0153:武術大会初日
開会式の翌日になった。しかし昨日は本当に酷い目にあったな。係員からは怒られるし、周りの冒険者達から白い目で見られるし。全部、あの頭の悪そうな冒険者のせいだ。責任を取って貰おう。
ホテルで朝食を取りながらアレックス達に本日の予定を確認した。
本日から予選が始まるが、予選は午前中が4人制、6人制部門で、午後からはソロ部門で行うらしい。
予選の組み合わせはくじ引きで行われたが、幸いなことに予選では味方同士はぶつからなかった。
ちなみに、4人制、6人制は予選を勝ち抜けばベスト8になるらしい。パーティー戦はどうしても一戦一戦の時間が掛かるから本選の枠が少ないらしい。まぁ仕方無いのかな。アイリーン達も是非とも頑張って欲しいね。
予定では、予選が3日、本選が4日程掛かる見込みとのことだ。
今日の予定はソリアーノのソロ部門の予選とアレックスメンバーの4人制の予選だけだ。
『『当然、応援しに行くよな?』』
あれ? 折角なので観光する気満々でいたんだが、さすがにここで無理に観光を選ぶ訳にはいかないようだ。
「もちろん、応援しに行くよ。」
『俺達、大会参加者は闘技場のすぐ近くで見れるから、他の冒険者達の戦い方が見れて参考になるはずだぞ。』
『そうだな。他者の戦い方を見るのも立派な鍛練になるぞ。』
ちゃんと応援しに行くって言っているのに。何故か俺が駄々を捏ねているような言われ方をしているような気がするんだが。
『ほら、旦那様。ぶつぶつ言っていないで、さっさと応援しに行きますよ。』
ちょっと待て。誰がぶつぶつ言った? しつこいようだが、俺はちゃんと応援しに行くって言っているのに。
まったく・・・ぶつぶつ・・・
ーーーーーーーーーー
闘技場に到着すると、ゾリット、オットー、リゼ、ハリルが早速控え室に向かおうとしたところ、アレックスがゾリット達に声を掛けていた。
『いいかぁ、お前ら。敵は全部、ぶっ殺せ! 今回こそは本選に出場するぞ。分かったな?』
いやいや、殺せないんじゃなかったの? しかしアレックスのパーティーは全員体育会系のようだ。ゾリットやオットーだけならまだしも、リゼやハリルまでが
『『おぉ、野郎共をぶっ潰してやんぜ!』』
等と雄叫びを上げている。何か恥ずかしいなと思っていたが、他の冒険者達も雄叫びを上げまくっている。どこも同じだ。
『いいねぇ、僕もモチベーションが上がってきたよ。』
なんと、ナルシストのソリアーノまでがモチベーションを上げてきているようだ。
『ご主人様、凄い熱気ですね・・・』
『旦那様、ちょっと付いていけないです。』
アイリーン達が少し呆れたように呟いた。
「………そうだね。ちょっと付いていけないね。どうしようか?」
ここで俺達だけ冷めた雰囲気を出すと、場の空気が読めない奴、というレッテルが貼られそうだ。出来ればそれだけは避けたい。
『レイさん。ここは適当に、この場の雰囲気に合わせるしか無いですよ。』
そうだよね、それしか無いよな。なので適当に場の雰囲気に合わせることにした。
しかし、ゾリット達は3試合目らしいがそれまでモチベーションを維持出来るのかな?
『よし、お前ら、さっさと応援しに行くぞ。』
アレックス達に連行されてゾリット達の応援に向かうことになった。決して嫌というわけじゃないんだが。
巨大な円形闘技場の中に入ると、闘技場の中心には一辺が200mくらいの正方形の舞台がある。そして観客席の数も多いね。
「あの舞台の上で試合をするわけか。思っていたよりも広いね。」
『いや、戦ってみると分かるけど意外とそれほどでも無いんだよ、レイ君。』
『特に予選だと狭く感じるはずだぞ。』
へぇ、広そうに感じたけどそうじゃないのか。経験者であるアレックスとソリアーノが言うのだから間違い無いだろうね。
予選がいよいよ開始されるようだ。予選1組目の出場パーティーが続々と舞台に上がってくる。渋々見に来たけど、目の前で見ると興奮するな。
どうやら、予選1組目は全部で8パーティーでのバトル・ロワイアルのようだ。ただし、ちょっと気になるな。
「ちょっと人数が多くない?」
『前回は4人制部門なら5~6パーティーだったんだがな。どうやら、今回は参加者が多いらしいな。』
なるほどね。参加人数が多いからといっても本選の試合数を増やすことはしないようだ。恐らく貴族達の滞在日程の変更が難しいのだろう。
そんなことを考えていたら、1試合目が開始された。最初は各パーティーが、にらみ合いをして動きが無い。
『下手に動くと逆に狙われるからな。ただ、あまりにも動かないと審判から警告を受けるからな。気を付けろ。』
このあたりは普通の格闘技の試合と同じようだな。すると1パーティーが動き始めた。このパーティーは全員が剣を持っている。ちょっとバランスが悪いような気がするが。
『警告を受けたくない堪え性の無いパーティーが動き始めたようだな。』
「ちなみに、警告を受けるとそのパーティーはどうなるですか?」
『うん? 2度目の警告を受けた時点で失格になるんだよ。』
なんと2度の警告で失格なのか。なら警告は受けたくないよな。最初に動き始めたパーティーに釣られて他のパーティーも動き始めた。
最初に動き始めたパーティーはすぐに他のパーティー達に倒されてしまった。まさしく袋叩きになってしまった。
『あいつら馬鹿だよな。最初に動いたら他の連中から狙われるのは当然だろうに。きっと初出場なんだろうな。』
その後は全パーティーが動き出して乱戦となっている。ただし、乱戦といっても率先して他のパーティーを倒しにいくパーティーもいれば、あわよくばといった感じで隙を伺っているパーティーもおり、皆それぞれだ。
「ひょっとして、あの方法って賢いのかな?」
『いや、あれは全然駄目だな。』
アレックスがそう言うと、隙を伺っていたパーティーは他のパーティーから袋叩きにあっていた。
『狡い手を使う冒険者は他の冒険者から嫌われるもんなんだよ。』
なるほど。ガチンコバトルで相手をねじ伏せるしか無いのか。これは結構疲れそうだね。
そして試合が始まって30分程して1組目の試合の勝利パーティーが確定した。勝利パーティーのメンバー達は、かなり怪我をしているようだ。
「あんな怪我をして大丈夫なの?」
『あぁ、まぁ見ていろ。面白いもんが見れるぞ。』
勝利パーティーのメンバー達が舞台から降りると、勝利パーティーのメンバー達の身体が光に包まれた。まるで誰かが回復スキルをかけているようだ。
「おぉ、凄い。本当に回復している・・・」
アイリーン達も驚いているようだ。話は聞いていたが実際に自分の目で見ると凄さが分かる。
1組目の出場者と入れ替わり、2組目の試合も同じように進んだ。いよいよゾリット達の順番がやって来た。
さて、ちゃんと勝てるのかな?
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