エメリアはどうなの?」
『私はパーティーにすら入ったことが少ないかな。大抵ソロでやっていて、たまに必要に応じて臨時のパーティーメンバーになることが多かったかな。』
へぇ、そうなんだ。よくソロで冒険者が続いたな。俺はそうそうにソロは諦めたけどね。そのおかげでアイリーン達が仲間になったわけだから正しい判断だったと思っているけどね。
オーガを蹴散らしながら岩山の麓までたどり着いた。上を見上げると結構な急斜面になっているが登れない程では無いと思う。岩山の高さも見た感じでは数百mくらいだろうし。
「一応、岩山の周囲を確認してみようか。もっと登りやすい場所があるかも知れないし。」
という事で、岩山の周囲をぐるりと回ってみることにした。すると、岩山の裏側に登るための道が存在していた。道といっても2人が並んで通れるくらいの幅の道だ。
「途中でモンスターが襲ってきたら危険だから警戒だけはちゃんとしておこうか。」
魔法をすぐに放てるように準備しつつ岩山を登っていく。するとハーピィーがかなり上空から俺達を監視しているのが見えたが襲ってくる気配が無い。
「こっちが警戒していることが分かるのかな?」
以前、ハーピィーを倒した時は寝込みを襲うというやり方だったから実際のハーピィーの実力は全く不明だ。
『レイさん。ハーピィーは元々警戒心が強いモンスターなんですよ。なので、こちらが警戒しているのが分かれば襲ってくることは無いと思いますよ。』
ふ~ん、なるほどねぇ。上空にいるハーピィーを眺めているとマリーナから
『旦那様、ハーピィーの胸を見ているんですか?』
という一言が。するとアイリーン達が何とも言えない視線を送ってきた。
「ち、違うよ。そもそも、あんな高いところを飛んでいるハーピィーの胸なんか見えるわけ無いじゃん。」
『う~ん、確かに見えないですかね・・・』
全員がハーピィーを凝視している。
『確かに見えないね、主様。』
『『そうね、レジーナが見えないんじゃ無理よね。』』
俺の言葉は信じてもらえなかったが、レジーナの言葉は信用されたようだ。そして全員から凝視されていたハーピィーは何処かに飛んでいってしまった。
引き続き、岩山の道を登ること30分程で山頂付近まで到着した。すると洞窟が見つかった。
「普通に怪しい洞窟だよね。しかし中が真っ暗だね。これはトーチが必要だね。」
アイテムボックスからトーチを取り出して明かりを灯してみた。洞窟の中は想定以上に広いようで1本のトーチでは明かりが足りない。トーチを5本に増やして周囲を確認した。
トーチ5本分の明るさで大分周囲の状況が分かるようになってきた。すると目の前に無数の白い糸が存在しているのが分かった。
「これって、ひょっとしたら蜘蛛の糸かな?」
『触っちゃ駄目だ、レイ殿。おそらくロックスパイダーの糸だ。』
スパイダーということはやっぱり蜘蛛の糸か。エメリアが警戒するという事は厄介なモンスターである可能性が高いということだろう。
トーチ5本分の明るさでは洞窟の隅々までは分からない。なので気配探知を使うが気配が無い。
「レジーナ、敵の気配を感じる?」
レジーナは首を横に振るだけだ。レジーナでも気配を感じないようだ。
「ひょっとしたらモンスターがいない?」
『いや、そんなことは無い。レイ殿、糸をよく見てみろ。』
エメリアに促されて糸をじっと見つめると微妙に糸が揺れている。ということはロックスパイダーは何処かに隠れているということか。
俺とレジーナに気配探知で探知出来ないということはスキルの可能性があるのか。
「俺のファイアボールで洞窟内を焼くか?」
『ご主人様、洞窟の中で生き埋めになりたいのですか?』
あっさりと却下されてしまった。良い作戦だと思ったんだけどな。
『レイさん。私が囮になるわね。わざと糸に引っ掛かれば、ロックスパイダーが現れると思うんだけど。』
「ち、ちょっと待ってよ。サーラにそんな危険な事はさせられないよ。なら囮は俺がやる。」
『レイさん、囮は一番戦力が低い人間がするものですよ。それにちゃんと助けてくれるんでしょ?』
絶対に折れない気が無いという目をしている。
「………分かった。絶対に助けるからね。」
『レイさん、お願いよ・・・じゃあ、いくわね。』
サーラがわざと糸に絡み付いた。すると、何処からともなくカサカサという音と共に巨大な蜘蛛が出現した。
〈鑑定〉
ロックスパイダー
スキル:気配遮断
「予想通り、ロックスパイダーだよ。気配遮断というスキルを持っているね。」
あのスキルのおかげで俺の気配探知はさておき、レジーナの気配探知もすり抜けたのか。是非とも欲しいスキルだな。
ロックスパイダーは糸に絡まっているサーラを引きずり込もうとしているが、俺やアイリーンやエリーがブロックしている。横に回り込もうとしている武闘派4人衆には気にしていない様子だ。というか4人衆相手に周囲を注意する余裕は無いか。
4人衆がほぼ同時にロックスパイダーの足を斬り落としたため、8本足が半分になってしまった。
『ギ、ギィィィ!』
怒り狂ったロックスパイダーが頭はこちらに向けたまま、エビのように尻をこちらに向けた。
ヤバいと思った瞬間、尻から大量の糸が吐き出してきた。するとアイリーンとエリーはすっと横に避けたので俺も避けようと思ったところ、俺の後ろにはサーラがいた。
これで俺まで避けたらヤバい! 後で何を言われる分からない。というかサーラだけを危険に晒すわけにはいかない。
なので神刀で糸を受け止めようとしたが、受け止めきれず、俺も糸に絡まってしまった。しかも後ろにいたサーラと一緒にだ。
なんとか脱出しようと足掻くが、それがむしろ良く無かった。いつの間にかサーラとべったり引っ付いてしまった。
『ちょっと、レイさん。どこを触っているんですか?』
「仕方無いでしょ? こんな体勢なんだから。」
………
………
なんていう状況にはならなかった。何故なら俺とサーラは背中合わせになっているからだ。
そして、他のメンバーは俺とサーラを放置してロックスパイダーを無事に討伐した。ロックスパイダーを討伐した後、無事に糸から解放された。身体中がベトついているが。
その後、洞窟の奥を調査すると11階層への下り階段を発見し、11階層へ降りて仮のポータルを設置すると、
『レイさん。今日はもう帰りましょう! 早くお風呂に入りたいです!! 身体中がベトベトします・・・』
色々と苦労したが新しいスキルも取得出来たので良かったと思う。早く新しいスキルを使ってみたいが、俺も早く風呂に入りたいので、魔石やドロップアイテムは明日売ろう。
8階層での成果は
フォレストゴブリン x10
ジャイアントアナコンダ x8
キラーファング x12
ロックバード x9
迷彩の革 x4
ヘビ革 x3
虎の牙 x5
岩の羽 x3
9階層での成果は
オーガ x15
レッドオーガ x12
イエローオーガ x10
ブルーオーガ x13
オーガジェネラル x1
巨人の斧 x2
オーガの革 x13
巨人の棍棒 x1
10階層での成果は
オーガ x25
ロックスパイダー x1
巨人の斧 x3
オーガの革 x8
蜘蛛の糸 x1




