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第八十五話 ルート2

いつも感想や誤字報告をいただき、ありがとうございます!

「声優だって、タレントと変わらないぞ?」


「そうそう、朝霞さんなんて、アーケードゲームの実況もやってるんだから!」


 私の内心を読んだように、追加で情報をくれるスタッフさんたち。家庭用ゲームに声をあてている人はかなりいますが、ゲームセンターのゲームにとは聞いたことがありません。思わず朝霞さんを見ます。


「やりましたねぇ。キャラクターもののレースゲームの実況」


 苦笑いしながら教えてくれました。千葉にあるのに東京なランドのキャラクターよりも知名度が上のゲームの主人公のカートゲームで実況をしたそうです。


「朝霞さん、どれだけ広範囲に活動してるんですか!」


 この人ならお笑いの世界にだって進出出来そうです。既に声優の枠越えてますよ!


「そんな事より、そろそろ終わりの時間だ。最後の挨拶頼むよ、七里さん」


「これで引退となります。皆さん、今までありがとうございました!」


 頭を下げる七里さんを全員の拍手が包みます。私と朝霞さんが呼ばれ、七里さんを挟むように立ちました。


「これからは一視聴者として、番組を楽しませて貰います。朝霞さん、ユウリちゃん、頑張ってね!」


 右手を朝霞さんに、左手を私に差し出されしっかりと握り返します。


「七里さんと作ってきた番組、更に面白くするよ!」


「楽しんでもらえるように頑張ります!」


 更なる拍手に包まれ、送別会は終わりました。めいめいがタクシーを呼んだり運転代行を呼んで帰る中、私はいつもの通り桶川さんに送って貰いました。

 いつもの通り車内で着替えをしていると、桶川さんが心配そうに話してきました。


「来週からは、脳力試験の打ち合わせも入るわよ。精神的なプレッシャーがかかると思うけど大丈夫?」


「ダメでもやるしかないし、七里さんから渡されたバトンを投げ出すつもりはないわ」


 そう思うのならば、仕事を打診された段階で話して下さい。そして、私に心の準備をする期間を下さい。

 元々なりたくてなった声優ではないし、やりたくてなった司会でもありません。

 しかし、だからと言ってそれを理由に逃げるなんて嫌ですしやり遂げたいとも思うので、頑張るしかないのですけどね。


「いい返事ね。頼もしいわよ、ユウリちゃん」


 家に着き、走り去る車を見送りつつ改めて思います。朝霞さんと司会をするのだと。今までは朝霞さんと七里さんに合わせていれば良かった。

 でも、今度からは私が朝霞さんと番組をリードしていかなければなりません。


「お帰りなさい!今日の収録、凄かったの!」


「由紀、土産話は落ち着いてから聞くから。とりあえずリビングに行くわよ」


 玄関から入るなり飛び付き、抱きつく由紀を引きずるようにリビングへ歩きます。両親は、私達を見て苦笑いしています。


「由紀、遊はバイトが終わって疲れてるのよ?」


「そうだぞ。遊のコーヒーでも淹れてあげなさい」


 お母さんとお父さんの言葉に、やっと私を離す由紀。キッチンに向かっているので、言われた通りコーヒーを淹れてくれるのでしょう。


「遊、司会就任おめでとう!」


「デビューして半年足らずで司会なんて凄いな」


 お父さんとお母さんが、小声で祝ってくれました。私がクイズ番組の司会をやるなんて、半年前には夢にも思いませんでした。


「ありがとう。いきなりだったから、私もビックリしたわ」


 そこに由紀が帰ってきました。なのでこの話題はここまでです。ソファーに座ると、私の前にカップに入ったコーヒーを置いてくれました。


「はい、お姉ちゃん。それで今日の収録なんだけど、凄かったんだよ!」


 私の隣に座り、怒濤の勢いで喋りだす由紀。相槌を入れる隙も無い程で、お父さんとお母さんは、それを苦笑いしながら見ています。


「・・・で、ユウリさんの独壇場で終わったの。早々にユウリさんの優勝が決まったけれど、圧巻で凄く面白かったわ」


 圧巻なのは三十分以上ぶっ通しで話し続けた由紀の方だと思います。それだけの肺活量があれば、オペラ歌手にも声優にもなれそうです。


「良かったわね。でも、七里さんが結婚引退とは驚きね」


 掛け値無しで、本当に驚きました。先週の録画でも、そんな素振りは毛ほども見せていなかったのです。


「そうよね!・・・って、言っちゃったら、放送で見る楽しみが無くなっちゃうわね」


「大丈夫よ。どうせ見学者かスタッフから漏れて、明日にはニュースになってるわ」


 しょげる由紀の頭を優しく撫でます。いくら口止めをしたところで、こういう物はどこかからか漏れるものです。


「だから、今由紀に聞いても同じよ。教えてくれてありがとう。私は疲れたから、お風呂に入って寝るわ」


「お疲れ様。由紀もお休みなさい」


 お母さんはお父さんの襟首を掴むと、仕事部屋へと消えて行きました。今日はどんな格好をさせられるやら。興味はありますが、絶対に覗きません。とばっちりを食うのはごめんですから。


「それじゃ、お風呂入って寝るわ。お休みなさい」


「お姉ちゃん、お休みなさい」


 部屋で着替えを持ってお風呂へ。手早く髪と体を洗うと、早々に出ました。髪を乾かすと、すぐにベッドにダイブします。そのまますぐに意識を手放し、深い眠りにつきました。

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