0105:やっぱりファンタジーだ
女性陣だけで考えた別荘の構想を聞いて正直ビックリした。結構な量の木材が必要となるな。
「早速、森まで木を伐採しに行かないと。これを作るとなると、別荘だけで100本は必要だと思うよ。他の家とかも作るんだろうし、それなりの本数を伐採してこないと。」
『『え? 本当に別荘だけで木を100本も必要ですか?』』
「うん。多分、必要になると思うよ・・・この別荘は敷地面積が結構広いからね。」
アマンダさんが考え込んでいる。どうも想定外だったらしいね。どうやら計算が苦手のようだな・・・とりあえず、さっさと森に行って木を伐採してこよう。
アマンダさんを残して俺達だけで森に向かうことにした。村の入口の門に向かうと冒険者達がいた。どうやら門番をしているようだ。
『よう、レイ。また森に行くのか?』
「はい。また、木を伐採してきます。」
『ははは、毎日、頑張ってるな。まぁ、気を付けて行ってきな。』
軽く会釈して門を出て森に向かう。森まではそれほど距離は無いが油断はしない。しかしモンスターに遭遇することなく森に到着した。
「この森は本当にモンスターが少ないよね。」
『確かに。逆にモンスターが少な過ぎる気がしますね、ご主人様。』
「そうなんだよね。ゴブリンくらいは普通にいても良いくらいなんだけどね。」
『もしくは、この森にいるモンスターのほとんどが隠密スキル持ちとかですかね? 旦那様。』
「その可能性も一応考えたけど、それでもモンスターが襲ってこない理由にはならないよ。」
『あ、それもそうだよね。』
ふと、今まで伐採した木の切り株を見てみると、それぞれの切り株の根元から新しい若芽が生えてきている。それが既に50cmくらいになっている。
「この切り株から出ている若芽って最初から生えていたっけ?」
『………ちょっと分からないです、レイ様。』
ひょっとすると、異世界の木だから成長が早いだけかも知れないが。念のため注意しておいたほうがいいだろう。
「分からないなら仕方が無いよね。とりあえず、木の伐採がしようか。」
俺とジャンヌが次々と木を伐採していく。サーラとレジーナには周囲を警戒してもらいつつ、アイリーンとマリーナとエリーには枝払いをしてもらう。
『ちょっと。レイくん、ジャンヌ。木を伐るスピードが速すぎるよ。こっちの枝払いより速いよ。』
暫く、真面目に木を伐っていると、レジーナが声を上げた。
『主様、何か巨大なモンスターがやって来ます!』
ズン、ドン
と音がする度に地面が揺れる感じがする。何かヤバいモンスターが現れたのか?
森の木を掻き分けるようにして、そのモンスターは現れた。身長は5m程はあり、その姿は巨大なトレントのようにも見える。
〈鑑定〉
ウッド・エンシェント
スキル:念話、風魔法、土魔法
「ウッド・エンシェントって鑑定されたけど、サーラは知っている?」
『まさか、エンシェントですか? エンシェントとは古代から生存していると言われている幻のモンスター達の呼称ですよ。』
幻のモンスターか。なんか格好いいな。
《お前達か? 儂の森で次々と木を伐り倒しているのは?》
『『え、なに? 直接、頭に声が?』』
「これが念話かな。あのウッド・エンシェントのスキルに念話というのがあるから。多分だけど、その念話スキルだと思うよ。」
《ほう? まさかの鑑定持ちがいるのか。それよりも、儂の森の木を伐り倒しているのは、お前達なのか?》
あ、不味い。かなり怒っているようだ。さすがに木を伐り過ぎたかも知れない。素直に謝るしかないか。
「あ、はい。すみません、木を伐り倒したのは俺達です。貴方の森だとは知りませんでした。あの、許してもらえませんでしょうか?」
素直に謝ってみたが、許してくれるかな?
