0002:転生します
脊髄反射のような速さで両手をあげて即答した。
「はい! はい! はい! 異世界に転生したいです! 是非ともお願いします! 」
『ふふふ、「はい」は1回で宜しいですよ。』
「あ、スミマセン・・・つい興奮してしまいました・・・ごめんなさい・・・」
目の前の美人女神様から転生のお誘いだ。これが美人女神様のお誘いでなくても断る理由が何一つ無い。
入院中に暇潰しに読んでいた異世界転生ものの小説の世界が俺を待っていたのだから興奮しても仕方が無いだろう。
うん、そう思うようにしよう。
『まぁいいです。それにしても迷うことなく即断即決ですね。いいですねぇ。私、そういうの好きですよ。ご褒美に普通なら3個までのスキルを5個授けますね。』
「え、ほ、本当ですか? ありがとうございます! で、で、でも本当に良いんですか?」
美人に好きと言われた。もちろん意味が違うのは分かっているのだが初めてだ。二次元の女の子には言われたことはあるけど。
現実に目の前で美人から言われると凄くドキッとするな。思わず吃ってしまった・・・我ながら恥ずかしいな。
しかし、ご褒美にスキルが5つも貰えるのか。
『ふふふ、良いのですよ。ご褒美ですからね。』
淡々と会話していた女神様が初めて微笑んだ。
やっぱり綺麗だよな、笑顔が素敵すぎる。
『最近の子たちに比べたら、貴方は凄く素直ですしね。最近の子たちは、やれチートだ、やれハーレムだ、スキルが少ないだ、とかムカつくことばっかり言いやがって・・・はぁはぁ。』
あ、怒り始めた・・・こめかみに青筋が・・・美人は怒ると恐いな。
俺がちょっと引き気味になっていると女神様も気付いたようだ。
『………あ、失礼。ちょっと嫌なことを思い出してしまいました。さ、さぁ、こちらからお好きなスキルを選んでください。』
この女神様、意外と切り替えが早いな・・・
目の前にスクリーンみたいなものが出てきた。スクリーンの中にスキルと思われる言葉が色々とある。数が多いと選択に悩むね。
スクリーンに表示されているスキルは定番のスキルが満載だ。
・鑑定
・アイテムボックス
・身体強化
・言語解析
・錬金術
・魔法全般
・武術全般
等々
「言語解析は必須だよな。会話が出来ないと生活すら難しそうだしね。あと荷物を大量に持って移動したくないからアイテムボックスも外せないよなぁ。それと魔法全般があるっていうことは・・・」
等と独り言を言いながらスクリーンを見てみると気になるスキルがある。
【スキル強奪】
普通に考えれば、スキルを奪って自分のものにするスキルだよな? これって、ひょっとしたらすげぇチートスキルなんじゃないか?
