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第七十三話 身に付けたのは

 反射的に手で体を隠そうとしましたが、片手は友子に持たれたまま。逆の手で払う事は出来ましたが、眼鏡が外れる恐れがあるのでそれも出来ません。



「まぁ、ゆっくりと浸かりましょ?」


 観念して湯に浸かった私を、三人はじっと見つめため息をつきました。


「・・・何をしたらこうなるの?」


「遊、随分と成長してたのね」


「少しわけてもらう事は出来ないかしら?」


 わけてと言われてわけられる物ではありません。無言を通す私に、怪しい手つきの友子が近付きました。


「これは有罪ね。揉みしだきの刑に処す」


「ちょっ、悪ふざけもいい加減にして!」


 叫びも虚しく、3人がかりで揉みまくられました。その後、体を洗って上がった筈なのですが全然記憶がなく、気が付くと部屋のベッドの上に横たわっていました。


 現状把握の為に部屋を見渡すと、友子達が麻雀をやっていました。起き上がった私に友子が気付いたようです。


「あら、遊、やっと起きたの?」


 にっこりと微笑む友子。確か友子にタオルを剥ぎ取らて、三人がかりで揉まれた所までは覚えています。部屋に居るということは、体を拭かれて連れてきてくれたのでしょう。

 そこまで思い至り、髪と眼鏡が無事か不安になりました。顔を触り眼鏡が無事な事を確認し、頭を触り髪も下ろされていない事を確認しました。


「友子が『遊を着替えさせるのは私!』って言って独占するの。酷いと思わない?」


「私だって着せ替えさせたかったのに」


 口を尖らせて文句を言う里美と良子。とりあえず、正体がバレないようにはしてくれたようです。


「遊、起きたなら一緒にどう?」


「あなたね、その前に言う言葉があるんじゃないの?」


 普通ならば女子同士の悪ふざけで済みますが、私の場合知られたくない秘密がバレる危険があったのです。闘気・殺気・覇気・霊気・妖気など、諸々込めて睨み付けました。


「「「スイマセンでした!調子に乗りました!」」」


 綺麗にシンクロした土下座を見せる三人。一応反省はしたようなので、執行猶予は与えましょう。


「二度目は無いわよ?」


 無言でコクコクとうなずく三人。手加減はしたのですが、そんなに効いたのでしょうか。



「そろそろ夕食の時間ね。食べに行きましょう」


 時計を見ると夕食の時間になっていました。不覚にも少々長く気絶していたようです。


「大食堂でバイキングだったわね。沢山食べましょう」


 部屋に鍵をかけて大食堂に行きます。席を確保して、皆適当に食べ物を取ってきました。


「食べる量は普通ね」


「どうやってあの体型を・・・」


 なにやら呟く里美と良子。じっと見つめられると食べにくいのですが。


「遊はスポーツとかやってたから、鍛え方が違うわよ」


 何故か得意気な友子。二人は友子の話に興味を持ったのか、身を乗り出さんばかりに聞いてきました。


「スポーツって何を?」


「何をやったらああなれるの?」


「何をって、色々やってたわよ」


 少々ひきぎみになりながらも、律儀に答えるあたり友子は真面目です。しかし、色々という曖昧な答えでは二人は満足しませんでした。


「「具体的に教えて!」」


「遊、パス!」


 ハモりながら迫る二人にたまりかね、私に丸投げしてきました。そう言われても、熱中出来る事探しの為に結構な種類をやったので少々面倒なのですが。


「結構あるけど、全部言うの?」


「「勿論!」」


 即答され、面倒でも言わなければいけない雰囲気になっていました。諦めた私はため息をつくと、大きく息を吸い込み一息で言いきります。


「野球・庭球・籠球・憧球・水球・卓球・ボウリング・三角ベース・バレーボール・ポートボール・ゴルフ・ラクロス・クロケット・セパタクロー・アーティスティックビリヤード・ラグビー・アメリカンフットボール・アイスホッケー・ハイパーホッケー・カバディ・モダンダンス・バレエ・コサックダンス・ブレイクダンス・フラダンス・フラメンコ・アイスダンス・バンブーダンス・リンボーダンス・フィギュアスケート・スキー・クロスカントリー・スノーボード・オリエンテーリング・半額弁当争奪戦・・・」


 今までにやってきたスポーツはこれで全部だった筈です。似た物があったり、カテゴリーが変だという苦情は受け付けません。


「あら、また増えてない?」


「新しい挑戦はいつも続いているわ」


 食後のコーヒーを飲みながら答えます。何だか周囲が静かなような気がしますね。


「何よその量は!」


「一体、どんなペースでやったら出来るのよ?」


 呆れた顔の里美と良子。掛け持ち出来ますし、体力やバランス感覚等の基礎を鍛えれば応用もきくので意外とやれるものです。


「まだ武術系と文化系もあるわよ?」


「「「「またの機会にお願いします!」」」」


 里美と良子だけではなく、周囲からも返答が聞こえたのは何故でしょう。


「あれを一息で言い切るとは流石ね。食事も終わったし、部屋に戻りましょう」


「そうね。二人とも、何してるの?」


 動きが遅い二人を促し部屋に帰りました。極める訳ではないですし、十年あれば誰でもあれくらい習えますよね。

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