《それはならぬ! 人間風情が儂の森に入ることすら許せぬ! 死をもって償うがよい!》
やっぱり駄目らしい。かなり、ご立腹のようだ。
「気を付けて。風魔法と土魔法を持っているからね。」
アイリーンとエリーが盾を持って前面に立った。それと同時に鎌鼬のような風が襲い掛かって来た。アイリーンとエリーの盾のおかげで大半の鎌鼬は防げたが完全には無理だった。
「つぅ、切り傷だけど痛いな。」
サーラの魔法と同じだな。喰らってみると分かるが、かなり厄介だ。うっすらとは見えるが視認しずらいので当然回避しずらい。
「こっちも魔法で反撃するぞ。」
俺はファイヤアロー、サーラはウィンドカッター、ジャンヌはサンダーレイをウッド・エンシェントを放った。的が大きいため当てやすい。
《ぐぅぅ、まさか、人間風情がここまで強力な魔法を放つとは・・・だが、まだだ。》
俺とサーラとジャンヌの魔法を受けても倒れないとは。そしてウッド・エンシェントの枝のような腕を伸ばし、上から俺達を叩き潰そうとしてくる。
『みんな、しゃがんで!』
アイリーンの掛け声でしゃがみこむ。アイリーンとエリーが盾を上に持って仁王立ちになる。
ガンッという鈍い音がしたが、アイリーンとエリーの盾が枝のような腕の攻撃を見事に受け止めた。そして、その瞬間に俺の神刀ミロが枝のような腕を一刀両断にする。
《ガァァァ、クッ、儂の腕が・・・ガァ?》
枝じゃなかったようだ。そして、いつの間にか隠密スキルを使ってウッド・エンシェントの懐に飛び込んだマリーナとレジーナのそれぞれの武器で一撃を加えていた。
《クッ、こざかしいぞ、人間め!》
ウッド・エンシェントの動きが止まり、止めとばかりに俺はファイヤボールをウッド・エンシェントに放った。ファイヤボールが見事に命中し、ドンっという重低音が響いた。
ウッド・エンシェントの幹が抉れており、抉れた箇所から煙が出ている。
《ぐぅぅ、くそっ。まさか、人間ごときがここまでやるとは・・・》
「そろそろ、やめにしないですか?」
《なんだと? どういうことだ? 儂に止めを刺さないのか?》
念話スキルには興味があるが、このウッド・エンシェントはこの森の主っぽいし、仲良くしておいたほうがいい気がする。うっかり倒すと呪いがありそうだしね。御神木っぽいし。
「こっちとしては、そのつもりは無いですよ。どうしても戦うというのでは無ければ。その代わり、お願いがあります。」
《むぅ・・・人間よ。言ってみろ。》
「定期的に木を伐採させて下さい。今、俺達はあっちで村を作っています。村を作るためには木が必要なんです。」
《………1つだけ条件がある。この森の奥に川があるのは知っているか? その川を越えて木を切らないと約束出来るか? それが譲歩の限界だ。》
「川があるのは知っています。分かりました。村の人間には川を超えて木を伐採しないように伝えます。ちなみに川を越えて探索するのも駄目でしょうか?」
《………本来は、好まぬが仕方無いだろう。特別に許可しよう。》
「分かりました。その条件を村の人達に伝えておきます。」
《………頼むぞ。儂とて好んで人間と争うつもりは無いからな。しかし、お主は変わっておるのう。名はなんという?》
「俺の名前はレイと言います。」
《………レイか。しかと覚えておこう。今回の詫びの意味を込めてこれを渡そう。手を差し出すがよい。》
言われた通り、手を差し出すと手の平に種の様なものが10粒ほど現れた。
《それは、トレントの涙といって、一粒で今の若さを保ったまま寿命が20年は延びるアイテムだ。では、機会があれば、また会おうぞ。》
ウッド・エンシェントは別れを告げて、森の奥に戻っていった。
『レイさん・・・凄すぎです・・・』
「そうだね。まさか念話なんてスキルがあってモンスターと普通に会話が出来るとは思わなかったよ。」
『それはそれで驚きなんですけど、エンシェントモンスターと普通に会話をしているほうが、もっと驚きなんですけど?』
「え、そっち? だって向こうから話しかけて来たんだし。話しかけてきたのを無視するのは失礼でしょ?」
『『そりゃあ、そうかも知れませんけど・・・』』
ちゃんと会話するのは一般常識ですよ。
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