「スミマセン、女神様。ちょっと質問してもいいですか?」
『駄目です。スキルに関しての質問は受け付けられないんです。スキルの詳細に関しては御自身で解読して下さいね。』
残念ながらスキルに関する質問は駄目らしい。
「そんなんですか。まぁ、自分でスキルを理解していくのも楽しそうなのでいいかな。じゃあ、転生する異世界がどういう場所かを教えてもらってもいいですか?」
『まぁそれくらいなら。これから転生してもらう世界は魔法が使えて、モンスターが普通に住んでいる場所になりますね。貴方が転生したいと妄想していた世界と同じだと思って下さって結構ですよ。』
え~と、妄想って言わないで欲しいなぁ。事実なのは間違いないんだけどさぁ・・・
「分かりました。ありがとうございます。魔法が使えるということは、これは必須だよな。やっぱり魔法は使ってみたいしね。元々は3個のはずだから1個は博打しても、普通よりも1個多いと思えばいいか。」
『どうですか、そろそろ決まりましたか?』
「はい、決めました。俺が選ぶスキルは、アイテムボックス、言語解析、鑑定、魔法全般、スキル強奪にします。」
『分かりました。それでは選択したスキルを貴方にセットしますね。では、こちらに来て下さい。』
言われた通りに女神様の目の前に立った。すると女神様が俺の頭に手を置いた。なんか凄く良い匂いがするな。
『………はい、完了しましたよ。ではステータスと唱えてみて下さい。』
「え、もうですか? 早いですね。」
もう少し、この匂いを堪能したかったのだが。
『ほら、余計なことを考えていないで確認してみてください。』
「あ、はい、分かりました。ステータス。」
ステータスと唱えると目の前にスクリーンが現れて俺のステータスとスキルが表示された。
名前:相原 零士
種族:ハイヒューマン
年齢:15
筋力:20
体力:18
魔力:50
器用:13
スキル:
【鑑定】【アイテムボックス】【言語解析】【魔法全般】【スキル強奪】
「おぉ、すげぇぇ。この数字が高いのか低いのか分からんけど・・・」
『そうですねぇ、これから行く世界の成人男性の平均は20~50くらいのはずですよ。』
「平均というわりに幅が広いですね?」
『職業によって変わりますし、種族によっては上がりやすい、上がりにくいステータスがありますからね。』
それにしても筋力と魔力が高いな。
「そうなんですか。ちなみに俺ってもやしっ子だったはずですが?」
魔力はさておき、筋力が成人男性の平均値になっているよ。最低ラインだけど。
『えぇ。そうだったんですけど、さすがに以前のヒョロヒョロ状態だとすぐに死んでしまうので少しだけ丈夫な身体にしてあげましたよ。』
よくよく自分の身体を確認してみると確かにヒョロヒョロの身体がしっかりした身体になっている。
そうかぁ、前の身体だとすぐに死んでしまうのか。実は異世界は結構危険な場所なのかも知れないな。それでも異世界には行くけどね。
あれ? ステータスをよく見ると種族も変だぞ。種族がハイヒューマンになっている?
「スミマセン、追加で教えて欲しいんですが種族がハイヒューマンとなっているようなんですけど?」
『あ、それですか。それは丈夫な身体に修正したら、そうなってしまったんです。でも丈夫さは保証しますよ。』
よく分からないけど大丈夫そうだ。
「そうなんですか。でも、それって修正というよりも改造のような気がするんですけど・・・まぁいいか。何から何まで、ありがとうございます。でも、なんでそこまでしてくれるんですか?」
『貴方の境遇があまりにも可哀想だったのでね。さすがに3歳から15歳まで入院していて、これからという時に死んでしまったのはさすがに可哀想過ぎたのでね。』
「そうなんですか。でも本当にありがとうございます。」
『では、本当に最後ですか、こちらのガチャを引いて下さい。転生記念プレゼントとして武器が当たりますよ。頑張って良い武器を選んで下さいね。』
目の前に巨大なガチャが現れた。
「………え、ガチャですか?」
『………はい。ガチャですよ。何が当たるかは貴方の運次第です。』
まぁ、何が当たっても損はしないよな。まさかの呪われた武器じゃなければ・・・だけど。とりあえず、言われるがままにガチャを引いた。
しかし、何も出てこない・・・まさかハズレを引いたのか?
『貴方のアイテムボックスにガチャの武器を入れてありますので忘れずに。丸腰では困ると思いますからね。』
ちゃんと武器を貰えたらしい。良かったぁ。ちょっとビックリしたよ。
「とりあえず、ありがとうございます。」
『いえいえ。それでは、そろそろ転生させますね。新しい人生を謳歌して下さい。』
「何から何まで、本当にありがとうございました。あ、そうだ。是非、女神様の名前を教えて下さい。」
『私の名前ですか? 私の名前はミロです。では、また死んだらお会いましょう。いつになるかは貴方次第ですが、あまり早く再会することが無いように祈っていますよ。』
ここは死後の世界だもんな・・・また会いたいけど会わないようにしないとな。