第三百七十六話 仕事の現状
「では、悪なりの完成を祝いまして・・・」
「「「「カンパーイ!」」」」
監督さんの音頭で打ち上げが始まりました。皆さんグラスを片手にこれまでの思い出を語って盛り上がってまいす。
「ユウリちゃん、お疲れ様!」
「あ、監督さん、お疲れ様です」
「ユウリちゃん大変だったよね。収録当日にロザリンド役に抜擢で、しかもこれがデビューだったのだから」
「あはははは、いきなりでビックリしましたよ・・・」
あの日あの時までは、ロザリンド役どころか声優になるなんて考えもしていませんでした。人の運命なんて、本当にわからない物です。
「でも、おかげでいい作品が出来た。もうロザリンド役はユウリちゃん以外は考えられないね」
「ありがとうございます」
「それじゃ、次回作もお願いな!」
笑いながら上機嫌で去っていく監督さんに頭を下げます。続編だからと同じ声優が起用されるとは限らないので、社交辞令として受け取っておきます。
「ロザリンド、お疲れ様」
「ディルク様もお疲れ様でした」
間を開けずに朝霞さんが訪れました。アニメの終了でイベント等のお仕事も終わりそうですし、役名で呼び合うのもこれが最後かもしれません。
「監督も気が早いな。次回作なんてまだ確定してないのに」
「そうなのですか。でも、確定してほしいですね。また皆とお仕事したいです」
私が声優という仕事がこんなに好きになったのは、一緒に仕事をした皆さんのおかげだと思います。出来ればまたこのメンバーでお仕事をしたいものです。
「こら、2人で何を話してるの?」
「ちょっ、蓮田さん!」
後ろから抱きつくように蓮田さんが登場しました。ここぞとばかりに頬を擦り付けてきます。
「続編早くアニメ化すれば良いねという話さ」
「続編は私の出番殆ど無いのよねぇ」
ロザリンドちゃんが結婚して公爵令嬢から次期侯爵夫人へとクラスチェンジするのでタイトルも微妙に変わるのですが、それまでに登場してキャラクターの出演頻度も変わります。
「他の作品で共演出来れば良いのだけど、ユウリちゃんのレギュラー作品は・・・」
「クイズ脳力試験とオラクルワールドだけですね」
オラクルワールドも一期目の終了が近く、二期目の予定も無いのでレギュラーは脳力試験のみになりそうです。
「声優なのに、レギュラーがクイズだけになりそうですね」
「ラノベ業界はまだ活発だし、新しいアニメも期待出来るわよ!」
「そうだよね。北本先生とか大御所も健在だし」
最近業績不振と言われるテレビ業界ですが、アニメはまだ気炎を吐いている状態です。帰ったらお父さんに発破かけて頑張ってもらいましょう。




