第四百十四話 罪科の数
呆気にとられる報道陣を完全に振り切る事に成功した私たちは、のんびりと利根川を下ります。
「まさか水陸両用車まで準備するとは思わなかったわ」
「報道陣のあの悔しそうな顔を見るためなら、これくらいどうという事はないわ」
桶川さん、マスコミとどんな確執があるのですか。一応私達はそのマスコミを相手に商売をしているのですが。
「あれ、桶川さん。確か水陸両用車を水上で操縦するには、船舶免許が必要だったはずなのでは?」
「その辺に抜かりはないわ。必要な船舶免許は既に取得済みよ!」
ああ、言われてみれば以前に船舶免許取りに行ってると言っていました。あの頃からこの状況を想定していたのでしょうか。
「そこまで手間隙かけますか・・・」
「役にたってるから良いのよ、結果オーライということで。そろそろ上陸するわよ」
上陸出来そうな場所を見繕い、河原に上がります。近くで釣りをしていたお爺さんが驚いていましたが、そこは勘弁してください。
その後は特にトラブルもなく、家族が待つホテルに無事到着しました。家にいたらマスコミが増えて外出も出来なくなるのはわかりきっていたので、裁判が始まる前に脱出してもらいホテルに来てもらっていました。
ほとぼりが冷めるまで一家揃ってホテル暮らしになりますが、マスコミ二囲まれて身動きが取れなくなるよりはとホテル暮らしを選択しました。
「遊、よくやったわ!」
「一人で頑張ったな」
「お姉ちゃん、ご苦労様!」
ホテルのドアを開けるなり3人がかりでのお出迎えを受けました。桶川さんは家族水入らずの時間を邪魔したくないと帰りました。
「お父さんとお母さんがくれた資料でどうにかなったわ。あの弁護士、これから仕事出来るのかしら?」
「まずは弁護士法違反でお縄だな」
矢張り岩槻弁護士は逮捕されるようです。行なった内容を考えれば同情は出来ません。
「贈収賄は自白をとってからね。あの資料は非合法に手に入れた代物だから、証拠能力はないもの」
別件で身柄を確保しておいて再逮捕。刑事ものの王道ですね。警察の皆さんにはお手数をおかけします。
「そこから贈賄で越谷ミュージックだな。余罪は山ほど出るぞ」
「そこがちょっと計算外なのよねぇ」
お母さんが浮かない顔をしています。越谷ミュージックを叩けるのに何故でしょうか?
「罪科を水増ししてあげようと思っていたのに、ありすぎて増やす余裕が無かったのよ」
「贈賄、脅迫は言うに及ばず、公文書偽造、有印私文書偽造、麻薬取り締まり法違反、道路交通法違反、横領罪に器物破損、騒音による軽犯罪まであったよ」
越谷ミュージック、よく今まで捜査の手が伸びなかったものです。恐らくそちらの方面に鼻薬を効かせていたのでしょう。




