第四百十五話 家族で水入らず
「ちなみに、騒音と器物破損の物的証拠は藁人形と五寸釘だそうよ」
由紀ちゃん、それは態々説明をする必要がある事なのでしょうか・・・藁人形と五寸釘を使った騒音と器物破損の罪で思い当たる行為があります。
「誰が対象だったの?」
「桶川社長みたいよ。いくら遊を欲しいからってねぇ」
察した方もいるとは思いますが説明を。
日本で呪いの藁人形を神社の神木に打って呪った場合、殺人未遂にはなりません。前述した騒音による迷惑防止条例違反と器物破損になります。
呪いや超能力は存在しないため、例え成功しても殺人は不成立となります。なのでノートで人を殺しまくって神を目指した刑事の息子は、日本の法律では裁けないのです。逆にテレビ局からテープを強奪したお父さんは強盗犯となり、立派な犯罪者です。
閑話休題。
「とりあえずマスコミが落ち着くまでここに泊まるわよ」
「ごめんなさい、迷惑かけて」
暫くの間皆に不便をかけてしまいます。本当に越谷ミュージック許せません。
「大丈夫よ。私とお父さんの仕事に支障はないし、由紀も丁度テニスの遠征が入るから日本から離れるしね」
「お姉ちゃんと離れたくないんだけどね。あ、お姉ちゃんも一緒に行く?」
「仕事があるから無理よ、頑張って行ってきてね」
由紀は既に海外の大会にも出ています。今回は大会で知り合った他のプレイヤーの人と行くそうです。
「まあ、2~3日はゆっくりしよう。遊も大変だったんだからね」
「やっとユウリさん状態のお姉ちゃんと堂々いちゃつけるようになったのよ、堪能するわよ!」
桶川さんの計らいで、3日間は仕事がないようになっていました。だけど仕事に行く方が楽かもしれません
「お父さん、締め切り近い事を忘れたかしら?」
「え?いや、折角遊とゆっくり出来るんだし・・・」
お父さん、顔全体から冷や汗が滝のように流れてます。この騒ぎで執筆のスケジュールも大幅に狂っているようです。
「心配いらないわ。お父さんの分まで私とお母さんがお姉ちゃんを堪能するから!」
「そうね。まずはゴスロリに、オプションでキツネ耳と尻尾で・・・」
ホテルの部屋には深谷服飾店の名が入った段ボールが山積みになっていました。この状況を打開する為にアイコンタクトでお父さんに訴えます。
「いや、しかしだなぁ」
「締め切り守らないと、冗談社の担当さんが泣くわよ?」
ダメでした。お父さんはお母さんの一言で轟沈し、トボトボと別の部屋へと移動していきました。




