第四百十ハ話 事後の影響
午前中の授業は恙無く終わり、昼休みになりました。クラスの皆は話したいようですが、遠慮して何も聞いて来ないようです。
「皆、聞きたい事があるのでしょう?」
「それは、人気声優の正体が遊だと分かった以上色々と聞きたい事はあるわよ」
クラスメートを代表して良子が答え、皆も頷いて同意しました。
「心配かけてしまったし、今日くらいはいいわよ。でも忘れないでね、今日だけよ」
裁判で心配をかけてしまった手前、少しくらいサービスしてもと思ったのですが。すぐに後悔しました。何故ならば授業に来た先生まで加わっての質問攻めになるとは思わなかったからです。
「遊、お疲れ様。おかげでクラスの皆の私への風当たりも和らぐわ」
「親友様のお役にたてて良かったわ」
帰りのタクシーの中、友子が労ってくれました。タクシーで下校とは贅沢と言われそうですが、下手に電車で帰ると囲まれる恐れがあるのでタクシーを使います。両親公認、と言うよりお母さんの指示なので問題ありません。
最寄り駅近くで降りて友子と別れます。学校は友子のお陰で問題無く過ごせそうですが、明日からの仕事はどうでしょうか。脳力試験は問題ない・・・と思いたい。
翌日、東京駅で報道陣を撒いてテレビ局に入ります。普通は入れない地下通路を通って撒きました。昔避難や郵便物の搬送用に作られた地下通路で、現在では車椅子のお客様を通す為に使用されているそうです。
「ユウリちゃん、大変だったね」
「お騒がせしました。ご迷惑をおかけしましてすいません」
番組の共演者の人やスタッフさんにも取材が来たそうです。皆越谷ミュージックが悪いとか、仕事が増えたから気にしないでと言ってくれました。
「今週も始まりましたクイズ脳力試験。司会は私、朝霞と」
「先週ずる休みしましたユウリでお届けします」
先週は裁判の絡みでお休みしました。朝霞さんは全て知っていたので応援の電話までくれました。
「ユウリちゃんは先週大変だったからね。しかし、ユウリちゃんがユウリちゃんに悪評伝えて名誉棄損するとか・・・」
「普段の姿を知られてませんでしたからね。今週から休まずに頑張ります、宜しくお願いしますね」
裁判の件を軽く流してクイズを開始します。いつものように出題して、ボケて、突っ込んで。収録を楽しむ事が出来ました。
「それでは来週も、脳力試験でお会いしましょう!」
見学者の人の拍手で収録を無事に終了です。仕事の方も以前と同じ日常に戻れそうで一安心です。




