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0134:港町インダス2日目2


『海賊だ~、海賊が来るぞ~!』


という声が聞こえてくる。バカンス中なので、わざわざ海賊を探すつもりは無いが襲ってくるなら話は別だ。


水着のままであるが、アイテムボックスから全員の武器を取り出し武器を持って声がする方向に向かった。


声を上げている男は港を指差ししており、港の方を見ると黒く薄汚れた3艘の船が港に接岸している。どうやら、既に港で海賊と自警団が交戦中のようだ。


『ご主人様、どうしましょうか? 今から駆けつけても間に合わない可能性はありますが。』


アイリーンがこういう聞き方をする時は、間に合わなくても駆けつけるべきだと言っている。もちろん俺も駆けつけるつもりでいる。


「間に合わない可能性もあるけど、間に合う可能性もあるなら駆けつけるべきだよね。」


ということで、港に駆けつけることにした。ただし防具を一切身に付けていないから慎重に行くことにする。


アイリーンとエリーを先頭にして、すぐ後ろにはレジーナを配置する。その左右にはマリーナとジャンヌがいる。俺とサーラは直ぐに回復が出来るようにと後衛だ。


港のすぐ近くまでやって来ると、まだ戦闘中のようだった。どうやら間に合ったようだ。


「冒険者のレイと言います。とりあえず、助っ人に来ました。勝手に助っ人しますからね。」


『………え? あぁ、助かる。頼む。』


自警団の人と思われる男性から了解をもらった。これで後から文句は言われないはずだ。


〈鑑定〉

ヒューマン

スキル:剣術


犬人属

スキル:剣術


猫人属

スキル:槍術


鑑定してみたが敵味方が入り交じっているため、鑑定結果が誰のものなのか分かりにくい。


「鑑定したけど敵味方ぐちゃぐちゃだから細かく把握出来ないな。まぁ、ぱっと見たところは剣術か槍術持ちが結構いるから気を付けてね。」


『ご主人様。それってかなり適当過ぎますよ・・・』


「仕方が無いでしょ。こんな乱戦じゃ・・・」


とりあえず、鑑定は継続して続けよう。ちょっと目の前に表示される鑑定結果が邪魔だけど。


海賊の数は、おおよそ60~80人くらいか。そのうち20人くらいは倒されているようだ。ただし、自警団のほうは30人以上は倒されている。


「う~ん、これって自警団のほうが押されているのかな?」


この俺の呟きに自警団の1人が反応した。


『違う! 海賊の中に1人だけ手練れがいて、そいつにほとんどが倒されたんだ!』


手練れ? どれだ? 手練れを探していると


『キャァァァ』


突然、エリーが俺の足元までぶっ飛ばされてきた。


「エリー、大丈夫か?」


『痛ぅぅ。レイくん、気を付けて。あのジジィ、かなり強いよ。』


アイリーンと対峙している老人が1人いた。老人のくせに筋力が衰えている様子は全く無い。顔のしわが無ければ老人とは思えないほどだ。


『くくくっ、ジジィ呼ばわりか。最近の小娘は口が悪いのぅ。』


アイリーンとエリーを同時に相手してエリーをぶっ飛ばしたのか? 何なんだよ、あの老人は? 本当に老人なんだよな? それよりも、まずは鑑定が先だよな。


〈鑑定〉

ヒューマン

スキル:勇者、アイテムボックス


「勇者スキルにアイテムボックスまで。まさかガハラか?」


『ほう? 鑑定スキルか? それに俺の名前を知っているのか? 何故だ、小僧?』


「勇者スキルを持っているのに盗賊になった馬鹿者がいるって話を最近聞いたんでね。」


『はははは、馬鹿者か。くくく、確かにそうかも知れんな。』


「なんで盗賊になんかになったんですか?」


『さて、なんでだろうな。俺に勝てたら教えてやってもいいぞ。』


「分かりました。じゃあ行きますよ!」


ガハラと対峙しているアイリーンの後ろから俺とジャンヌが左右に飛び、アイリーンの後ろにはレジーナがサポートしながら、ガハラに突撃する。


『ちょっ、ちょっと待てよ。こういう時はタイマンが普通だろ? 何でまとめて掛かってくるんだよ?』


「お前の普通なんて知ったことじゃないよ。それにタイマンでやるなんて一言も言っていないよ!」


『ははは、そりゃあ、そうだよな。それじゃあこちらも久しぶりにマジでやるか!』


そう言うと、突然ジジィの身体が光り始めた。おそらく勇者スキルを発動させたんだろう。


『ふっ!』


ジジィの剣をアイリーンが盾で食い止める。


