第三百九十三話 戦闘準備
今回の件、逆に私が嘘をついていないと言い張っても口先だけなので物証はありません。ユウリがそのような事実は無いと証言しても、口裏合わせていると言われたら否定する証拠はないのです。
「一般人に要求する慰謝料とはかけ離れすぎています。ご両親の事も調べているのでしょう」
高校生の北本遊には到底払えない金額ですが、人気作家の北本洋二と人気イラストレーターの北本良子なら払えると目論んだようです。
「それが狙いかなぁ」
「あわよくばユウリも移籍出来ればってところね」
刑事告訴はおまけで、本命は賠償金をふんだくる民事訴訟なのでしょう。相手の思惑を推測した私達は個別に行動することにしました。
両親は知り合いに会いに外出しました。どこで誰に会うのかは聞きませんでした。由紀は友子の家へと出掛けていきます。電話で簡単に事情を説明し、一緒に対策をすると言っていました。
私は土呂さんを連れて桶川さんのもとに報告に行きます。所属するタレントが提訴されたのですから、経緯と背景を報告しなくてはいけません。
社会人 忘れちゃダメよ 報連相
一句読んだところで桶川プロに到着しました。私は非常勤スタッフ証を、土呂さんは警察手帳を提示して入りました。
「遊ちゃん、訴えられたってどういう事よ!」
「とんだ茶番よ、いい迷惑だわ」
土呂さんに訴状を出してもらい桶川さんに見せます。それを読んだ桶川さんの顔が怒りで歪みました。
「ユウリが絡んでるとはいえ、ユウリと遊が別人ってなっている以上桶川プロとしては介入出来ないわね」
「心配ないです、両親が動いてますから。自重なんてしないと張り切ってますからねぇ」
前には赤い広場の人とか、白い家の人とか出てきましたから。バレンタインチョコで空軍が動く人達なので、越谷ミュージックの心配をした方が良いかもしれません。
「越谷ミュージック、欠片でも残るのかしら・・・」
「残ると、いいですねぇ」
桶川さんはバレンタインの件と花火大会の件で両親の影響力を察してます。土呂さんは知りませんから、キョトンとしてます。
「そういう理由なので公判の日はお仕事できません。スケジュール調整お願いします」
「わかったわ、そこはちゃんとやっておくから」
これでお仕事方面の問題はクリアされました。公判の日まではいつもの通りに生活できるでしょう。
なんて考えは大甘でした。5日後友子と登校していると、見ず知らずの先輩に声をかけられました。




