第三百六十五話 防衛戦
「それではゲームを開始します!」
案内放送と同時に、チームのメンバーが走り出しました。誰も守りの事など眼中に無いようです。
「あーあ、あんなに不用心に走って。あれじゃ良い的にしかならないわ」
「おまけに、ヘッドクオーター守る人がいないしね。由紀、私達で守るわよ!」
「一人で突っ走って突破できるはずないという事も分からないのね。ツーマンセルは基本よ、基本!」
ブツブツと愚痴を言いながら警戒する由紀。素人にそんな軍事の基本を求める方が無茶だと思います。私達?お母さんの教育を受けているので市街地での戦闘はお手のものです。
壁に人影が見えました。ジャケットの色は赤、敵と確認しました。胸を狙って射撃します。命中したみたいで、人影は慌てて走っていきます。丁度ライフがなくなったようです。
「お姉ちゃん、そっちはどう?」
「今の所1人撃破。由紀は?」
「2人撃破。前線はどうなってるのかしらね」
多分、派手に撃ち合ってるんでしょうね。なんて言ってる間にまた1人。冷静に胸を撃ち抜きます。今度は下がらないで前進してきました。しかし続けて数発命中させると撤退していきました。
更にもう1人攻めてきます。ジャケットが青なので敵ではなく味方でした。やられて回復に来た人のようです。
回復した人は、すぐに前線へと戻っていきます。その人と入れ替わるようにしてまた青いジャケットの人が駆けて来ました。
その後ろに赤ジャケットが詰めて来ました。狙いを定めて狙撃します。3発当てると引き返して行きました。次第に戻る人と追撃してくる敵が増えてきます。
「どうやら不利みたいね。由紀、大丈夫?」
「今のところ抜かれてないわ。敵も五月雨的に来てるから防げるわ」
相手も素人で助かりました。組織だって集団で攻められたら陥落していた可能性が高いでしょう。
「こう、ただ来る敵を撃つのってインベー○ーゲームを思い出すわ。画面に色セロファンが張ってあって色が変わるの」
「ちょっと由紀、あなた幾つよ!絶対に私より年上よね!」
それって、私も産まれる前だから確かな所は言えませんが40年近く前だったと記憶しています。なんて他愛のない話をしながら、ひたすら敵を撃ちました。
「終了です、戦闘終了。皆さんはブリーフィングルームに戻って下さい!」
互いにヘッドクオーターを攻略出来ないまま制限時間が過ぎてしまいました。こうなると撃破数で勝ち負けが決まります。
「終わっちゃったわ。前半10分、後半10分の延長戦は無いのかしら?」
「サッカーじゃないんだから・・・」
そんな他愛ない話をしながらブリーフィングルームへと戻るのでした。




