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0175:ダルハイム攻防戦3日目


ダルハイム攻防戦での束の間の休息を満喫していたが、公爵の馬車に行く時間がやって来てしまい、イザベラと一緒に向かっている。


今回は自分から続けて頑張ると宣言してしまった以上、特に文句は無い。まぁ、頑張ると言わされてしまった感じはしているが。


イザベラと一緒に公爵の馬車に入ると、公爵、ライザー、アレックス、ソリアーノと相変わらずのメンバーだ。


うん、華やかさが微塵も無いね。イザベラを連れてきて正解だね。イザベラはちょっと嫌そうな顔をしているが。


あ、もっと嫌そうな顔をしているのがいた。ライザーだ。嫌というよりもイザベラが苦手なんだろうな。


『よし、これで全員集まったな。レイ、体調のほうはどうだ?』


「今日1日、休息をもらったので、もう大丈夫です。」


『そうか。それはなによりだ。では明日は予定通りアグラー軍に攻撃を加えるぞ。レイよ、明日もあのファイアボールを頼むぞ。』


正直、乗り気ではないが自分からやると言った以上はやるつもりだ。明日、アグラー軍を倒したら、いよいよエメリアとの対決になる。


作戦会議は俺の体調を考慮してか短時間で終わった。いつも無駄話をしなければ短時間で終わっていたのか。いかに時間を無駄に浪費していたか分かるな。


自分達の馬車に戻るとアイリーン達が風呂の準備を整えて待っていてくれた。これは今日もアイリーン達を抱いても良いとの合図でいいんだよね? 美女達の誘いを断るのは男としてあってはならないことだ。なので当然、アイリーン達を抱いた。


「これで明日も頑張れるよ。」


『『ほんとに馬鹿ですねぇ。』』


馬鹿じゃないよ。そこは、頑張ってください、だと思うんだけどなぁ・・・


ーーーーーーーーーー


今日は南門に陣取っているアグラー軍が標的だ。ただし、念のためにエメリアと交代していないかを確認している。


確認しに行っていた斥候が戻ってきた。


『アグラーとエメリアの軍はそのままです。特に変化はありませんでした。』


ただし、斥候の報告には続きがあった。


『しかし、アグラー軍もエメリア軍も陣形を広げています。おそらく、レイ殿の魔法を警戒しているものと思われます。』


そりゃあ、そうだな。普通はそうするよな。これでどうするのかと思っていたところ、公爵が


『それで、アグラーがいる場所は分かったのか?』


『はい。中央の一番奥に陣取っています。』


『ならば、作戦はそのままだ。アグラーを倒すだけだ。別に敵兵を全員殺すことが目的では無いからな。敵の大将さえ倒せば、兵士は普通に逃げるだろう。』


なるほど。確かにそうかも知れないな。


『アレックスとソリアーノには、ダルハイムの兵士を500人ずつ付ける。アレックスとソリアーノが左右から敵を引き付けろ。その後はライザーとレイ達が中央を進め。』


敵がバラけているので500人もいれば十分に引き付けられそうだ。ということで作戦が開始され、俺達は南門へ向かった。


南門から城外へ出ると、確かに敵の兵士がバラバラに別れているのが見て分かった。これでは軍隊として成り立っていないだろう。まるで個人の集まりのようだ。


こちらが南門を出ているのに敵の兵士達は何故か少し腰が引けているように見える。戦う気があるのかと疑いたくなる。


『どうやら、レイの魔法が自分達に向かって来ないか心配しているようだね。』


ライザーが敵の意図を教えてくれた。なるほど、そういうことか。俺が魔法を使うまでこの状態が続くなら魔法を撃つタイミングは遅いほうがいいな。


ただ膠着していても仕方が無いため、アレックスとソリアーノ達が動き始めた。右にアレックス、左にソリアーノ達が進み始めた。バラけていた敵兵力がアレックスやソリアーノ達に対応するために集まってくるが、バラけ過ぎていたため、すぐには対応出来ていない。


「アレックスとソリアーノ達がうまくやってくれているようだね。」


アレックスとソリアーノ達が徐々に敵兵力を左右に引き付けていき、中央の敵兵力が少なくなっていく。ライザーがアグラーのいる中央の奥に突っ込むタイミングを見計らっている。


