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0136:港町インダス4日目


ならず者の町から少し離れた場所に馬車を停止させ、全員が徒歩で町に近づいていく。


「かなりボロボロの町だね。」


『そうですね。棄てられてから10年以上は経過しているかと思いますよ、レイさん。』


「ふ~ん。でもなんで棄てられたんだろうね? 元は結構立派な町だったんだろうけど、なんか勿体無いよね?」


大体ではあるが町の規模は500m四方くらいの広さがある。開拓村での経験から、この規模の町を作る大変さはある程度分かるつもりだ。


『レイさん。町や村が棄てられる理由はいくつかありますよ。例えばですが、盗賊に目に付けられたり、戦争に巻き込まれたり、疫病が蔓延したりとかですね。』


「まぁ、ならず者達がいるくらいだから疫病は無いよね?」


『さて、どうでしょうか? ねぇ、ご主人様?』

『旦那様。ひょっとしたら、ビビってる?』

『レイくん、大丈夫だよ。』

『………レイ様なら大丈夫。多分。』


まるで、俺が小心者のような扱いはやめて欲しい。あくまでも用心深いだけだよ。


『………なぁ? そろそろ町に突入しても良いかな?』


ライガンが呆れたように問いかけてきた。


「あぁ、スミマセン。大丈夫です。行きましょうか。」


ライガンと8名ほどを入口に残して、冒険者達、商人の私兵達と共にならず者の町に突撃を開始した。ライガン達は確保した女子供を見張る役目だ。


あくまでも奇襲だから掛け声とかは無しに町の中を進んで行く。途中で見かけた盗賊か海賊は素早く首を跳ねていく。


「レジーナ、ガハラの気配って分かる?」


『あのジジィかどうか分からないけど、強い気配が奥から感じる。』


ダメ元で聞いてみたつもりだったのに。ちょっと凄すぎるな。レジーナの案内に従って町の奥に進んで行くと、町の元広場らしき場所に1人の老人がいた。


「相変わらず、顔のしわが無ければ老人には見えないな。」


『くくくっ、相変わらず、口の減らねぇ小僧だな。しかし、わざわざこんな所まで来るなんてな。』


俺達はガハラと対峙しつつ、仕掛けるタイミングを計っている。ガハラはまだ勇者スキルを発動させていないように見える。


『ところで、小僧よ。何故俺をつけ狙う?』


「ギルドの指名依頼があったからだよ。」


『………それも理由の1つかも知れないが、他にもあるんだろう?』


「………教えたら、その首をくれる?」


『………まぁ、理由次第だな。』


マジで? 本当に首をくれるのか? 言ってみるもんだね。


「………俺も迷い人でね。貰ったスキルにスキル強奪っていうのがあって倒した相手のスキルを強奪出来るんだ。なので、あんたの勇者スキルを貰おうと思っているんだ。」


『ほう、そんなスキルもあったのか。なるほどな。俺をつけ狙う理由は分かった。ならば、俺を倒して奪うといい。ただではくれてやらん!』


ちぇっ、やっぱり戦わないと駄目なのか。そしてガハラの身体が輝き始めた。戦闘準備が整ったようだ。


『行くぞ。手加減は無しだ。』


「元々、手加減なんかしていないだろ?」


『はははっ、違いねぇ。』


ガハラが片手に剣を持って、高スピードで俺達に向かってきた。アイリーンとエリーが盾を持って俺の前に立ちはだかった。


ガハラは構わず剣を横に払うと剣の衝撃波が襲って来た。アイリーンとエリーの盾で衝撃波を防いだが先に進めない。


『うぉぉりゃぁぁ。』


ガハラが剣の衝撃波を連続して飛ばしてくる。アイリーンとエリーは盾で防ぐので精一杯だ。


アイリーンとエリーが剣の衝撃波を防いでいる隙に、俺とサーラとジャンヌが魔法を放った。


『うぉっ、あぶねぇなぁ! しかし、かなりの威力だな。結構効いたぞ。』


魔法がガハラに直撃したように見えたが、ガハラは無事のようだ。おそらく魔法攻撃を軽減するアイテムかスキルだろう。しかし、おかげでガハラの動きが止まり、その隙にマリーナとレジーナがガハラの左右から襲いかかる。


