第三百八十三話 遅めの昼食
「由紀、そんなペースじゃバテるわよ?」
「テニスで鍛えたのは伊達じゃないのよ!」
自信満々に答えた由紀を横目で見ながら、ひたすら除雪すること20分。一転して弱音を吐く由紀の姿がありました。
「も、もう動けない・・・」
「だから言ったのよ。早くお風呂に入りなさい」
バテて座り込んだ由紀を尻目に雪掻きを続行します。そんな私を由紀は驚きの目で見つめていました。
「お姉ちゃん、タフねぇ」
「こういうのは一定のペースを守るのがコツなのよ。汗かいているのだからお風呂入らないと風邪引くわよ」
汗で濡れた体が冷やされれば、すぐに風邪を引いてしまいます。汗を流して体を温めなくてはなりません。
「くっ、私はここまでね。後は頼んだわ。がくっ」
「はいはい、後は引き受けたわ」
シャベルを引き摺り退場する由紀。その30分後、玄関まで雪掻きを終わらせた私は市道までも雪掻きを終わらせました。我ながら良い仕事をしたと思います。
「さて、終わったのはいいけど、この雪の山をどうしようかしらねぇ」
目の前にはこんもり積もった雪の山がその存在を主張していました。シャベルで固めたら少しは減るでしょうか。
「どうせ固めるなら、少し遊ほうかしら」
雪を固めて圧縮します。更に雪を足して圧縮し、追加で雪を足して圧縮していきます。
ここは細くして、ここにもう少しくっつけて・・・会心の作が完成しました。
高さ3メートルのロザリンドちゃんの雪像が出来ました。やりきった達成感に包まれながら、かいた汗を流すためお風呂に入ります。ゆっくりと髪も洗って出ると、もうお昼の時間を過ぎていました。
「遊、遅くなったけど今日のお昼は外で食べるわよ」
髪を乾かしていると、お母さんから謎のお言葉を賜りました。この積もった雪の中を外出するのでしょうか。手招きされてリビングに行くと、雪像の脇に立派なかまくらが出来ていました。
「お仕事一段落したから、お父さんと作っちゃった。懐かしかったわぁ、ベルホヤンクスではよく作ったわ」
お母さん、ロシアの極寒の地で何をやっていたのですか?と聞きたい所でしたが、聞くと赤い広場のKでGでBな人とか出てきそうなので聞きません。
「お母さん、準備出来たよ」
「ラム肉、そろそろ焼き始めるぞ」
由紀とお父さんは既にかまくらに入ってました。中に入ると火鉢に丸い鉄板が乗っていて、羊のお肉がジュウジュウと音をたてて焼けてます。
「雪像にかまくらって、北海道みたいね」
「ジンギスカンだから、小岩井農場じゃない?」
岩手県の小岩井農場で行われている雪まつりでも雪像を作りかまくらの中でジンギスカンを楽しめます。札幌ほど有名ではないのであまり知られていないと思いますが。
かまくらの中で食べるジンギスカンは美味しゅうございました。環境は味にも影響すると思います。




