第三百八十七話 顛末と陰謀
「ラッセル車を持ってる自治体から借りるなり、トラックを改造して作るなりして対応すれば良いのに」
無ければ作る、もしくは借りる。無いと嘆くだけよりも建設的だと思います。それを可能とする機材が無い訳では無いのですなら。
「そ、その手があったわね!」
「さすがお姉ちゃん。内政チートもお手のものね!」
誉めてくれるのは嬉しいのですが、そんなに大袈裟な事ではありません。お母さんはどこかに電話しているようですが、心の平穏の為に見なかった事にしました。
「夕方まで暇だし、何か作ろうかしら」
「お姉ちゃんタフね、私はかまくらでアニメ見てるわ」
テニスやっている由紀の方が体力はあると思います。何をするかを強制するつもりはないのでそのまま見送りました。そして、新たに我が家の庭には3分間だけ戦える宇宙人の雪像が加わりました。
翌日から豪雪地帯から応援に来たラッセル車が走り回り、主要国道は車が通行出来るようになりました。次いで県道も除雪され、4日後には関東もいつもの生活に戻りラッセル車は戻っていきます。
「豪雪地帯の人達には、これが毎年の出来事なのね・・・」
今年のクリスマスは、雪の恐ろしさと豪雪地帯の人々の強さを知る事が出来ました。テレビで雪国を見る度に綺麗と思っていましたが、これからは少し違う視点で見れそうです。
その頃、東京都内のある某大手芸能事務所の社長室では。
「では、進捗を聞こうかしら?」
「はっ、ユウリに関する情報は未だ掴めていません。しかし面白そうな人物を発見いたしました。こちらがその報告となります」
部下か提出する書面を一瞥する女社長。望んでいた報告ではなかった事が不愉快なようで、それが表情に出ているのを隠そうともしない。
「彼女から揺さぶりをかける事で情報を引き出す算段です。そして、実利の方も充分に望めるかと・・・」
「成る程ね。未成年だけど親から引っ張る事は充分に可能という訳ね。面白そうだわ、私が直々に出向く事としましょうか」
女社長は報告書に添付された写真を一瞥し、部下に退出するよう手を払う。部下は一礼すると何も言わずに社長室から退出して行った。
「もし引き抜けられずとも、接点くらいは出来るでしょう。チクチク責めて親をこちらに取り込むのも有りかしらね」
己の利益しか考えない女社長にターゲットとされた未成年とは誰なのか。現段階でそれを知るのは女社長と直近の部下のみであった。




