0143:救出したのに
俺達がスラム街に連れてこられた時に乗っていた馬車で全裸の女性冒険者11人をギルドに送り届けた。
最初は何故か受付嬢から疑惑の言葉が。
『レイさん、一体何をしでかしたんですか?』
と驚かれたが、ちゃんと事情を説明した。ただし誘拐されたときの記憶が無いんだよね。どうやらアイリーン達も記憶が無いらしい。
『大変、申し訳ありませんでした・・・てっきりレイさんが何かとんでもない事をしでかしたと勘違いしてしまいました。』
と謝罪されたが、なんか釈然としないな。俺が何をしでかすというんだろうか? でも駄々を捏ねて仕方無いので、さっさと女性陣達を引き渡そう。
「誘拐されていた女性冒険者達はギルドに引き渡しで問題無いですよね?」
『はい、問題ありません。一旦、ギルドで引き取りますね。まぁ元々、各パーティーから捜索依頼があった人達なので少しお話を聞いたらすぐに各パーティーに戻ってもらいますけどね。』
「ところで、俺達を誘拐しようとした悪人面達はどうするんですか?」
『もちろん、死んだほうがマシだったと思えるような拷問をしてでも洗いざらい聞き出しますよ。もしかしたら本当に死んじゃうかも知れませんね。まぁ自業自得なので全く問題無いですけどね。』
受付嬢はニッコリしながら、そんなことを言い放った。さすが人権が無い世界だね。自業自得とはいえ・・・
「じゃ、じゃあ、俺達は帰るね。」
『あ、そうだ。レイさん達には後で話を聞かせてもらうと思うから、その時にはよろしくお願いしますね。』
一応、参考人として話を聞きたいとのことだが、誘拐される前後の記憶が曖昧だ。
「そういえば、俺達ってどんな感じで誘拐されたんだろう? 本当に記憶が無いんだけど。」
『だとすると、魔法か薬で意識を失われた時に記憶障害を引き起こされたのかも知れませんね。薬だけなら闇市場で購入するのも可能ですよ。もちろん違法ですけどね。』
マジですか。そんな魔法や薬なんかあるのか。毒耐性だけじゃ駄目なんだろうな。どんな耐性なら記憶障害に耐えられるのかな?
それと闇市場か。一度は見に行ってみたいな。もちろん違法なものを買うつもりは無いけど。
『とりあえず、誘拐されていた女性達の話を聞くほうを優先しますので、レイさん達は後ほどよろしくお願いしますね。』
一旦、ギルドから解放され馬車に帰ることにした。ギルドから出る前に誘拐された女性冒険者達から
『レイくん、またね。』
『レイくん、今度一緒にダンジョンに行こうね。』
『レイくん、責任取って、私と結婚して。』
『レイくん、ありがとうね。』
『レイくん、助けてくれて、ありがとー。』
『今度、ちゃんとお礼をするからね。』
1人だけ変なことを言っている人がいるようだけど概ね感謝された。
『旦那様、良いものも見れて、しかも感謝もされて良かったですね。』
「ちょっと待って。俺が脱がしたわけじゃないよ。」
『あれ? 誰も沢山の女性の裸が見れて良かったですね、なんて言ってないですよ?』
こ、こいつは・・・鬼畜プレイがどうしても好きなようだな。どうやら俺の怒りの視線を察したようで
『あ、ちょっと、それは無しで!』
「え、何が? 何が無しなの?」
お仕置きをする気になっているとマリーナが謝ってきた。
『旦那様、ひょっとして鬼畜プレイをする気ですよね? ちょっと、あれは厳しいんで・・・勘弁してください・・・』
すると、誘拐されていた女性冒険者達が急にざわつき始めた。
『え? 鬼畜プレイって・・・』
『レイくんって、そっち系の人なの?』
『格好良いのに、勿体ね・・・』
『さすがに鬼畜系は無いよね?』
『ひょっとして、最低の人?』
「え? ちょっ、ちょっと待って、違うんだ! って、あれ? もしかして違く無いのか? いや、それでも、断じてそっち系じゃない!」
11人の女性冒険者達から凍るような視線が一斉に注がれた。その視線の向け先は当然、俺に対してだ。さ、寒い、寒すぎる・・・
『さっさと、ギルドの聞き取り調査を終わらせて帰ろうか。』
『そうね。さっさと帰りたいわね。』
こうして、11人の女性冒険者達は受付カウンターの奥に去って行った。
「なんで、こうなったんだ? 何かがおかしい・・・」
特別なお礼なんて期待していなかったけど、変な誤解をされたままなのはどうかと思う。俺、何か悪いことでもしたのかな?
