第三百六十三話 称賛
由紀は何発か外したようでしたが、無事に全てのターゲットを撃ち抜く事には成功しました。ドラゴンの断末魔が響くとドアが開きます。
「やったわ!次がラスボスのドラゴンサーガよ!」
「私が左、由紀は右を頼むわよ!」
ここまで来たら欲が出てきます。完全クリアを狙ってテンションが上がっているのが自分でもわかります。
「見えたわ!」
緑色の人型の体に6本の腕。口には蜘蛛のような牙が生えたドラゴンサーガが現れました。ターゲットは頭と喉、胸と腹に1つづつ。6本の腕に1つづつの合計10個も付いています。
「腕が終わったら、由紀は頭から。私は腹から撃つわ!」
「了解!お姉ちゃん、しくじらないでよ!」
上下に動く腕の動きを見極めて撃ちます。単調な動きしかしないようで、予測するのは簡単でした。すぐに3つのターゲットを撃ち、体のターゲットへ移ります。
「うわ、お姉ちゃんもう撃ったの?早すぎ!」
そう言う由紀も既に腕のターゲットを撃ち、頭のターゲットを撃ち抜きました。そこでファンファーレが鳴り、ドラゴンサーガは動きを止めたのです。
ドラゴンサーガの下にある扉が開き、まばゆい光が私たちを包みます。扉を抜けると、案内役のお姉さんが待っていました。
「おめでとうございます、完全クリアです!」
お姉さんの祝福と同時に多数の拍手がなります。ビックリして見回すと、沢山の人が降り場に来ていました。
「な、何でこんなに人が?」
「このアトラクション、プレイの様子が外のモニターに映し出されるのよ。完全クリアするのはかなり難しいから注目されたみたいね」
拍手する人達に手を振りながら答える由紀。ただでさえクリアする人は少ないのに、2人でクリアしてしまったので目立ってしまったようです。
「聞いてないわよ!」
「言ってないもん。あ、ランクもゴールドナイトね。」
「ゴールドナイト?」
ドラゴンサーガの塔は、得た得点でブロンズナイト・シルバーナイト・ゴールドナイトに別れるそうです。例え完全クリアしても、4人でやって得点が低い人がいればブロンズナイトで終わるということもあるとか。
「おめでとうございました、2人でクリアなんて初めて見ましたよ。またの挑戦をお待ちしています!」
「由紀、早く行きましょう!」
笑顔のお姉さんを他所に、由紀の手を引いて足早に去ります。ここは人の目が多すぎます。
「お姉ちゃん、普段から注目を集める売れっ子アイドル声優でしょうに・・・」
それは芸能人の私です。一般人の私は注目されたくないのです。