………

………


まだかな? そろそろかなと思っているとライザーが合図をした。


『今だ、行くぞ!』


ライザーと俺達が真っ直ぐに駆け出した。いくら敵の数が減ったと言ってもゼロでは無い。多少の敵兵力が残っているが、その敵兵力はライザーのパーティーメンバーやアイリーン達が蹴散らしていく。その後ろを俺と、俺の左右にいるライザーとイザベラが付いていく。


俺は走りながら、圧縮ファイアボールの準備をする。走りながらのため、そこまで圧縮出来ていない。今回は野球ボールより一回り大きいくらいだが、これくらいで大丈夫だろう。


「皆、離れてくれ! 魔法を撃つ!」


俺の合図で、ライザーのパーティーメンバーもアイリーン達も俺の後方に下がってきた。敵も俺達の動きを察して逃げ始めるが初動が遅かった。


俺は圧縮ファイアボールを放った。ファイアボールが吸い込まれるように敵陣に到達すると、巨大な爆発音と共に爆風がこちらに襲い掛かって来たが、前回程の威力では無かった。


今回出来上がったクレーターは半径50mくらいであった。前回の半分くらいかな。それでも大将を失った敵兵は散っていく。逃げていく敵兵に対してアレックスとソリアーノ達は追撃を行っている。


暫くすると、追撃を行っていたアレックスやソリアーノ達が戻ってきた。アレックスやソリアーノだけでなく引き連れていたダルハイムの兵士も笑顔だ。


『大分、痛めつけてやってきたぞ。』

『これで敵も勢いが無くなるだろうね。』


敵もかなりの痛手を負ったようだ。そろそろ引き上げてくれないかな? と思っているとライザーが一言。


『ただ、敵にはまだエメリアがいるからな。引き上げることはしないだろうな。』


エメリアってそんなに凄いのか。とりあえず、今日の戦果は十分なのでダルハイムに戻ることになった。明日以降の作戦も公爵と相談になるしね。


ダルハイムに戻ると歓喜に沸き上がる住民の中央に公爵がいた。かなりの笑顔だ。


『良くやってくれた。これでこちらが大分有利になってきたぞ。明日以降の作戦を決めるから

、こっちに来てくれ。』


公爵に言われ、公爵の馬車に入っていく。公爵、ライザー、アレックス、ソリアーノ、俺、イザベラが揃うと公爵が改めて礼を言ってきた。


『皆、ご苦労だった。後はエメリアをなんとかすれば、この戦争はこちらの勝利なんだが。』


やっぱり、ランクSS冒険者はそんなに凄いのか。俺の隣に座っている同じランクSS冒険者は威厳が足りないが・・・


『レイよ、どれくらい休息が必要だ?』


公爵が突然、俺に聞いてきた。別に精神的疲労以外はほとんど疲れていない。


「特に休息は必要無いですよ。明日も戦うでも大丈夫ですよ。」


『本当か? 今日のファイアボールを城壁の上から見ていたが、明らかに前回より威力が小さかったようだが?』


「走りながらでしたからね。立ち止まってならもっと威力が出せますよ。」


それでも公爵は何度もしつこく聞いてきた。


『本当に大丈夫なんだろうな?』


「はい。大丈夫ですって・・・」


『………分かった。レイの言葉を信じよう。でだ、エメリアに対してだが、出来ればファイアボールで倒すのは避けたいな。』


「え? 何でですか?」


『エメリアは兵士達から絶大な信頼を得ているらしくてな、下手に魔法で殺すと残った兵士達が弔い合戦と言って捨て身の反撃をしてくる可能性がある。』


なるほど、確かにそれは不味いね。今はこちらが有利になっているが、数だけならまだ向こうのほうが多い。なので下手したら逆転される可能性があるのか。


逆にエメリアを生け捕りにすれば勝ちが確定するのか。


『そこは当初の予定通り、俺とレイと姉上の3人でエメリアを生け捕りにしますよ。なぁ、レイ?』


あぁ、確かに言っていたな、そんなことを。しかも俺の意見は無視して・・・


前回同様、俺の意見を無視して話が進んでいくな。イザベラも同席しているが結果は変わらないようだ。


結局、俺は何も話をしないまま作戦が決まってしまった。公爵の馬車からの帰り道にイザベラが質問してきた。


『ねぇ、レイ。まさか、いつもこうなの?』


イザベラが哀れんだ目で俺を見ている。


………頼むからそんな目で見ないで欲しい。

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