第四百二十話 いきなり全校集会
校内に入るといつもより多くの視線が集まりました。既に私の存在には慣れた筈なのですが、慣れる前と同じレベルの視線を感じます。
「今日の視線は5割り増しねぇ」
「それはそうよ。遊がユウリで登校なんて無かったわよね」
そうでした。先程友子のイタズラの為に髪をほどいて眼鏡を外したのでした。
「おはよう!」
「おはよう友子、遊。あら、珍しいわね」
「友子がタクシーの運転手さんをからかったのよ」
教室に入るなり寄ってきた里美に答えます。私の登校を知ったクラスメートから注目を集めてしまいました。
「正体公表したのだし、たまにはその姿で登校しない?」
「そうねぇ・・・」
私を見つめる目が、期待をする目になっています。実際、全校生徒に正体は知られているのでこの姿でもあまり不都合はありません。
「写メを撮らない、強要しないという条件を呑めるならば」
「「「「「呑みます、守ります、守らせます!」」」」」
即座に声を揃えて返答が来ました。そこまでしてユウリで登校させたいのでしょうか。
「何だか騒がしいな、HR始めるぞ」
先生が入ってきてHRが開始されます。しかし、チラチラと振り返って私を見るクラスメートが多数居るので先生からの注意が入ります。
「落ち着きないな。・・・そうか、北本が原因か」
先生、私はいつものように大人しく座っているだけです。ただ、髪型が違って眼鏡を外しているだけなのです。特に注意もされずHRが再開すると思いきや、校内放送で再び中断されました。
「お知らせします。本日、緊急全校集会を行います。HR終了後、体育館に集合してください」
「ああ?全校集会なんて聞いてないぞ。まあいい。皆、聞いての通りだ。体育館に行くように」
急いでHRを終了させ、体育館に移動します。私は友子と共に皆から離れ、聞こえないようにヒソヒソと打ち合わせを始めます。
「これって、朝言ってた奴よね」
「そうよ。歌の音源は確保済みだから、歌う順番はこれね。トークの内容は任せるわ」
歌う曲のリストのメモをいただきました。トークもあるならば早めに伝えて欲しかったです。トークを即興で考えるのも大変なのですよ。
「内容いきなり考えるの?これからは早めに言ってくれないかな?」
「一年で経験値積んだから大丈夫でよね。校長先生の話の後に歌ってもらうから、話す内容はそれを聞いてから決めればいいわ」
何やら隠し事がありそうですが、聞いた所で話してくれるとは思えません。それにすぐ校長先生の話を聞くのだから、焦る必要も無いでしょう。
友子と共に、体育館のステージの端に陣取ります。初めは制服のままで、途中から衣装を変える段取りのなっていました。衣装は友子の鞄に入っているそうです。本当に便利よね、その鞄。




