第三百六十八話 昼御飯
「残念ながら任務は失敗した。当機は撃墜されてしまった」
スクリーンに「GAME OVER」の文字が浮かびます。敵要塞の中心部を破壊する前にこちらが撃墜されてしまいました。
「皆さん、残念でした。今回のミッションの殊勲者を発表します」
女性の声でアナウンスが流れると、私と由紀、隣の男性の前に紋章が浮かびました。私が金、由紀が銀、男性が銅の紋章です。
「お姉ちゃんに負けたわ。あの紋章、得点1位から3位のプレイヤーに表示されるの」
「俺ら3人がバラけて配置されてたらクリア出来てたかもな。まあ、言っても仕方ないか。じゃあな」
男性は軽く手を振って出口へと歩いていきました。他の人達も次々と出て行きます。
「1位取ったのは嬉しいけど、クリア出来なかったのが残念ね」
「運もあるのよ。上手い人が多ければかなり余裕でクリア出来るし、そうでなくとも上手い人がバラけていれば攻略出来るらしいわ」
これだけ大人数のアトラクションだと、そういう運も絡んでくるようです。こればかりはクリア出来るまで再挑戦するしかないでしょう。
「まだ時間はあるし、また再挑戦しましょう。その前にお昼食べましょうか」
時間も昼時になり、お腹が空いてきました。アトラクションを出て食べ物を売っているスペースを見て回ります。幾つかの屋台が出店していました。
「軽いものばかりで、お腹にたまるような物がないわねぇ」
「あ、あれは?」
由紀が指差したのはお好み焼きの屋台でした。返事をする前に由紀が屋台に走りましたが、特に依存はないので私も屋台に向かいます。
「おじさん、お好み焼き2枚ね」
「あいよっ、お好み焼き2枚だな。今焼くからなっ!」
屋台らしく威勢のよい返事と共にお好み焼きを焼く音が聞こえます。でも、何かが変なような気がしました。
「違和感が・・・匂い?」
感じた違和感。それは匂いでした。お好み焼きのソースが焦げる匂いがしなかったのです。その理由はすぐに判明しました。
「へいっ、お好み焼きピザ風味2枚お待ちっ!」
「へっ、ピザ風味?」
幟を良く見ると、確かに「名物ピザ風味お好み焼き」と書いてありました。お好み焼きという屋台にそんな変わり種があるとは予想もしていなかったので見落としていました。
「あ、ありがとうございます。はい、千円」
1枚500円だったので、千円札を出します。代わりにお好み焼きが入ったパック2つと割り箸を受け取りました。
「由紀、もしかして気付いていた?」
「あ、あそこが空いてるよ。早く食べよっ!」
空いているテーブルに走る由紀。あからさまに逃げたので気付いていたのでしょう。
「山無での祭りの時といい、今回といい、食べ物でギャンブルはしないで頂戴」
「ちゃんと売ってるんだから変な物ではないはずよ。お姉ちゃん、人生刺激がないと退屈しちゃうよ?」
桃の味のポテトチップスのように、売ってる物でも変な物はあると思います。まあ、買った以上はいただきましょう。美味しい事を祈りつつ割り箸を割るのでした。