『ちぃぃ、ちょこまかと・・・少しは休ませろ!』


レジーナがスピードを活かしてガハラの懐に飛び込もうとし、ガハラが距離を取ろうとするとマリーナの槍がちょっかいを出す感じだ。そこに俺とジャンヌが参戦する。


『くそっ、てめえら少しは老人を労れや!』


「老人がこんなに歯応えあるわけ無いだろう? この糞ジジィがぁ。」


『糞ジジィって言うなぁ!』


ガハラが剣を突き出してくるとアイリーンかエリーが盾で防ぐ。今は俺達が完全にガハラを取り囲んでいる状況になった。


取り込まれている状況から、ガハラが飛んで抜け出ようとした瞬間、頭上に数本の矢が飛んでいった。


『なんだぁ? ちっ、弓矢か! かなり分が悪いな・・・』


サーラの威嚇射撃だ。上に飛ぼうものなら弓矢の良い的になる。


ガハラ vs 俺達7人の戦闘が1時間にも及んだ。途中で、このジジィのスタミナは無限か? とも思ったがジジィもかなり疲弊しているようだ。


『くっそ、しぶとい連中だな・・・しかも全員がそれなりの使い手だな。』


「こっちは若さが売りだからな。」


『ちっ、やかましい! 熟練の技を見せてやるよ!』


1対7の戦闘が続いていたが、ガハラの動きが一瞬鈍ったところにジャンヌの大剣がガハラを襲った。


『ちっ、しくった・・・か。』


ガハラは両手で剣を構えてジャンヌの大剣を受け止めたが隙が出来た。その隙に対して俺がいち早く反応した。神刀を下から上に振り、ガハラの腕を斬り飛ばし、そのまま身体を一回転して腹を神刀で突き刺した。


『ぐっ、うぅぅ。』


「俺達の勝ちのようだね。」


『あ、あぁ、その、ようだな・・・』


「じゃあ、約束通り、その首をもらうよ。」


『あ、あぁ、それは、かまわん、が、1つ頼み、がある。』


「………無茶じゃない範囲なら聞くよ。」


『お、俺の娘を、お前達、の仲間に、入れて、やって、くれ。』


「………は? あんたに娘がいるのか?」


『………あ、あぁ、晩年に、やっと、出来た、自慢、の可愛い、む、すめだ。ことし、で18歳、になる。かなり、の美人、だぞ。』


ガハラがニッコリと笑った。


「だけど、父親の仇になるわけだし、仲間にはならないでしょ?」


『ふっ、あの、子には、本当の、父親だとは、言って、いない。拐って、きて奴隷に、したと、言ってある。それ、よりも早く、奴隷、契約の、譲渡を、させて、くれ。』


そうか、主人が死ぬと奴隷は殉死するんだっけ。ガハラはもう虫の息だ。急がないと手遅れになるな。


「分かったよ、仕方無いね。一旦、あんたの娘を引き取るよ。」


『すま、ないな。娘は、あそこ、の小屋に、いる。』


ガハラが俺に奴隷譲渡を行った後、満足そうな顔をして息を引き取った。しまったな、なんで盗賊になったのか聞き逃してしまった。


暫くすると、いつものスキル取得アナウンスが流れ始めた。


【勇者】スキルを取得しますか?

[はい] [いいえ]


勇者スキルの選択だ。迷うことなく、[はい] を選択したが少し気分が乗らないな。ガハラが死ぬ直前にあんな話をしたからだ。その後、アイテムボックスも取得したが、こちらは一旦、俺のアイテムボックスにしまっておいた。


『ご主人様。とりあえず、ガハラの小屋に行きませんと。』


「はぁ、かなり気が乗らないけど、行くしか無いよね。」


ガハラは自慢の娘と言っていたが、ガハラの顔は完全に盗賊顔だしなぁ。それにどんな顔をしてガハラの娘と会えばいいのか。


小屋はすぐそこなのに凄く遠くに感じるよ。小屋の扉の前に立ち、扉を開けよう扉のノブに手を伸ばした。


さて、何が出てくるかな?

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