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第九十五話 倍返し?

 教室に着き、友子はいつも通り挨拶しました。


「おはよう!」


 いつもならば、皆が挨拶を返したり話し掛けてきます。しかし、今日はそれがありません。


「・・・返事がない。ただの屍のようだ」


「死んでない、死んでないから」


 定番のネタに対して、突っ込んだのは私だけです。他の生徒達は、私達が存在しないかのように無視しています。

 静かな教室を、友子と話しながら席に向かいます。途中、本を読んでいた女子が足を通路に延ばしてきました。


 足を引っ掛けて転ばそうという、古典的な苛めです。無視といい典型的で分かりやすいのですが、もう少しオリジナリティを出してほしいものです。


 私は当然足を跨いで歩きます。足を出した女子は、そちらを見ていなかったにも関わらず避けられた事に驚いていました。


「遊、どうしたの?」


「大根が転がっていただけよ。友子、足元に気を付けてね」


 その言葉に下を見る友子。そこには驚きのあまり引っ込める事を忘れて出されたままだった足が残っていました。


「ああ、なるほど。幼稚ねぇ」


「友子、事実だけど、それを言ったら気を悪くするわよ」


 案の定、足をだしている女子や、他の生徒がこちらを睨んでいます。

 多少気持ちはわかるとはいえ、甘んじて苛めを受けるつもりはありません。それに、友子まで巻き込んだのです。これくらいの仕返しはさせて貰います。


 そんなハプニングと言えないようなハプニングはありましたが、席にたどり着きました。席にもイタズラされた形跡はありません。まだ物に手を出していないようです。


 授業をいつも通り受けて・・・と言いたいのですが、先生もやたらと私に答えさせます。数学の時など、一流大学入試レベルの問題を出題されました。

 もちろん、顔色一つ変えずに解きました。解いた時の先生は、信じられない物を見たような間抜けな顔をしていました。まさか正解を答えられるとは思わなかったのでしょう。

 他の生徒も呆然としています。友子は、そんな先生と周囲の反応を見て爆笑していました。趣味がなくて、勉強ばかりしてたのでこれ位楽勝です。


 そんなこんなで昼休み。友子と屋上で弁当を食べながら話します。


「遊が問題解いた時の顔!傑作だったわ」


「あれ位解けなくてどうするのよ?ここは進学校でしょ?」


 そうとは思えない所もあるけどね。校長とか教頭とか。担任も性格に問題アリだし、進学校の看板を下ろした方が良いのではないでしょうか。


「で、先生までいじめに参加してるけどどうするのよ?」


 先生がいじめる側である以上、学校側に解決を期待出来ません。保護者に報告し、教育委員会に訴えるというのが解決への道筋でしょう。


「明後日には勝手に解決するわよ。本当に彼女達がユウリのファンならね」


 ラジオの内容を知らない友子は、しきりに首を捻っています。今回のいじめがユウリを盲愛することで起きてるなら、あれで収まるはずです。


 午後の授業も同じように進み、私は全てを退けました。体育の授業には少し参りました。いきなり授業内容が男女混合ドッジボールに変更になったのです。

 チーム分けは私と友子対その他全員。こちらのチームは私だけが内野で、友子一人が外野。ここまであからさまにやられると、逆に称賛したくなります。


 しかし、結果は彼らの思惑通りにはならず私と友子の勝ちで終わりました。各種武道をかじった私に、運動系で勝とうというのは無理だと思います。


 放課後にそれを友子に言うと、「全部師範クラスでしょ?かじったなんて可愛い物じゃないわよね」と呆れられました。


 それを聞いていた周囲の生徒が軽くひきつってたわね。武力での仕返しなんかしないから大丈夫なのに。


「遊、また明日ね」


「友子、また明日!」


 友子と別れ、家に帰ります。着替えながら今日を振り返りました。

 友子もいじめのターゲットになるのは誤算でしたが、私がいじめを全て返り討ちにしたから、向こうも向きになって私に集中しています。


 明日と・・・出来れば明後日までこの状態を維持出来れば友子に被害はないでしょう。


 明日も私が矢面に立つ。一層気合いを入れて、脳力試験の収録に向かいました。


「ユウリちゃん、聞いたよ。学校で苛められてるって!」


「学校側には言った?両親にも報告しないとダメだよ!」


 テレビ局に着くと、蓮田さんや宇宙番長さんから聞いたのか解答者の方やスタッフさんから心配する言葉をいただきました。


「校長先生には報告してます。でも、先生も苛めに荷担していますから、学校の対応は期待していません。両親には話しました」


 教師が苛めを黙認するに留まらず、荷担までしていると聞いて皆さんの表情が変わりました。


「スーパーAチャンネル辺りで特集組んで叩くか」


「そうだな、ちょっとプロデューサー捕まえてくる」


「ちょっ、ちょっと待ってください!」


 ADさんが走り出そうとしたのを、間一髪で引き留めました。


「学校では私がユウリだと知られていないのです。知られたくないので、大事にしたくありません。朝霞さん、打ち合わせ始めましょう!」


 逸るスタッフさんや解答者さんを抑え、何とか収録を進行し終わらせました。今日が初司会だというのに、その緊張や重圧など吹き飛んでしまいましたよ。




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