0183:ゲートを使ってみた
『ウッド・エンシェントとの盟約に従ってレイにゲートのスキルを授けますね。』
「ゲートのスキルですか?」
ティターニアからゲートスキルの説明を聞いたところ、ゲートスキルとはワープであった。
「凄いスキルですよね。こんな凄いスキルを頂き、ありがとうございます。」
『確かに凄いスキルなんですが、いくつか欠点がありますよ。』
え? 欠点? それも複数も。
『まず、1つ目の欠点ですが、ゲートは1度行った場所でないと移動出来ません。』
そりゃあ、そうだと思う。これは欠点には入らないよな。
『続いて2つ目の欠点ですが、ゲートは1日1回しか使用出来ません。理由は3つ目の欠点が原因となります。』
なるほど、1日1回限定か。欠点といえば欠点かも知れないが、それほど痛くないな。
『最後が3つ目の欠点になりますが、ゲートを使用すると必ず魔力が枯渇します。しかも使用者のみが対象です。』
「へ? 必ずですか? 例えば、すぐ近くに移動してもですか?」
『はい。すぐ近くへの移動でも必ず魔力が枯渇しますよ。』
必ず魔力枯渇になるのか・・・目眩と頭痛と吐き気のトリプルコンボになるのか。
『これはもう、旦那様にしか出来ないことだよね。』
「は? 何を言っているんだ?」
マリーナの一言から俺に押し付ける言葉が聞こえ始めた。
『そうですわね、レイにしか出来ないわね。』
『レイくん、頑張ってね。』
『御館様なら大丈夫ですよ。』
『レイ殿なら、きっと堪えられるはず。』
「え? ちょっ、ちょっと待ってよ?」
誰も援護は無い・・・
『レイさん、諦めてください。』
『主様は強い。だから大丈夫。』
『………レイ様、頑張って。』
『ご主人様、仕方が無いですよ。』
『レイよ、諦めなさい。では、ゲートのスキルはレイに付与しますね。』
「え、ちょっと待って下さい。まだ相談が終わって無いですって・・・」
………
………
『………これでゲートスキルの付与は終わりましたよ。ちゃんとレイに付与しましたからね。』
ティターニアは満面の笑みで俺に微笑んでいる。
「………はい。ありがとうございます。」
圧倒的な民主主義の結果、ゲートスキルは俺に付与されてしまった。こうなったら仕方がないな。極力ゲートを使うのは避けよう。
その後はティターニアと会話をして時間が過ぎていった。さすがにそろそろ戻るとするか。
「ティターニアさん。そろそろ俺達は元の場所に戻りますね。また遊びに来ます。」
『はい。いつでも遊びに来て下さいね。歓迎しますよ。』
ティターニアはここに来た時と同じように黒い輪っかを出した。
「あれ? これってゲートですよね? ティターニアさんは既に今日の分を使ってますよね?」
『はい。ゲートですよ。妖精はゲートを使い放題なんですよ。』
「え、なにそれ? 狡くないですか?」
『狡くはないですよ。そんなもんですよ。』
そんなもんだと言われると何も言えないな。納得は出来ないが。とりあえず、ティターニアのゲートで無事に巨大樹の森に戻ってきた。
そういえば、妖精の里に向かうときにテントや寝袋をそのままにしていたが、テントや寝袋は無事だった。
「よく無事だったな。」
テントの周りを見ると小さな妖精が無数飛んでいるのを見つけた。
「ひょっとしたら、君達が俺達のテントと寝袋を見張っていてくれたのかな?」
『くすくす、まぁね。』
『あははは、でも誰も来なかったよ。』
『ふふふ、じゃあ、またね。』
「そうか、ありがとう。」
『『どういたしまして~』』
小さな妖精達はゲートを使ってどこかに行ってしまった。
「さてと、俺達もダルハイムを戻るとしようか。」
テントと寝袋をアイテムボックスにしまい、帰り支度をしていると、マリーナがとんでもないことを言い始めた。
