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第七十七話 護衛

 一行はバスに乗り秩父駅を目指します。並走して走るSLが旅情を誘い、穏やかな気持ちにしてくれます。


「流石は埼玉の秘境、秩父ね。自動改札機もないし、切符も手売りだったりして」


「券売機はあるわよ。高額紙幣を使えないSX-4だけど」


 上野動物園にも使われている、由緒ある券売機です。


「遊、絶対に鉄道マニアでしょ?」


「知り合いに元鉄道関係者がいるからよ」


 門前の小僧習わぬ経読むという奴です。その人は父親が元国鉄職員で自身は改札機や券売機の保守をしていたらしいです。


 鉄疑惑をかけられ、弁明しているうちに秩父駅に到着しました。赤い矢の電車に乗り、何事もなく池袋に帰りつきました。


 みんな帰りは同じ方向なので、最強の埼○線に乗り換えです。

 そのため、西武線乗り場からJR乗り場に民族大移動。

 しかし、私は迎えに来ているはずの桶川さんと合流するためサンシャイン60方面へ。


「ちょっと遊、そっちじゃないわよ?」


 里美が慌てて連れ戻そうとしますが、それに気付いた友子が制止しました。


「あ、里美、遊は腐女子ロードに行くんだって」


 しれっとシャレにならない冗談をかます友子。誤魔化すにしても、もう少しマシな物がなかったのでしょうか。


「なら私も!」


「私も行く!」


 食いついてくる里美と良子。二人とも、そちらの素養があるのでしょうか。私はどのような趣味も否定はしません。しかし、二人とは少し距離を置こうかと思います。


「腐女子ロードなんか行かないわよ、この後用事があるの。あと友子、明日くすぐりの刑二時間ね」


 それだけ言うと人混みに紛れ姿を消しました。まっすぐ待ち合わせ場所に行かず、少し遠回りして向かいます。好奇心に駆られた二人が尾行しているかもしれません。


 ・・・やはり居ました。人混みをうまくすり抜け、二人をまいて桶川さんに合流しました。


「遊ちゃんお疲れ様。どうだった、宿泊研修は?」


「大変だったわよ。熊に遭遇するなんて、計算外にも程があるわ」


 車に乗り込み、爆弾を投下します。エンジンをかけ、車を出そうとした桶川さんの動きが止まりました。


「えっ!熊に!大丈夫だったの?」


「大丈夫じゃなかったら、ここには居ません。あと、前を向いて運転して下さい!」


 驚きのあまり振り返っている桶川さんを注意します。まだ動いていないので事故になりませんでしたが、動いていたら事故になっていたでしょう。


「あ、ゴメンゴメン。その話、ラジオでしたらウケるわね」


「そんな事話したら、遊がユウリですって言うようなものだわ。一年生全員知ってるのよ?」


 確かにウケは取れるでしょう。その代わり、ユウリの正体が遊だと確実にバレます。自分から正体明かすような真似は、絶対にしたくありません。


「チッ、気付いた・・・それもそうね。ご免なさいね、気付かなくて」


「桶川さん、今舌打ちを・・・」


 桶川さん、舌打ち聞こえてますよ!基本的に桶川さんは私の味方ですが、時折面白い方向に舵を切ろうとするので油断が出来ません。


「さ、着いたわよ!お仕事、お仕事!」


 諦めのため息をつくと、気分を入れ換えてお仕事に励みました。


「遊ちゃんお帰りなさい。熊鍋の準備は出来ているわよ」


 家に帰ると、満面の笑みのお母さんに出迎えられました。今日の夕食のメニューも熊鍋ですか。凄い偶然・・・の訳がないですよね。


「もしかして、旅行中の事知ってる?」


 あんな出来事があったのです。学校側から説明がされていても不思議ではありません。


「お母さんの知り合いが、護衛を申し出てくれていたのよ。逐一報告は受けているわ。まさか熊に遭うと思わなかったけど、もしもの為に頼んで正解だったわね」


「えっ、護衛ってまさか・・・」


 私を助けてくれた地元猟友会の皆さん。イロモノ銃とかあったので流してしまいましたが、アンチマテリアルライフルなんて猟友会で保持も維持も出来る筈がありません。


「気付かなかったようね。遊ちゃんもまだまだと言いたい所だけど、彼も本職だから仕方ないわ」


 お母様、そのお知り合いの本職とはどのような職業なのでしょうか。と聞きたいところですが、軍用兵器を使用出来るような立場のようなので聞かぬが花という奴でしょう。


「お姉ちゃん、お帰りなさい。熊を倒したって聞いたけど、強敵だった?」


 リビングから顔を出した由紀に連れられてリビングへ。家に帰っても私に平穏は訪れそうにありません。

新宿御苑も同型機でした

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