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0135:港町インダス3日目


海賊の襲撃を防いだ翌日、とりあえずギルドに向かった。


「ギルドの呼び出しって何だと思う?」


『普通に考えれば襲撃してきた海賊に対する報復の手伝いかと思いますよ、ご主人様。』

『旦那様。この世界はやられたら、倍以上にやり返すのが普通ですからね。』


倍返しが普通なのか。改めて思うが恐い世界だな。


『レイさん、冒険者は舐められた終わりと言われている職業なんですよ。』


サーラまで言っているよ・・・本当に怖いね。



ギルドに到着し、中に入ると結構な数の冒険者達が集まっている。今回の件で集められた冒険者達なのかな? すると冒険者達のリーダーと思われるスキンヘッドのオッサンが話し掛けてきた。


『レイか、よく来てくれたな。早速で悪いが昨日の海賊達の用心棒をしていた老人の話を聞かせて欲しい。』


「俺達もあのジジィを見たのは初めてなんで詳しい話は出来ないけど、かなり強いってことだけは保証できるかな。」


『そうか、やはり強いのか・・・それと、あの老人が逃げるときに使ったスキルに関して情報があれば教えて欲しいんだが。』


「俺達も詳しくは知らないんですけど、勇者スキルの能力の一部だと思いますよ。王都にいる勇者スキル保持者に聞いた内容と似ているんで。」


実は鑑定して勇者スキルを持っていることは確定しているが、そこはあえて濁しておく。


『ありがとう、レイ。そして、あの老人がならず者の町にいるんだよな?』


「多分ですけどね。」


『今回、このインダスを襲ってきた海賊達もならず者の町から来た海賊らしいんだ。なので報復をしなくてはならないのだが・・・そうなると、あの老人と戦闘になる可能性が高い。しかし、我々の実力ではあの老人の相手は難しい。』


あ、凄く嫌な予感がする・・・


『昨日、あの老人を相手に互角以上の戦いをしたレイ達に報復戦に参加して欲しいんだ。』


え? なに? この面倒事を俺に押し付ける感じは。ガハラを倒すまでは共通の目的だから絶対に駄目とは言わないけどさぁ。


「それって、あのジジィの相手を俺達がしろって言っていますよね?」


『正直に言えばそうなるな。すまないが引き受けてくれないだろうか? もちろん、それなりの報酬は用意するつもりだ。』


う~ん、どうするかなぁ? あのジジィが持っている勇者スキルは確かに捨てがたい。でも俺達だけでならず者の町に突撃するのは避けたい。特にガハラの戦闘中に余計な邪魔者は誰かにお願いしたいところだな。


………あれ? これって実はお互いの利害が一致しているのでは? そう考えると追加で報酬が貰える分だけ得をするのかな?


「アイリーン達はどう思う?」


『ご主人様、私は悪く無いと思いますよ。』

『旦那様、あの糞ジジィを倒すチャンスですよ。』

『主様、今度こそ倒します。』

『レイさん、やりましょう!』

『レイくんにおまかせするよ。』

『………レイ様、今度はきっちり片付けます。』


うちのメンバーは皆やる気のようだ。だけど念のため確認しておくことがあるな。


「ちなみに今回のは依頼ということになるんでしょうか?」


『もちろんだ。今回は指名依頼という形にさせてもらうよ。そのほうが君達にもメリットがあるだろう?』


『レイさん、確かに彼が言う通り指名依頼のほうがギルドに対する貢献度は高いですよ。』


『それと、指名依頼の成功報酬は大金貨20枚を用意している。これでどうかな?』


マジか、これは俺達にとっても凄くおいしい話だね。あのジジィと戦う際の懸念点が解消されるのと高額の報酬が手に入る。


「分かりました。あのジジィと対決している時に雑魚海賊達が邪魔してこないようにサポートをお願いしますね。」


『分かった、その辺は任せてくれ。おっと、そうだ。自己紹介がまだだったな。俺はインダスのギルドマスターをしているライガンだ。』


俺達がインダスのギルドメンバー達と自己紹介していると、何処かに行っていたライガンが戻ってきた。


『それじゃあ、早速ならず者の町に向かって出発しようか。今から出れば明日の朝には着くはずだ。』


ギルドの外に出てみると、幌馬車が20台も用意されていた。なんか手際が良すぎるな。


『昨日、海賊に襲撃されたことが大商人連中の耳に入ってな。大商人達からも馬車と彼らの私兵の援助が来たんだよ。』


なるほどね。自分達の周辺に盗賊や海賊がのさばっていたら商売あがったりだし、他の商人達に対しても面子が潰れるよな。利益に敏感な商人らしい素早い行動だね。


ギルドの冒険者が30人くらいのところに、商人の私兵50人が加わり、ちょっとした軍隊のようになった。


『全員準備は出来たな。よし、出発するぞ!』


全員が馬車に乗り込み出発した。何故かライガンは俺達と一緒の馬車に乗ろうしたが、あえて却下した。


「だって狭いじゃないですか。」


この一言でライガンは残念そうに俺達の後ろにいる馬車に移動した。


ーーーーーーーーーー


夕方になり、ライガンが夜営の準備を開始するために号令を掛けた。


皆、馬車から降りるとまずは身体を伸ばし始めた。狭い馬車に閉じ込められていたからね。気持ちはよく分かる。


そんな中でもライガンが俺達のほうに寄ってきて話し掛けてきた。


『今日はここで夜営して明日は日が昇る前に出発する。そうすれば早朝にはならず者の町へ襲撃出来るはずだ。』


「分かりました。そのつもりで準備しておきますね。」


まぁ、準備といっても心の準備くらいしか無いけどね。あのジジィと戦うための心の準備は必要だ。


夕食は全員で固まって食べている。ひょっとしたら冒険者達と商人の私兵達は仲が悪いかもと勝手に想像していたがそんなことは無かった。


どうやら、商人の私兵達も元冒険者だった者が多くおり顔見知りが沢山いるらしい。なので昔の話等で盛り上がっているようだ。


『皆、盛り上がっているところ済まないが、明日の朝は早いからな。早めに睡眠を取ってくれ。』


ライガンの一言で皆が寝る準備を始めた。


『明日はレイ達が戦闘の要になるからな。なのでレイ達は見張りに立たなくていいから、しっかりと休んでくれ。』


「え、本当にいいんですか?」


『あぁ、構わないさ。その代わり明日は頼むぞ!』


「はい、分かりました。まかせて下さい。」


ここはライガンの言葉に甘えて、ぐっすり休ませてもらおう。


………

………


『おい、レイ・・・おい、レイ、起きろ。そろそろ出発するぞ。』


「………え、もう出発するんですか?」


『そうだ。夜明け前に出発するって言っただろう?』


確かに言っていたが、今は夜明け前というよりも真夜中じゃないのか? こっちの世界の人達の時間感覚はよく分からないな。


『ご主人様、馬車の中で少し寝ていても良いですよ。』


「ありがとう。そうさせてもらうよ。」


さすがに幌馬車の中は広く無いため膝枕は無理なのでアイリーンの肩に寄りかかって寝させもらう。アイリーンの髪から甘い香りがするな。


………

………


『ご主人様、そろそろ起きて下さい。』


「う~ん・・・おはよう・・・」


馬車の外を見ると、周囲はまだ薄暗いな。


『ならず者の町はもう目前とのことですよ。』


もう少しで勇者スキルを持ったジジィと再戦だな。今度はきっちりと勝つつもりだ。


しっかりと気合いを入れていくぞ!


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