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0144:また指名依頼か


ギルドを出てダンジョンに向かおうとしたところで、怪しげな老人から声を掛けられた。


『申し訳ありませんが、ちょっとお話をさせてもらえないでしょうか?』


「えっと、お断りさせてもらいます。」


胡散臭い話は聞く必要が無いよね。ならばさっさと断るのが1番だ。


『え? ご主人様、それは失礼なのでは? まだ何もお話を聞いていないですよ?』


いやいや、明らかに胡散臭い雰囲気満載だよ? こんなに怪しげな老人の話なんて聞く必要があるのかな?


『決して、レイ様達には不利益になるような話ではありませんよ。レイ様達が、今一番欲しい情報を提供出来ると思いますが。』


俺達が今一番欲しい情報? それって誘拐犯達の黒幕の正体だよね。それをこの老人が本当に知っているのだろうか?


「俺達が本当に欲しいと思っている情報が何か分かるんですか?」


『ほほほ、分かりますとも。スラム街で発生した事件の首謀者の情報かと思いますが間違っていますでしょうか?』


マジか! 当たってるよ。この老人は何者なんだ?


『主様。あの老人は老人じゃないです。変装していますが、結構若いかと。老人の匂いがしないです。』


「え、老人の匂い? 本当に?」


それって加齢臭とは別物だよね?


『ほう? そこの狼人族は中々嗅覚が鋭いな。まさか匂いで見破られるとは思わなかったよ。』


目の前の老人の口調が突然変わり、若者の話し方になった。俺達は直ぐに武器を手に取り応戦出来る構えになった。


『おらぁ、てめぇ。死ねぇ!』


あ、メリッサには武器を持つなと指示するのを忘れた・・・


『え? ちょっと、えぇぇ?』


老人に変装している男は予想外の出来事に変な声を出している。


「待て! メリッサ!」


ギリギリのところでメリッサの剣が止まった。本当に間一髪のところだった。


「ふぅぅ。危うく、情報を話す前に死んじゃうところだったね、ははは。」


ここは笑って誤魔化すしか無いよね?


『いやいやいやいや、笑って誤魔化すところじゃないぞ! 何なんだ? あの狂犬みたいな女は?』


笑って誤魔化しきれないようだ。そりゃあ、殺されかけたんだから当然か。


「スミマセン。彼女は、ほんのちょっとだけ喧嘩っ早いところがあるので・・・」


『ちょっとどころじゃないぞ、危うく殺されるところだったぞ・・・まったく・・・』


やっぱり、そうだよね。メリッサには後でちゃんと言い聞かせないとね。とりあえず、男からちゃんと話を聞くことにした。


『ここでは話が出来ないから、ちょっと城門の外に行くぞ。町の中では誰に聞かれるか分からないからな。』


確かに城門の外の草原なら他の誰に話を聞かれる心配は無さそうだ。なので、この男に付いていくことにした。


城門の外に出て周りに何もない草原に到着した。それでも男は周囲の確認を怠らず、周りを再度確認している。かなり注意深い男のようだ。


『どうやら、問題は無さそうだな。それじゃあ、早速、お前達が欲しい情報を伝えるとしようか。』


「その前に・・・なんで昨日の事件の話を知ってるんでしょうか? さすがに知るのが少し早すぎると思うんですが?」


『なるほどな。確かに疑問に思うのも分かる。結論だけ言うとこちらは誘拐に関してはもっと早く知っていたからだ。』


この男が言うには、他の都市でも女性冒険者の誘拐が発生しており各都市に対して注意喚起が行われていたということだ。


ただし、どうしても黒幕が掴めなかったため末端の使い走りを泳がせていたとのことだ。


「だとすると、俺達は邪魔してしまったという事でしょうか?」


『いや、そうでも無い。むしろお前達のお陰で黒幕の一部が判明したからな。』


えっと、どういうことだろうか?


