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第七十話 私は鉄ではありません

東京・埼玉ネタとなりますが御容赦を。

 そして宿泊学習当日の朝。友子と一緒に電車で池袋駅へ向かいます。


「何でこんな遠回りするのかしらね」


「多分、乗り換えと車両の問題じゃないの?」


 学校から秩父に向かうには池袋から西武秩父線で向かうのと、熊谷から秩父鉄道に乗るという手段があります。

 西武秩父線を使う場合、一度南下して東京都に入り、そこから北上して再度埼玉に入るため結構な回り道になります。

 一方、秩父鉄道の場合はJRで北上してから秩父鉄道で西進するので距離的には短くて済みます。


 問題は乗換駅で、大ターミナルの池袋ならば問題はありませんが、ローカル私鉄である秩父鉄道の駅はホームが狭いのです。

 一年生全員がホームに入れなくなる可能性もあり、入れたとしても他の利用客の方々に迷惑をかける事になるでしょう。


 そして、西武秩父線には赤い矢の特急が走っていますが、秩父鉄道には普通列車しかありません。SLの特急はありますが、期間限定の観光列車なので平日は走っていないのです。


「何でそんなに詳しいのよ?」


「やりたいこと探しの一環で、鉄道関連も詳しくなったのよ」


 新幹線と在来線が並走している場合の運賃計算やその特例なんてものまで仕込まれましたが、一般の駅員さんも知らないような知識を何処で使えと言うのでしょうか。


「遊、荷物多くない?」


 私にしては多い荷物を指差す友子。着替えなどに頓着しない私は、中学時代の修学旅行でも大した荷物は持っていきませんでした。


「終わったら直に仕事に行くから、ユウリ用の服も入ってるのよ。事務所で着替えると遅刻しそうだから」


 理由を話すと、友子の目がキラリと光ったような気がしました。次に言われる事の予測はついています。



「遊、物は相談なんだけど・・・」


「着ないわよ?」


 頼みを言い切られる前に断ります。持ってきた服で脳力試験に出たこともあるので、遊の時には着れない服なのです。


「なら、二人きりの時に・・・」


「部屋が違うでしょ?」


 その後も何だかんだと着せようとする友子を退けているうちに、無事に池袋に到着しました。ラノベでは痴漢やスリにあったりして騒動となるのでしょうけど、現実にはそんな犯罪行為に早々あったりはしません。


「ええっと、いけふくろう、いけふくろう・・・」


 キョロキョロしながら何事かを呟く友子。駅名を連呼しているのかと思いましたが、濁点が抜けているし最後の「う」が余計です。


「友子、『いけふくろう』って何よ?」


「何って、集合場所よ。ふくろうの石像があるの」


 池袋初体験の私は、そんな物があるとは知りませんでした。友子について歩き、いけふくろうに到着しました。しかし、うちの生徒の姿が見えませんでした。


「お、来たな。西武の池袋駅に行ってくれ。行って駅員さんにこの切符を見せればいいから」


 いけふくろうの像の陰に、うちの先生が待機していました。先生は二枚の切符を手渡します。私たちはそれを受け取り、西武の駅に向かい歩きだしました。


「面倒な事をさせるわね」


「でも、あそこじゃ集合出来ないわ」


 いけふくろうは、教室より少し狭い位の通路の真ん中にポツンとふくろうの石像があるだけの場所でした。そこに一年生全員が集まれば、他の通行人の移動を阻害してしまいます。


「これなら最初から西武の駅に集合にすれば良いのに」


 ブツブツと文句を言う友子。いけふくろうと西武の駅は結構離れているようで、文句を言う気持もわかります。


「どこか抜けてるわね」


「帰ったら校長に文句言ってやるわ」


 愚痴を言い合いながら歩く事数分、目的の西武池袋駅に到着しました。

 某カメラ屋さんの宣伝で知ってはいましたが、本当に東に西武の駅があるのですね。下り普通列車の東京行きと同じレベルで理不尽です。


 謎は一旦置いておいて、改札の駅員さんに切符を見せます。駅員さんは切符を見ると、並んだホームの一つに停車している列車を指差しました。


「貸し切り列車の生徒さんですね。そこに停車している列車です」


「残念、C62ー50じゃないのね」


「SLは秩父鉄道よ」


 アニメで48にしたのは原作者の拘りを無視した行為だと憤慨する友子を宥めながら先生を探します。

 現地に到着する前から疲れているのですが、この小旅行は私の精神力を鍛えるのが目的なのでしょうか。

東京に近付く列車が上りなので、本来下りの東京行きは存在しません。

しかし、武蔵野線だけは千葉方面に向かう下り路線が京葉線に接続し東京まで直通となった為下り列車の東京行きという矛盾した存在が成立し例外となりました。

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