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0162:武術大会5日目


「あぁ、まだ胃が重いな。さすがに昨日はちょっと食べ過ぎかも知れないね。」


『レイさん。かも、じゃなくて明らかに食べ過ぎですよ。食べ過ぎは身体に毒ですよ。』


昨日の夕飯はアレックスとソリアーノの奢りということで高い料理から順番に食べていった。最後のほうは意地で腹の中に詰め込んだようなものだった。なので最後のほうの料理は味なんて覚えていないな。


『ご主人様、さすがに昨日はやり過ぎだったのでは? 途中でアレックスとソリアーノが泣きそうになっていましたよ?』


元の世界も含めてだけど、高い料理がどれくらいの値段か知らずに高い料理をドンドン頼んだからね。結果として、アレックスとソリアーノは賭けの儲け以上に出費したらしい。というか、手持ちが足りなくなってメンバーに金を借りていたよな。


「ちょっと、やり過ぎたかな?」


『はい。明らかにやり過ぎかと。』


仕方がない。今度は俺が奢ってやるかな。幸いなことに懐はかなり潤っているしね。とりあえず、ホテルの1階に行くとエドワード公爵とアレックス、ソリアーノ達が既にいた。


『レイ、昨日は随分とたらふく食べてたな。』

『レイ君、君はもう少し遠慮ってものを覚えたほうが良いよ。』


『ははは、アレックス、ソリアーノ。お前達が言ったことなんだろう? なら、その辺にしておいてやれ。報酬は弾んでやるから。』


エドワード公爵の言葉でアレックスもソリアーノの納得したようだ。今さらだが武術大会の参加は指名依頼扱いだったらしい。


『アレックス、ソリアーノ、レイ。そろそろ闘技場に向かうぞ。』


今日は、アイリーン達は1試合、アレックス、ソリアーノ、俺達は2試合の予定だ。


「アイリーン達はランクAパーティーとの対戦だね。勝てるかな?」


『かなり難しいかも知れませんが、簡単には負けるつもりはありませんよ、ご主人様。』


中々頼もしい言葉だ。それなりに自信があるようだ。


『私達よりも旦那様達のほうが大変じゃないですか? 2回戦はまだしも3回戦は大変そうですよ。』


実際に今日大変なのはアレックス、ソリアーノだろうな。2回戦は勝てても3回戦には前回の優勝者、準優勝者と対戦するわけだから。


ただ、俺が今日の2回戦、3回戦を勝つと明日は前回の優勝者、準優勝者と対戦する可能性が高い。これはちょっとハードだ。


闘技場に到着して、しばらくしてアイリーン達の出番がまわってきた。


『ご主人様、行ってきます。』

『旦那様、ちゃんと応援してよね。』

『主様、頑張ってくる。』

『レイさん、頑張ってきますね。』

『レイくん、行ってくるね。』

『御館様、行って参ります。』


アイリーン達に舞台の上に上がっていった。アイリーン達に続いて対戦相手のパーティーも舞台の上に上がってきた。


対戦相手のパーティーは、大盾が1人、剣とミドルシールドを持った戦士が2人、弓が2人、杖が1人だ。


「中々、バランスの取れたパーティーのようだね。ちょっと戦い難そうだね。」


『そうだな。前衛が固そうだよな。』

『確かにね。後衛の手数も多そうだしね。』


ただ、対戦相手にはスピードのありそうなメンバーがいるようには見えない。なのでレジーナやメリッサがどう動くかがポイントのように思える。


舞台の上にいる両チームの準備が整ったのを確認し、審判が試合開始の合図をした。


対戦相手は、大盾の左右にミドルシールドを持った戦士2人がいて、前衛3人、後衛3人の陣形だ。


アイリーン達のほうは、アイリーンとエリーの間にマリーナがいる。アイリーンとエリーの後ろにレジーナとメリッサがいて、後衛はサーラだけの陣形だ。


「サーラは魔法の準備が完了しているけど、まだ撃たないね。何を狙っているんだろう?」