『ご主人様、馬鹿なことして無いで私達もさっさと馬車に帰りますよ。』
『レイさん、馬鹿も程々にしてくださいね。』
「………あ、はい。スミマセン。」
受付嬢が困った顔して一言。
『ちゃんと、明日ギルドに来て下さいよ。彼女達にはちゃんとフォローしておきますから・・・』
「………はい。分かりました。是非ともよろしくお願いします。絶対ですよ! 本当にお願いします・・・」
俺だけショボくれながら馬車に帰った。
ーーーーーーーーーー
翌日、かなり気が重いがギルドにやって来た。気が重い理由は、昨日の出来事がギルドで噂になって、他の冒険者達から『鬼畜』とか言われるのでは? と思っていたからだ。
こんなことが噂になってしまったら恥ずかしくて、まともに道も歩けない。
しかし、特に昨日のことは誰からも言われなかった。なんでだろうと思っていたら、昨日、受付嬢達が女性冒険者達に、
『あれは、レイさんとマリーナさんのいつものやり取りなんです。じゃれ合っているようなもんなんですよ。』
と複数の受付嬢が言ってくれたようで、さすがに複数の受付嬢から言われたので納得してくれたらしい。受付嬢の皆さんには感謝しかないな。
若干、マリーナとじゃれ合うのがいつものやり取りというのが気になったが、不名誉な称号を貰わなかっただけで良しとしよう。
受付カウンターに行くと昨日の受付嬢がいた。
『レイさん、ちゃんと来てくれましたね。』
「昨日は色々とありがとうございました。本当に助かりました。」
『いえいえ、気にしないで下さい。早速、2階の会議室へどうぞ。』
ギルドの2階にある会議室に通された。会議室の中には、副ギルド長のゴメスがいた。
『よう、レイ。久しぶりだな。元気そうで何よりだ。』
「副ギルド長は少しお疲れのようですね。」
『そりゃ、多少は疲れも出るさ。なにせ、この都市から冒険者が誘拐されるなんてことが起こりゃあな・・・はぁ・・・』
ギルドの役割の一つに冒険者達を保護することも含まれているらしい。それでも誘拐されるのは冒険者本人達の問題だと思うのだが。まぁ誘拐された俺達が言うのもなんだけど。
「ところで、あの悪人面した連中は何か吐いたんですか?」
『うん? あぁ、あいつらか。あれは駄目だな。ただの使い走りだ。黒幕は別にいるがさっぱり分からんな。』
まぁ、雑魚っぽい感じはしていたが、やっぱり末端の雑魚だったようだ。しかし11人も誘拐しているくらいだから結構な規模の組織が動いているんだろうな。
『なんで、お前ら暫くは注意していてくれよな。誘拐の邪魔した報復を受ける可能性があるからな。まぁ、とりあえず誘拐犯を捕まえたことには変わり無いからな。受付で報酬を受け取ってくれ。』
少しだけゴメスと会話をした後に受付カウンターに戻ってくると受付嬢から声をかけられた。
『副ギルド長とお話してきましたよね? では少ないかも知れませんが報酬のほうをお渡ししますね。』
報酬は金貨10枚だった。ちょっと安い気もするが棚ボタだし仕方が無いかな。
報酬を受け取りギルドを出た。
「さて、今日もオークの霜降り肉を回収しに行こうか?」
『レイさん。ダンジョンに行くのは良いですが、一応周囲には注意しておいて下さいね。』
確かにそうだよね。1回は誘拐されているんだしね。
という事で注意しながらダンジョンに向かおうとしたところ、1人の老人から声を掛けられた。
『申し訳ありませんが、ちょっとお話をさせてもらえないでしょうか?』
え? 嫌です・・・
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