0181:巨大樹の森の奥で
何故だろうか、魔眼は不人気スキルだった。理由を聞いてみたところ
『地味だよね?』
『目立たないよね?』
『見えない攻撃って卑怯だよね?』
というのが不人気の原因だった。
「魔眼だよ? 格好良くない? 見えない攻撃って凄くない?」
『『全然・・・』』
残念ながら、誰も魔眼の良さ、素晴らしさを理解してくれなかった・・・
しまいには、
『『勝手に付与したら怒りますからね?』』
とまで言われてしまった。確かに勝手に付与してしまおうかと思っていたので釘を刺されてしまった・・・
仕方が無いので、もう1つの魔眼はアイテムボックスをしまっておくことにした。そのうち誰かが魔眼の良さに気付いてくれるだろう・・・
「………さてと、とりあえず依頼されていたサイクロプスは倒したけど、このあとはどうしよう?」
討伐依頼は完了したのでダルハイムに戻るも良しだし、このまま他のモンスターを倒すのも良しだ。俺としてはもう少しモンスターと戦闘してイザベラ、エメリアとの連携を確認したい。
『そうですねぇ。メンバーも増えて連携の仕方も変わりましたので、もう少しモンスターを倒してから戻っても良いかと思いますよ、ご主人様。』
アイリーンの一言でもう少しモンスターを倒すことになった。連携の確認も大事だけど、俺としては早く魔眼を試したくてウズウズしている。
「じゃあ、早速、森の奥に行ってみようか。」
『あれ? 御館様にしては珍しく積極的ですね。いつもなら戦闘に関して消極的なのに。』
『レイさんのことだから早く魔眼を試してみたいんでしょ?』
『あぁ、なるほどね。旦那様らしいよね。』
間違っていないので何も反論は出来ない。反論は出来ないのだが、なんか子供扱いされているような気がするんだけど・・・気のせいかな?
とりあえず森の奥に進むことにした。森の奥に進むにつれてモンスターとの戦闘が増えていく。出てくるモンスターは巨大樹の森にピッタリの巨大モンスターが多い。
ギガンテスは最初に戦って以来遭遇していないが、サイクロプス、オーガの人型(?)モンスター以外にも、ジャイアントスパイダー、ジャイアントモスといった虫型モンスター等も出てきた。
「森の中だと時間が分かりにくいけど、そろそろ夕方になるのかな?」
『主様、腹が減りました。もう夕食の時間ですよ。早く夕食にしましょう。』
どうやら、レジーナの腹時計では夕食の時間らしい。多分、正解なんだが・・・とりあえず、レジーナに催促されたので急いで夕食の準備をした。準備といってもアイテムボックスから取り出すだけなんだが。
夕食を食べながら見張りに関しての話をした。
「さすがに、この森での見張りは俺も参加するよ。」
『そうですね、申し訳ないですが、ランクAモンスターが出てくるような森の中なので、ご主人様にも見張りをやってもらいましょうか。』
アイリーンからも見張りに参加する了承を得たので、あとは見張りの順番決めだな。
俺達は10人いるけど、2人ずつの5組にするのは危険だよな。そうすると、3人が2組、4人が1組の合計3組で見張りをするのがベストだよな。
「安全第一で3組に分けて見張りをすることにしようか。」
俺の独断で見張りを3組に分けることにした。
第1陣は
アイリーン、イザベラ、メリッサ
第2陣は
エリー、エメリア、ジャンヌ
第3陣は
俺、マリーナ、レジーナ、サーラ
とした。するとアイリーンが俺の耳元に囁いてきた。
『あの、ご主人様。本当に大丈夫ですか?』
「あぁ、大丈夫だと思うよ。ヤバければ皆を起こすしね。」
とりあえず、夕食も食べ終わり、見張りの第2、3陣はテントに寝に行き、第1陣は見張りを開始した。
ーーーーーーーーーー
『レイくん、起きてください。見張りの番ですよ。』
「う、う~ん、今、起きるから・・・」
久しぶりの見張りのためか、すぐに身体が起きないな。やっぱり見張りは定期的にやったほうがよいな。
身体を起こすとエリー、エメリア、ジャンヌが順番にキスをしてきて寝袋を入り込んでいった。そして続いてマリーナ、レジーナ、サーラがキスをしてきて俺をテントの外に連れ出した。
「どうやら、モンスターは襲って来なかったようだね。」
『そのようですね、レイさん。まぁ、ランクの高いモンスターは昼型が多いですからね。』
「へぇ、そうなんだ。」
『もちろん、全部がそうという訳じゃないですけどね。』
モンスターの生態系の話が続いていると、レジーナが何かを感知したようだ。
『主様、サーラ、静かに。向こうに何かがいます。モンスターじゃない感じがする。』
え、モンスターじゃない何かってなんだ? レジーナが示す方向を見ていると、次第に小さく光る物体が複数見えてきた。よく見ると徐々にこちらに近づいて来ている。モンスターような敵意は感じないな。
『マリーナ、ちょっと全員を起こしてきてくれるかな。』
マリーナが全員を叩き起こしてきた。
「みんな、ごめん。ちょっと、あれを見て欲しいんだけど、あれって何か知ってる?」
『何あれ?』
『なんで光ってるの?』
やっぱり分からないらしいな、と思った時にアイリーンがポツリと
『もしかして、あれって妖精?』
妖精? そんなのがいるのか? ファンタジーな世界だから妖精がいてもおかしくは無いか。
「妖精かも知れないってこと?」
『正確には分かりませんが・・・』
とりあえず、相手の出方を見ることにした。
………
………
しばらく無言が続いた。静寂のまま、俺達全員がじっと光る物体達を見つめていた。
すると、光る物体達から笑い声のようなものが聞こえてきた。
『くすくす、あれ? こっちを見てる?』
『ふふふ、そうね。こっちを見てるね。』
『あははは、どうしようか?』
光る物体達から敵意が感じられないので思いきって話しかけてみた。
「あ、スミマセン。あなた達はこの森に住んでいる妖精ですか?」
『くすくす、話しかけてきたね。』
『ふふふ、そうね。どうしようか?』
『あははは、話してみる?』
「もし、ここがあなた達の住んでいる場所なら勝手に入ってしまってスミマセンでした。もし良かったら少しだけでも話をさせてもらっても良いですか?」
『くすくす、どうしようか?』
『ふふふ、お母さんを呼ぶ?』
『あははは、そうね。お母さんを呼ぶね。』
お母さん? あの光る物体達は何かを呼んだようだな。ヤバいのが来たらすぐに逃げられるようにしておいたほうが良いかな。
「みんな、もしもの場合は全力で逃げるからね。テントとかは棄てていくよ。」
『『はい。分かりました。』』
『くすくす、お母さんが来た。』
『ふふふ、そうね、お母さんが来たね。』
『あははは、お母さん、こっちだよ。』
光る物体達が、お母さんが来たと言うと光る物体達の上から大きな光る物体が現れた。
眩しいな、よく見えないな。
しかし大きく光る物体の光が徐々に収まって来た。すると、目の前には羽が生えた綺麗な女性が飛んでいた。
『初めまして。人の子達よ。』