『確かにね。まだ魔法を撃たないところを見ると先制攻撃をする気は無いようだね。』


先に動いたのは対戦相手のほうだった。後衛の弓2人と杖1人が先制攻撃をしてきた。飛んでくる無数の矢に向かってサーラがウィンドカッターを放った。


『ほう、魔法を使ってあんな防御が出来るのか。上手い手を考えたな。』


サーラのウィンドカッターが対戦相手の矢を斬り落とし、魔法攻撃を相殺した。完全に防げたわけではないがダメージは大きくないようだ。


その隙にレジーナとメリッサが左右から飛び出し、大きく迂回して対戦相手の後衛に襲い掛かる。前衛にいる戦士が救援に向かおうとするが、アイリーンとエリーが飛び出し救援に向かわせない。


こうなると後衛3人はレジーナ、メリッサの相手ではない。あっという間に後衛3人を動けなくした。そして、そのままアイリーン達と対戦相手を挟み撃ちにする態勢になった。


こうなると、対戦相手には成す術が無くアイリーン達から挟み撃ちを受けて1人ずつ倒れていき、最後の1人も倒れた。


『マジか、ランクAパーティーまで倒しやがったか・・・』

『まったく・・・ここまでくると驚きを通り越して呆れるね。』


俺も驚きだ。まさかランクAパーティーを倒してしまうとは。いくら俺とメリッサの勇者スキルが効いているからといっても出来すぎだな。


アイリーン達が笑顔で舞台から降りてきた。俺とジャンヌはハイタッチでアイリーン達を迎えた。


『ご主人様もジャンヌも頑張って下さいね。』


アイリーン達の試合が終わり、すぐさまソロ部門の試合が始まった。俺とアレックスとソリアーノは無事に2回戦を勝った。


ジャンヌの試合が本日最後の試合となる。相手はランクAの上位と思われる冒険者だ。


『………レイ様、それでは行ってきます。』


ジャンヌが舞台の上に上がっていった。対戦相手は既に長剣を片手に待っていた。予選の戦い方を見た限りではかなりスピードのある冒険者だ。


審判の試合開始の合図とともに対戦相手が一気にジャンヌとの距離を詰めてきた。


『相手はかなりジャンヌの雷魔法を警戒しているようだな。』

『まぁ、戦法としては間違っていないかな。』


雷魔法を警戒するなら接近戦しか無いけど、別にジャンヌは雷魔法だけじゃない。ジャンヌは大剣を軽々と横に振る。その威圧感になのか対戦相手は突っ込む足を止めた。


ジャンヌは相手の足が止まったのを見て逆にジャンヌのほうが突っ込み、大剣を畳み込んでいく。


「なんか凄い絵面だね。」


対戦相手のほうがジャンヌより身体は大きいのだが、武器はジャンヌのほうが大きい。そんなジャンヌが対戦相手を追い込んでいる。


そして、ついにジャンヌの大剣が対戦相手の長剣を叩き折った。剣を叩き折られた対戦相手はヘナヘナと腰が折れるように地べたに座り込んで両手を上げて降参の仕草をした。


対戦相手はかなり凹んでいるようで、じっと折れた剣を眺めていた。多分、かなり高価な剣だったんだろうな。


ジャンヌが舞台から降りてきて一言。


『………あまりにも粘るので剣を叩き折ってやりました。』


確信犯だったようだ・・・


「ま、まぁ、勝ったからいいや。」


本日のソロ部門はもう1試合ある。


アレックス 対 前回優勝者

ソリアーノ 対 前回準優勝者

ジャンヌ 対 ランクA冒険者

俺 対 ランクA冒険者


アレックスとソリアーノは大変そうだなと、思っていると2人から


『『当然、俺達が勝つほうに賭けるんだよな?』』


「え? えっと、銀貨1枚じゃ駄目?」


『『いやいや、金貨だろ?』』


「………分かったよ。大穴狙いで金貨を賭けるよ。」


『『大穴狙いって言うなよ!』』


いやいや、十分大穴狙いでしょ?

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