表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/444

第七十四話 正攻法です

麻雀回です。興味のない方はごめんなさい

「さ~て、かっぱぐわよ!」


 部屋に戻るなり、雀卓に座り気合い充分な友子。私も半ば強制的に参加となりました。


「そう言えば、遊は麻雀出来るの?」


「出来なかったら友子は誘わないんじゃない?」


 良子の疑問に里美が答えます。友子は良からぬ事を企んでいるのか、弛んだ顔で私を見ています。


「一応出来るわよ。家族以外とやるのは初めてだけどね」


 牌を積みながら答えます。麻雀の経験はあるのですが、家族と打つ家庭麻雀なので家族以外と打つのはこれが初めてです。



「ただ打つのも緊張感がないし、トップはビリに一つ命令出来ることにしない?」


「それ、友子が有利じゃない。何を命令されるかわからないから嫌よ」


「漫然と打っていたさっきとは、気合いも違うでしょ。初参加の遊が文句を言っていないのよ」


 難色を示す良子を友子が説き伏せます。それでも納得しない良子に、里美が耳許で囁きました。


「友子相手に激戦を繰り広げた私達が、素人の遊に勝てない筈がないわ。ビリにならなければデメリットはないわよ」


 耳のよい私には丸聞こえでしたが、聞こえないふりをしてスルーしました。


「わかったわよ。その条件でいいわ」


 そして始まった麻雀大会。三対一に近いこの状況で私が勝つことは不可能に近く、友子の思惑通りにトップが友子で私がビリで終了・・・とはなりませんでした。


 ・・・2時間後。


「カン!ツモ!ドラが乗って8000オール!」


 牌を卓に叩きつけながら宣言する私。里美も良子も友子も、点棒は殆ど残っていません。


「くっ、強いわ!」


「ツイてるわね!」


「まだまだぁ!」


 ・・・さらに2時間後。


「ロン!大三元、字一色、四暗刻!」


 卓にうつ伏せ、頭から煙を吹き出す3人。点棒はとっくにマイナスとなり、三人の借財だけが積み上がっていきます。


「あんた何処の女流プロよ!」


「どんだけ強いのよ!」


「勘弁して・・・良子のHPは、もうゼロよ!」


 三人揃ってマイナス二十万点を越えました。堪らず泣きが入ります。


「だらしないわね、これでも手加減してるのに」


 涼しい顔で追い討ちをかける私。最低限の情けはかけてあるので、容赦少なめでお送りします。


「あれで?」


「どういう事よ?」


 即座に反応する友子と里美。良子は返事がありません。ただの屍のようです。


「だって、燕返しもぶっこ抜きも使ってないわよ?盲牌すらやってないのに」


 燕返しとぶっこ抜きは麻雀の反則、というかイカサマです。イカサマはバレなければ問題ないので、使おうと思えば使えます。


「何でそんなの知ってるのよ!遊は麻雀漫画読まないわよね?」


 友子は漫画で知っているようです。恐らく、派手なイカサマが飛び交う物や実際には出来ない技を繰り出すような漫画を読んでいるのでしょう。


「親から教わったわよ。『イカサマを防ぐには、それを使えるのが一番いい』と言われて」


 自分が使えれば、手口は分かるから防ぎやすいのです。なので、イカサマを防ぐ最良の手は自らもイカサマを習得する事なのです。


「遊の親って・・・」


「何でそんなの教えるのよ?」


 良子と里見は呆れています。友子はうちの教育方針を知っているので納得したみたい。


「将来付き合いで賭け事をするかもしれないから、強いに越したことはないって言われたわよ」


 付き合い対策用に教わったので、そんなに本格的にやったわけではありません。なので、本職の雀士の方々には通用しないでしょう。


「本当にイカサマしてないの?私達の当たり牌完全に止めてるのに」


 里美はイカサマを疑がっています。あれだけやって一度も振り込まなかったから無理ないのですが、例えやっていても見抜けなかった時点で責められる謂れはありません。


「自分で修行したのよ。配牌を牌を五秒で覚えるだけでも違うわよ」


「十三牌を五秒で?!」


「いや、それは無理でしょ?」


「遊ならば・・・」


 無理と決めつける里美と良子。友子は私なら何でもありと達観しています。訓練すれば誰でも出来るのですが。


「牌を裏返してかき混ぜて、適当に十三並べてくれる?」


 裏になった牌がひっくり返らないよう丁寧に撹拌され、その中から十三枚が並べられました。


「友子、カウントダウンお願い」


 友子が数を数え始めると同時に牌を起こし、記憶します。五秒でまた倒して後ろを向きました。


「では確認してね。三万、五万、五万、東、白・・・」


 私が読み上げた牌は全て当たり、私の言葉が嘘ではないと証明されて三人は呆然としていました。実は瞬間記憶能力という反則技を使えるので私には楽勝なのですが、そこまでは説明しません。


「遊、あんたいつから麻雀やってるのよ?かなり修行しないと、こんな事は出来ないわよね?」


「何時からかは覚えていないけれど、幼稚園の頃には打っていたわね」


 逸早く復帰した友子の質問に答えると、再び撃沈してしまいました。


「最初から、敵う相手ではなかったのね・・・」


 これに懲りたら、勝負を挑む相手の力量くらい読めるようになって下さいね。



作者の体験談です。


本当にこれが出来ると相手の手を読みやすくなります。


幼稚園児に麻雀仕込んで卓を囲む親・・・作者が異常なのは父親のせいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