第四百二十一話 校長先生の演説
校長先生が登壇しました。生徒も先生も注目しています。
特に先生方は、何も聞かされずにいきなりの全校集会を開かれたのでさぞ驚いたでしょう。
「皆さんおはようございます。今日はいきなりの全校集会で驚かれたでしょう。まずはお詫びをいたします」
いきなり謝罪された生徒や先生は面食らっています。それに構わず校長先生は話を続けました。
「この全校集会は、私の個人的な思いで開催しました。後程責められる事は覚悟の上です。ですが、今は私の話を聞いていただきたい」
真摯な校長先生に圧せられて、誰も言葉一つ発しません。とても勤務時間内に同人誌を作ってる人と同一人物とは思えない、堂々とした態度でした。
「一昨年の3月、入学を内定した女生徒がアルバイトの申請を行いに来ました。本来ならば入試志願時に出さなくてはならない物を、内定してから申請してきたのです」
3月になってからアルバイトの申請で一昨年と言われれば、私の事しか無いと思います。しかし、そんな事は分からない生徒や先生達は訳が分からないまま話に耳を傾けます。
「その女生徒は、内定をしてから働く事になったというのです。彼女は成績は申し分なく、一つの点を除いて問題はありませんでした。その問題とは、職種です」
そうよね。芸能界に入るのならば、芸能学科のある高校に入るのが普通なのです。一介の県立高校に進まずに私立に行くのが最善です。
「彼女の仕事先は芸能界だったのです。この学校には芸能科はありません。普通ならば芸能学校に転校を勧めるべきでしょう。しかし私は受け入れました。可能性を潰すべきではないと思ったからです。決して、決してサインが欲しかったからではないですよ!」
力を入れて力説する校長先生。でも、少しも説得力はありませんから!
「その後彼女は正体を隠していた事もあり、仕事面では騒動もなく学校生活を送りました。もっとも、仕事に関わらないトラブルは引き寄せていましたが」
生徒達や先生達からどっと笑いが起こりました。私だって好きでトラブルわ引き寄せたわけではないのですよ!
「そして彼女は先日、名誉毀損で訴えられ裁判の中で素性を明かしました。それにより本校にも取材陣が押し寄せ、生徒の皆さんに不便をかけました。それでも皆さんは彼女を受け入れ、協力してくれました。本当にありがとう」
頭を下げた校長先生に、生徒達や先生達から「あたりまえの事だよ!」や「気にしないで!」等の声が飛びました。
「ありがとう。今日は皆さんに感謝の気持ちを込めてイベントを用意しました。お願いします」