『考えてみろ。あの牢屋は狭かっただろ? ということは、お前達が誘拐された時点で引き取り役が来るというわけだ。なのでお前達が暴れようがそのまま捕ったままだろうが、俺達は引き取り役の後をつけるだけだ。』


俺達のお陰って、誘拐されたことを言っているのか・・・若干、引っ掛かるところがあるが役に立ったと思うことにしよう。


「それで、さっき黒幕の正体が分かったと言っていたけど?」


『あぁ、黒幕は我が国の貴族達だ。いや、正しくは元貴族だった者達だな。そいつらは、この国を裏切って隣国のアレストに寝返ろうとしたわけだ。その際に自分に力があると見せかけるために冒険者達を誘拐しようとしたわけだ。戦力が無いと相手にしてもらえないからね。』


冒険者達を誘拐し、本人達の意思とは無関係に無理矢理、奴隷契約をしてしまうらしい。


「あれ? 本人の意思を無視しても奴隷契約は出来ないんじゃないの?」


『詳しくは説明出来ないが、強制的に奴隷にする方法はある。犯罪者等を奴隷にする際に利用している方法がな。』


そう言えば、アイリーンを購入した時に奴隷商が、犯罪奴隷や特殊奴隷のことを言っていたな。それのことか。


ここまで話を聞いた段階で、アイリーン達の顔を見るとかなり渋い表情をしている。この困ったような表情はなんだ?


あ! もしかして、俺達、騙されている?


「あ、じゃあ、俺達はこれで。」


帰ろうかとしたが、男は俺の肩を掴み話を続けた。


『おいおい、ここまで話を聞いておいて、それは無いんじゃないか? ここからが本題なんだぞ?』


「いや、聞きたくないんで。帰りますね。」


『いやいや、待てって。エドワード公爵から指名依頼なんだから。』


おい、依頼主の名前を出すなって。それじゃあ、断りにくくなるじゃないか。


『………何をそんなに嫌そうな顔をしているだ? 公爵から指名依頼だぞ?』


「………もういいです。分かりました。とりあえず、話を聞きますね。」


渋々、指名依頼の内容を聞くはめになってしまった。男が話す指名依頼の内容はこうだ。


『この国を裏切って隣国に逃げようとしている元貴族達の捕獲だ。ただし、元貴族共が隣国に逃げ込んでしまった場合は速やかに撤退だ。』


「ちなみに、なんで俺達に指名依頼をしたんですか? お抱えの兵士とかもいるでしょうに。」


『さてな。ただエドワード公爵が直々にお前達を指名したようだぞ。何故かお前達はエドワード公爵に気に入られているようだな。それに関して身に覚えは無いのか?』


エドワード公爵とは1度しか会話したことが無いはずだよな。特に気に入られるようなことはしていないと思うんだけどな。


『まぁどちらでも良いけどな。それで、指名依頼は受けるのか? 受けないのか?』


「受けないという選択肢があるなら受けないんですけど、そんな選択肢は無いんですよね?」


『良く分かってるじゃないか。その通りだ、受けないという選択肢は無いな。良く分かっているじゃないか。』


だから聞きたくなかったんだよ。聞いていなければ、何とでも言い訳が出来たんだけどな。しかし、これってパワハラだよな?


「受けない選択肢が無いならさっさと依頼をこなしたいんだけど、どうすれば良いんですか?」


『今、逃亡しようとしている元貴族は2人いる。1人目はオボーン元子爵、2人目はマケーノ元男爵になる。どっちがいい?』


名前の響きからするとマケーノのほうが弱そうだな。


「じゃあ、マケーノ元男爵のほうで。」


『そうか。マケーノは元武闘派貴族なんだが、まぁお前達なら大丈夫だろう。』


え? 名前は【負けーの】だよ? それなのに武闘派なのか? 詐欺じゃないのか? 今から変更出来るかな?


男から地図を見せられて


『マケーノはこの街道を通って隣国に向かっている。奴らは荷物が多いから進む速度はかなり遅い。今から急げば国境を越える前に追い付けるはずだぞ。』


変更を言う前に話が進んでしまった。今さら変更は無理かな。

はいはい、行ってきますよ・・・

読んで頂きありがとうございます。

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