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0160:武術大会4日目その2


『『次はご主人様とジャンヌの番ですよ。』』


観客席から大歓声なんて全く気にしていないアイリーン達から自分達は勝ったので俺とジャンヌもしっかり勝てと。


4人制部門、6人制部門の1回戦が終わり、いよいよソロ部門の1回戦が始まろうとしている。試合の順番はソリアーノ、ジャンヌ、アレックス、俺の順だ。


『当然、僕の勝利に賭けているんだよね?』


「もちろんだよ。俺達全員がソリアーノの勝ちに金貨1枚を賭けているよ。」


『なら損させないように頑張ってくるよ。』


とキザな台詞を言ってソリアーノは舞台に上がっていった。


舞台の上には既に対戦相手であるランクB冒険者が槍を持って待っている。ソリアーノが舞台に上がり審判が試合開始の合図をした。


ソリアーノは長剣を右手で構え、対戦相手は両手で槍を構えている。ソリアーノの左手に魔力が集まっているのがなんとなく分かる。ただし、この魔力を探知するのは魔力探知スキルのおかげなので、ソリアーノの対戦相手は気付いていなさそうだ。


ソリアーノが動き始めた。予選でも見せていた威力を抑えた魔法を牽制のために放つ。予選の時はごちゃごちゃしていたため分からなかったが、どうやら水魔法のようだ。


水の礫が対戦相手に襲い掛かる。当然、相手は水の礫を避けようとするが、避けようした場所にソリアーノが待ち構えている。ソリアーノは避け易いように魔法を放っているようだ。


「やっぱりソリアーノは魔法の使い方が上手いよね。」


『あぁ、そうだな。奴と対戦するなら、あの魔法は避けないで喰らう覚悟で突っ込むのが正解だな。』


ソリアーノは対戦相手の懐に飛び込んでいた。こうなると槍は防戦一方になる。なんとか距離を取ろうと試みているようだが、ソリアーノがそれを許すはずもない。ソリアーノの剣を振るスピードも中々速いため、対戦相手も次第に切り傷が増えているようだ。


対戦相手の槍使いは徐々に下がり始め、舞台の端まで追い込まれていったが、さすがに本選に出場してきた冒険者なだけあって舞台の端で粘っている。しかし、ソリアーノは手を緩める様子は無い。そしてソリアーノがそのまま押し切った。


「やっぱり順当にソリアーノが勝ち上がったようだね。」

『あぁ、そうだな。しかし、相変わらず非力だな。奴にもう少し筋力があればな。』


そりゃあ、アレックスと比べたら非力かも知れないが、筋肉ムキムキのソリアーノは想像も付かないな。舞台の上からソリアーノが降りてきて一言。


『損をさせないように頑張ってきたよ。』


確かに賭けのほうは少しは儲かったけど。う~む、なんだろうな、このキザな男は。


数試合経過し、ジャンヌの出番がきた。


『………レイ様、それでは行って参ります。』


綺麗で細身のジャンヌには似合わない大剣を片手に持ち、舞台の上へ上がっていった。ジャンヌが舞台の上に上がった後に続けて対戦相手のランクB冒険者も舞台に上がった。


実はこの試合のオッズは、1.7倍と2.1倍になっているが、1.7倍はジャンヌの勝ちのほうだ。どうやら予選の圧倒的な勝ち方を見せたため、人気が出たようなのだ。


対戦相手は剣とスモールシールドというオーソドックスな装備をしている。しかし、心なしか緊張しているように見える。


『やっぱ、恐いだろうな。』


「えっと、ジャンヌがですか?」


『あぁ、あの雷魔法は避けられそうもねぇし、あの大剣の威圧感もデカいしな。』

『そうだねぇ。ちょっと恐いな。』


アレックス、ソリアーノと話をしていると審判から試合開始の合図が出た。試合開始の合図と共にジャンヌが大剣を片手に突進する。雷魔法が来ると想定していたのか、対戦相手は回避する体制のままジャンヌの大剣を受け止めることになってしまった。


ジャンヌの大剣を受け止めた対戦相手は吹き飛ばされてしまった。


『魔法を避ける前提だったところにジャンヌが突っ込んで来たためにどうするか迷ったようだな。しかし、あのパワーはすげぇな。』


そして、吹き飛ばした相手にサンダーレイを放った。吹き飛ばされた対戦相手はとっさに盾を上に向けて直撃を避けようとするが数発は直撃した。そして容赦の無いジャンヌは再度、大剣を構えて突進していく。


ジャンヌの大剣が対戦相手に牙を剥く直前に対戦相手が持っていた剣を投げ捨てて、両手を上げた。ギブアップ宣言だ。怪我は舞台から降りると回復するが痛いものは痛いのだ。


『まぁ、そうだろうな。あの体制じゃあ避けるのは無理だしな。』

『しかし、ジャンヌの攻撃はえげつ無いね。』


戦闘を終えたジャンヌが涼しげな顔をして舞台から降りてきた。まぁ圧勝だったしね。


『なぁ、ちょっとジャンヌの大剣を持たせてもらってもいいか?』


アレックスからの突然の申し出にジャンヌが困ったような表情で俺のほうを見る。


「まぁ、いいんじゃない?」


俺の一言でジャンヌは頷き、大剣をアレックスに渡した。


『うぉ、やっぱり結構重いな。こんなのを軽々と振り回しているのか。思った通り、ジャンヌはかなりの筋力があるんだな。』


確かにジャンヌは素の筋力ならパーティーで一番だからね。ステータス値は大事な個人情報である。そのため、無理矢理聞き出すことはタブーになっているためアレックスも細かくは聞いてこない。


しばらくの間、筋力の活かし方で話が盛り上がっていた。何故、こんな話で盛り上がれるんだろうと思いながら話を聞いていた。すると、アレックスの順番になった。


『よっしゃ、俺もお前達に負けないように頑張ってくるか。』


踊るゴリラは意気揚々と舞台の上に上がっていった。対戦相手も大剣を担いだ筋肉質な男性冒険者だ。


『『暑苦しそうですね。』』


アイリーン達は相変わらず毒舌だ。だがソリアーノ達だけでなく、アレックスのパーティーメンバーまでが頷いている。


暑苦しそうな対戦が始まった。お互いに様子見をすることもなく、突進し大剣同士がぶつかり合った。乾いた金属音ではなく、鈍い重低音が闘技場に響いている。


「凄い音がするね。腹にも響いているよ。」


ランクA同士、かつ同じ筋肉達磨の打ち合いは中々の見応えだ。真似はしたいとは全く思わないが。


数十合打ち合いをした後、一旦お互いが距離を取った。双方ともに少し肩で息をしている。


『あれだけ打ち合えば、相手の攻撃を受けるだけでも体力を使うだろうね。』


お互いに息が整ったところで大剣での打ち合いを再開させた。また互角かなと思っていたが徐々にアレックスが押し始めた。リズム良く大剣を打ち込みだした。こうなると対戦相手は防戦一方になる。


防戦一方になった対戦相手に対してアレックスは遠慮なく大剣を打ち込んでいくと、対戦相手の大剣を吹き飛ばしたところで勝負が付いた。


疲労困憊のアレックスは舞台の上で大の字になって寝転んだ。寝転んだまま、両拳を上に突き上げている。


そこへ空気を読まない審判が近寄ると、声は聞こえないが明らかに、


『次の試合に邪魔だから退いて』


と言われているようだ。格好悪いな。

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