『ほう? 今の俺の動きに付いてこれるのか。中々やるじゃないか。』


左右から俺とジャンヌが斬りかかる。ジジィはジャンヌの剣をかわし、自分の剣で俺の剣を止めた。その瞬間にレジーナがアイリーンの脇から飛び出しジジィに斬りかかった。


『うぉ、あぶねぇ! さすがにこの人数相手だと厳しいな。』


ガハラは間一髪でレジーナの剣を避けたかと思いきや直ぐに斬り返してくる。無駄な動きが一切無いようにみえる。


ガハラは俺とアイリーンとレジーナとジャンヌの4人がかりでも一歩も引かない。


「このジジィ、かなり強いね。」


『おい小僧、ジジィって言うな。年上を敬ってガハラさんって呼べ!』


「盗賊に成り下がったジジィを敬えるわけ無いだろう? ジジィで十分だよ。」


『かかかっ、そりゃあ、そうかもな。しかし、ちょっと分が悪いな。ここは退散するか。』


「おいおい、まさか部下を見捨てるつもりなのか?」


『はははっ、こいつらは部下じゃねぇよ。俺はただの雇われ盗賊だよ。なんで、こいつらのために命を張るなんてことはしねぇよ。』


「まさか一匹狼なのか。寂しいジジィだな。」


『まったく口の減らねぇ小僧だな。二度と会いたくねぇな・・・帰還魔法。』


ガハラが帰還魔法を発動した瞬間、ガハラの身体が白い光の玉に包まれ、海のほうに飛んでいった。


『あ、ガハラの野郎、逃げやがったのか?』

『ちょっと待て、俺達はどうすんだ?』


ガハラが撤退した瞬間に海賊達が慌て始めた。どうやらガハラの腕にかなり頼りきっていたのだろう。


自警団の人達が海賊達を圧倒し始めた。もう俺達の手助けは必要無さそうだ。


『ご主人様。逃げられちゃいましたね。しかし勇者スキルって、かなり厄介ですね。』


「そうだね。ただガハラは致命的なミスをしたよね。」


『え? 致命的なミスですか?』


「うん、そう。あの帰還魔法って真っ直ぐ拠点に戻るんだよね?」


同じ勇者スキルを持っているハヤトから聞いた話では帰還魔法は真っ直ぐ拠点に戻る。ということは、あの白い光の玉が向かった方角にガハラの拠点があるということだ。


『あ、そういうことですか。確かに致命的なミスをしていますね。』


自警団達が海賊達を制圧したのを確認した。


生き残った自警団達の回復をしながら、ガハラが帰還魔法で戻った方向に何があるか聞いてみた。


『その方向にあるのは、ならず者の町だな。』


え? なにそのゲームの定番みたいな町は。


『かなり以前に古くなりすぎて廃棄された町なんだが、普通に町で暮らせないならず者達が集まっている町なんだよ。』


「なんで、そんな町が放置されているんですか?」


『何度か討伐されているんだけど、暫くすると、またならず者達が集まってくるんだよ。』


「そのならず者の町には何人くらいいるか分かりますか?」


『え? まさか、ならず者の町に乗り込むつもりなのか?』


「いや、一応参考までに聞いておこうかなと。さすがに乗り込むつもりは無いですよ。」


アイリーン達がジト目を送ってくる。この嘘つきが、という視線だ。


『まぁ、正確な人数は不明だが、300人くらいらしいな。』


300人か、ちょっと多いな。町の外から魔法で吹き飛ばすか? 圧縮したファイヤボールを何発も撃ち込めば安全に制圧出来るかも知れないな。


『しかも、誘拐された女性も結構いるらしいぞ。』


はい、消えました。外から魔法で吹き飛ばすのは却下になりました。今日はもう帰ってどうするか考えよう。放置も選択肢の一つだ。


『すまないがこのまま冒険者ギルドに寄ってもらえるかな? 今日の助っ人の謝礼をしたい。』


自警団の人達だと思っていたが、どうやら冒険者だったようだ。とりあえず、一緒にギルドに向かうことにした。


ギルドに入り受付嬢にギルドカードを見せると驚いた顔をしている。


『こんなに若いのに、もうランクCまでランクアップしているなんて・・・凄いな・・・』


助っ人の報酬を受け取り、帰ろうとしたところで冒険者の1人が声を掛けてくる。


『すまないが、明日もう一度、ここに来てくれないか? 海賊どもの助っ人の話を聞かせて欲しくてな。』


面倒臭いと思いつつも特に予定も無いので、明日ギルドに来ることを約束してしまった。これには早まったことをしてしまったな。アイリーン達も、あちゃーという表情だ。


アイリーン達に心の底から謝罪した・・・


本当にゴメン・・・

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