『ねぇ、旦那様。ゲートを使ってみてよ。』
………
………
一瞬、軽く了解と言いかかった。あぶねぇ。
「ちょっと嫌だな。魔力枯渇になるんだよ? それも、意味も無くだよ?」
『ほら、1度は使ってみておかないと、いざという時に使えないかも知れないでしょ?』
「………確かに。マリーナにしては珍しくまともな事を言っているね。」
『ちょっ、ちょっと~、珍しくって失礼じゃないですか? 私はいつもまともな事を言っているはずですよ。』
そんなことはない。いつもはおかしなことしか言っていないはずだ。すると、アイリーンがとんでもないことを言い放った。
『どっちもどっちですよ。お二人は・・・』
「それはおかしいでしょ?」
『そうよ、旦那様と同じはず無いでしょ?』
『『そうね。どっちもどっちかな。』』
食い下がろうとしたが全員から、どっちもどっちと言われてしまった。
『ねぇ? レイは魔力ポーションを持っていないの? 魔力枯渇しても多少は回復するはずよ。』
魔力ポーション? そんなものが存在しているのか。考えてみたら普通のポーションがあるくらいだから、魔力ポーションがあってもおかしくないか。
「サーラ、ひょっとして魔力ポーションって持ってたりする?」
『いえ、持っていないですよ。あれって凄く高いし、凄く不味いですからね。』
「え? 高いのに不味いの?」
『はい。物凄く不味いです。飲んだら最後、しばらくは口の中に苦味は数日は残りますよ。』
「何それ? 嫌だなぁ・・・それなら魔力枯渇のほうがマシなんじゃないの?」
『ほらぁ、旦那様。じゃあ魔力枯渇で良いじゃないですか。』
「う~ん、そうなのかなぁ。なんか騙されてる気がするんだけどなぁ・・・」
『そんな事は無いですよ。ほら、さっさとゲートを試してみましょうよ。』
こういうおねだりをする時には、必ず俺の手を握って自分の胸に引き寄せてくる。Cカップの胸でもそれなりの感触がある。そして、俺はそれに対して抗えない。
それを見ていたイザベラとエメリアが俺には聞こえないほどの小声で会話をしている。
『なるほど、ああやってレイを操縦するのね。勉強になったわ。』
『しかし、レイ殿は単純だな・・・』
最後はマリーナに押しきられる形でゲートを使ってみることになった。
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結論から言えば、ゲートは使用出来た。無事にダルハイムの近くまで一瞬で移動出来た。
『『やっぱり、凄いですよね!』』
………
………
「うえっぷ、そ、そう? それは良かったね・・・うぇっ。」
魔力が枯渇した俺は吐き気と目眩と立ち眩みと戦っている。あっさりと負けそうだけど。
『よしよし、頑張った旦那様にご褒美をあげないとね。』
そう言ってマリーナが俺の頭を抱えて自分の胸に抱き寄せた。
………
………
「ごめん、こっちのほうがいいな。」
と言ってサーラの胸に顔を埋めた。別にマリーナの胸が嫌いなわけでは無いが、頭がクラクラしている時はふわふわのほうが良い。
『………コラ! 旦那様、それってどういうこと? まさか、私の胸が小さいってこと?』
しまった。面倒臭い地雷を踏んでしまった。ゲートを使った後遺症なのか、後先考えずに行動してしまった。さてと、どう言い訳をしようかと考えているとイザベラがフォローしてくれた。
『マリーナ、落ち着きなさい。男は弱っている時は、サーラみたいに優しい女に振り向くものなのよ。なので、マリーナもサーラのような女になることね。』
『えぇ、それは無理だよ~。仕方がないな。今回は大目に見ることにするよ。』
優しい女になるのは無理なのか・・・まぁ、優しいマリーナって想像もつかないし、今のままでいいか。
いいんだよね・・・




