0192:ドラゴン肉は旨かった
解体されたドラゴンの素材は全て俺のアイテムボックスの中に収まっている。
「じゃあ早速、武器屋に持っていって武器や防具を作ってもらおうか。」
『ちょっと待って。レイ殿には信頼出来る武器屋の伝手はあるのか?』
「え? なんで? 普通にその辺の武器屋じゃ駄目なの?」
『ご主人様・・・ドラゴン素材は白金貨で取引されるような素材ですよ? 変な武器屋に預けたら持ち逃げされる可能性がありますよ?』
白金貨って、確か日本円にすると1億円だったかな。だとすると、俺のアイテムボックスの中には数百億円から下手すると数千億円分のドラゴン素材があることになるのか。
「………確かに持ち逃げするかも知れないね。」
持ち逃げして、他国に逃げ込めれば一生遊んで暮らせるかも知れない。チャレンジする価値はあるよな。
「ただ、そうなると宝の持ち腐れになっちゃうよね。それはそれで勿体無いよねぇ。折角のドラゴン素材なんだし。」
そうなると、やっぱり信頼出来る武器屋かぁ。誰かいないかなぁ?
うん? あれ? あのヤクザみたいな外見はひょっとしたら。
「あれ? おやっさんじゃないか。どうしてここにいるの? もしかしてダンジョン都市の武器屋は潰れちゃったの?」
『うん? おぅ小僧じゃねぇか。久しぶりなのにろくでもねぇ挨拶だな。残念ながら武器屋は潰れてねぇよ。とは言っても小僧のせいで潰れかけたけどな。がははは。』
おやっさんは俺の肩を、俺はおやっさんの背中を叩きあっている。
『ねぇアイリーン、レイ殿があのオジサンの店を潰しかけたって本当なの?』
『え、えぇ、本当かも知れない・・・』
『さすがレイ殿だ。鬼畜だな。』
『だろう? このお嬢ちゃんは良く分かっているな。』
「ちょっと待ってよ。少し値引き交渉しただけだよ。」
『おいおい、小僧。白金貨1枚は少しとは言わないぞ?』
『『ひ、酷いですね。極悪ですね。』』
どうやら駄目だ。ここに味方はいないようだ。なので話題を変えるしか無いな。
「で、おやっさんはなんでダルハイムにいるの?」
『そりゃあ、エドワード公爵の下で仕事がしたいからに決まってるだろう。たがら引っ越ししてきたんだよ。』
「へぇ、そうなんだぁ・・・そうだ、おやっさんって武器を作れるよね?」
『なんだ急に? そりゃあ作れるが、それがどうかしたか?』
「俺達の武器と防具を作ってくれないかな?」
『何を言っているんだ? お前達には竜素材の武器と防具を売っただろう? まさかもう壊したのか?』
「いや、壊れた訳じゃないよ。ただ、良い素材が手に入ったから装備を新調したくなってね。」
『………とりあえず、俺の店がすぐそこにあるから、そこで詳しく教えてくれ。』
とりあえず、おやっさんの店に行くことにした。ダルハイムでのおやっさんの店はダンジョン都市の時と同じような感じだ。もうすでに10年以上経営しているようなボロさを感じる。
とりあえず、薬剤師ギルドの話を抜いてウィングドラゴンを倒して、素材が丸ごとあることだけを話した。
『な、ま、マジか? 本当にお前達だけでドラゴンを倒したのか?』
「いや、倒したわけじゃないよ。ちょうどドラゴンの寿命が尽きただけで運が良かっただけだよ。」
『いやいや、ドラゴンと対峙しただけでも大したもんだぞ。普通は一瞬であの世行きになるぞ?』
確かに死にかけであの強さだったからな。全盛期のドラゴンと出会ったら死ぬかもね。
『とりあえず、武器を作れるかどうか見てみるから鱗1枚と骨1本を見せてみな。』
アイテムボックスから鱗を1枚取り出して、おやっさんに手渡した。おやっさんは鱗を触りながら唸っている。
………
………
『この鱗と骨なら竜素材の武器よりも凄ぇ武器が作れるな。というか、本当に俺が作っても良いのか?』
「もちろん。むしろ、おやっさんに作って欲しいんだよ。」
おやっさんなら良い武器や防具を作ってくれると思う。何よりも持ち逃げなんかしないと信用出来る。
『分かった。俺にまかせておきな。全員分の武器、防具を作ってやるぞ。ただし、全員分となると作るのに30日間は掛かるぞ。あと作業料として大金貨8枚ってとこだな。』
そりゃあ、そうだろうな。むしろ30日で足りるのか心配だけどな。作業料は全然問題無い。
「大丈夫だよ、それじゃあよろしくお願いしますね。」
『おぅ、 楽しみに待ってろよ!』
良かった。これで装備の性能アップが見込めるな。色々と強くなっていく実感が湧いてくるな。一人で感動しているとレジーナが俺の服を引っ張ってきた。
『ねぇ主様、早く帰ってドラゴンの肉を食べようよ。』
アイリーン達のほうを見ると皆が早く帰ってドラゴンの肉を食べたい、という表情だ。こいつらにとってはドラゴン素材の装備よりもドラゴンの肉のほうが大事らしい。ドラゴン素材の装備にはあまり興味が湧かないらしい。
『ははは、お嬢ちゃん達には武器の浪漫を理解するのは無理だよな。』
おやっさんの言う通りだな。武器は男の浪漫なのかも知れない。あとはおやっさんに託して俺達は馬車に戻ってきた。
「さてと、お待ちかねのドラゴンの肉を使ったステーキにするか。」
『『おぉぉぉぉ!!』』
今までに無いくらいの歓喜の声だ。ドラゴンの肉をしっかりと焼いていく。香ばしい匂いが辺りに充満している。
『『ねぇ? まだぁ? 早く!』』
料理が出来ない面々が催促してきて五月蝿い。ドラゴンの肉を焼く作業を途中からイザベラ達にまかせて、俺はステーキのもう一品としてスープを作り始めた。玉ねぎを使ったさっぱり味のスープだ。
スープが出来た時点でステーキも人数分焼き上がったようだ。全員がテーブルに座ってステーキを食べ始める。ドラゴン肉にナイフを入れるたと、スッと切れる。
「凄いね、肉がかなり柔らかいね。味のほうはどうかな?」
ナイフで一口サイズに切ったドラゴン肉を口へ運んだ。
「う、うまい! 歯ごたえがあるのにすぐに口の中でとろけるね。しかもジューシィだね。」
俺の食レポを誰も聞いていない・・・
全員、一心不乱に肉をかぶり付いている・・・みんな美人なのに勿体無いな・・・
しっかし、旨そうに食べるね。すると横からレジーナが
『主様、肉食べないなら私がもらうけど?』
「駄目だろ、俺の肉だよ!」
『えぇぇ、ケチですね。』
いやいや、ケチじゃないぞ。1人あたり2Kgくらいの量を用意したはずなんだが・・・
『『じゃあ、食後にプリンを食べようか。』』
まだ食べるのか・・・凄いな・・・
「………食べすぎると、太るぞ。」
『『それを言うな~!』』
気にしていたのか・・・




