第六十四話 コスプレ撮影?
原作者様が小説書いている事を身内に話していなかった事など、軽い暴露話をしているうちに今日の収録時間も終わりを迎えました。
「さて、今週も終わりの時間となりました」
「アニメに関する質問とか、どんどん送ってね。ユウリちゃんのスリーサイズは私も知りたいから、是非とも質問してね!」
蓮田さんがとんでもない発言をかましてくれました。そんな恥ずかしい質問、断固として回答を拒否します!
「アニメに関する質問以外はダメですよ」
「では、また来週!」
蓮田さんがしめて収録は終わりました。まさか、本当にスリーサイズを聞いてきたりしないわよね?
「蓮田さん、何を考えてるんですか!」
「え?ユウリちゃんのスリーサイズの事」
最近、蓮田さんが変態じみてきているような気がします。治す方法はないでしょうか。
「蓮田さん、女性ですよね?スケベ親父みたいな発言しないで下さい!」
「あら、可愛い女の子の事を知りたいと思うのは男だけじゃないわよ?」
うんうんと頷く女性スタッフと桶川さん。そんな事に同意しないでほしいのですが。
「ユウリちゃんみたいな可愛い子は、男女問わず好きになるものよ。諦めなさい」
「目立つの、好きではないのですが・・・」
有名になりたい、目立ちたいという人もいるのでしょうけれど、私は目立ちたくないのです。両親と妹が目立った結果、生活を脅かされるような事態になったのを知っているからです。
「ねえ、ユウリちゃん。人には不可能という事があるのよ」
「ユウリちゃんが目立たないなんて、富士山の知名度が海外でゼロになるより可能性が低いわ」
桶川さんと蓮田さんが呆れたように追撃してきました。でも、普段の私は目立つ事なく生活してますよ。
学校では校長先生と教頭先生のせいで目立ってますが、あれは先生と友子のせいで私の責任ではありません。
「桶川さん、今日はまだ仕事が残ってませんでしたか?」
のんびりと話していますが、この後雑誌の写真撮影があったはずです。まだ遅刻はしないと思いますが悠長にしている余裕はないでしょう。
「そうだったわね、忘れてたわ」
桶川さん、有能なのにどこか抜けている所があります。帰り支度を済ませ、スタッフさん達に挨拶します。
「それではお先に失礼します」
「あ、桶川さん、私もついていくわ」
スタジオを出ようとした私の腕に抱き付き、にっこりと笑う蓮田さん。次の仕事は悪なり関連の仕事ではないし、違う事務所なのに同行しても良いのでしょうか?
「それは構わないけど、スケジュール大丈夫なの?」
「この後は仕事無いんですよ。ユウリちゃんの撮影見たいし、良いでしょ?」
良いでしょ?と確認しつつも、付いてくる気満々の様子です。こうなると、何を言っても無駄ですね。
「私は構わないけど、ユウリちゃんは?」
「私も別に構いませんよ」
同行されて不利益がある訳でもないし、先輩声優の頼みを断れる訳がありません。断る理由がないのですから。
「では決まりね。早く行きましょう!」
「やけに嬉しそうですね」
私の撮影など見ても、楽しい事はないと思います。一体何が楽しみなのでしょう。
「アニメとラジオでは一緒だけど、他の仕事一緒にしたこと無かったから。一度見たかったのよ」
私の腕に抱きついたまま楽しそうに話す蓮田さんを連れて、撮影するスタジオに車で移動しました。
スタジオ入りした私は、女性スタッフの方に案内されて更衣室に入りました。案内してくれたスタッフさんが用意されていた衣装を取り出します。
「それを着るのですか?」
用意されていたのは、空色を主体とした綺麗なドレスでした。胸部のブレザー状の所とスカートに配置されたリボンは濃い青で、白いシャツのような服の上に着るブレザーの前は編み上げになって広く開いています。
布面積が少ないという訳では無いのですが、両肩が露出していて見るのは良くても着るのは抵抗があります。
「上から、ユウリさんにはこれしかないと言われていますので。着付けをお手伝いしますね」
手際よく着ていた服を脱がされ、コルセットを締め上げられます。強まる下腹部への圧迫に耐えながら、何故このドレスなのかを考えました。
「ああ、原作の表紙絵・・・」
このドレス、どこかで見覚えがあると思い記憶を手繰った結果、悪なりの原作小説の扉絵で主人公が着ていた服でした。
今日のお仕事は普通の雑誌の撮影で、アニメとは関係ない筈なのです。それでも原作小説に絡めた衣装ということは、番宣も兼ねてくれたという事でしょうか。
「はい、出来ました。ユウリさん、立ち姿も綺麗ですし本物の公爵令嬢と言われても納得しますよ。長い黒髪が映えて、とても素敵です!」
誉めてくれるのは嬉しいのですが、一つの不安が心を過りました。今日は蓮田さんが来ているのです。蓮田さん、暴走しなければ良いのですが。




