第三百七十八話 冬の風物詩
時は流れ、もうすぐクリスマスがやってきます。悪なりの収録が終了し、ラジオの仕事も終わった私はのんびりと仕事をしています。
オラクルワールドの収録も終わり、レギュラーの仕事は脳力試験だけとなっています。単発でテレビの仕事や取材を受ける毎日が続いていました。
声優なのだから声の仕事をしろという突っ込みが聞こえてきそうですが、新しいアニメなんてそうポンポン作られる物では無いのです。
声優のお仕事として洋画の吹き替えは時折入ります。しかし、その他の仕事の方が多いというのが不本意ですが現状です。
「遊、今年のクリスマスはゆっくりできるのか?」
「今のところ仕事は入れてないわ」
今日は日曜日で仕事も入っていません。寒いのでおこたに入ってのんびりしています。向かいにはお父さん。右手には由紀がみかんを食べながらリラックス。
もちろん、こたつの上には山盛りのみかんと丸まった猫が乗っています。あれ、うちで猫を飼っていた覚えがありません。それに何だか大きいような気がします。
「遊、私にもみかん頂戴」
「あ、お母さんもみかん食べる?」
私はお母さんに渡すみかんを取ろうと手を伸ばしました。正面にお父さんが居て、右手に由紀が座っています。お母さんは何処にも居ません。となると、正解はこたつの上という事になります。
「お母さん、何をやってるの?」
「こたつには猫とみかんがお約束でしょ?でも、うちには猫はいないから」
それで猫の着ぐるみ着てこたつで丸くなっていたというわけですか。呆れはするものの、特に害があるわけではないのでスルーする事にしましょう。
「はいはい、わかりました。はい、みかんね」
これ以上突っ込んでも無駄だと割りきりみかんを渡しました。しかしお母さんは受け取りません。
「遊、お願いね」
そう言って招き猫よろしく肉球の手を上下させるお母さん。それを見てお母さんが言いたい事を悟りました。
「あー、手が肉球だから剥けないのね」
ならば着ぐるみを脱げば良いと思うのですが、それは言わずに剥いて渡します。
「いつも思うけどお姉ちゃん、マメよね。綺麗に筋も剥いてるし」
「筋を食べても無害だけど、剥いた方が美味しいからよ」
一手間掛けて味が上がるなら、かける方が良いと思います。人それぞれなので押し付けはしませんが。
『クリスマスに向けて冷え込みが厳しくなりそうです。低気圧も接近し、今年はホワイトクリスマスとなりそうです』
付けたままになっていたテレビの天気予報で、キャスターさんが原稿を読みます。皆がテレビに注目しました。
「今年は雪になるか」
「仕事も入ってないし、のんびり出来るわ」
去年はサプライズイベントを孤児院でやりましたが、今年は行う予定はありません。完全にノンビリと過ごそうと思います。




