第三百五十八話 家族との再会
桶川さんはすぐに見つかりました。いつものワゴンの前に立ってキョロキョロしています。
「桶川さん!」
「ユウリちゃん、無事で良かったわ!」
駆け寄るなり強く抱きしめられました。桶川さんにも心配をかけてしまいました。少し苦しいですが甘んじて受けましょう。
「っと、ユウリちゃんの家族も心配しているわ。私がいつまでも独占してはまずいわね」
「特にお母さんには心配かけました。早く元気な姿を見せないと」
冷静に操縦方法などをレクチャーしてくれましたが、内心は穏やかではいられなかったでしょう。解放され、ワゴンの助手席のドアに手をかけます。
「ああ、今日は後ろに乗ってね。助手席には荷物があるから埋まっているのよ」
「了解です」
珍しい事もあると思いつつ後部のスライドドアを開けました。その瞬間、私は中から伸びてきた手に引き入られ拘束されてしまいました。
「遊、無事で良かった、良かったわ・・・」
「お、お母さん・・・」
「ニュースで見た時は心臓が止まると思ったぞ!」
「お姉ちゃん、もう飛行機なんか乗らないで!」
ワゴンには、お母さんだけではなくお父さんと由紀も乗っていました。座席を対面式にしたワゴン車の後部座席で、3人に代わる代わる抱きしめられました。
そんな最中も走っていた車は止まり、桶川さんが後部ドアを開けます。
「着いたわよ。明日は休みにするからゆっくりとお休みなさい」
「えっ、大丈夫なんですか?」
私の記憶が定かであれば、明日は取材の仕事が幾つか入っていたはずです。この事件の事もあって余計に取材をしたいでしょう。
「向こうは事件の事も含めて取材したがるでしょうけどね。だけど生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされたストレスはかなりなはずよ。それを説明してもごねるようなら、金輪際そこからの取材は受けないわ」
「あ、ありがとうございます」
取材の依頼が幾らでも入って稼げるでしょうに、それを蹴って私の身を案じてくています。こんな社長に出会った私は運がいいと断言出来ます。
「ほら、早く入って休みなさい」
お母さんに促され家の中へ入ります。リビングに入った途端、足に力が入らなくなりました。
「あれ、何だか力が入らない・・・」
「緊張が解けたのよ。家の外ではユウリだったから、完全に緊張が解けてなかったのね」
一人では立っていられず、お母さんに支えられてやっと立っている状態です。立とうとしても足に力が入りませんでした。
「その状態では歩けないな」
お父さんはそう言うと、私をヒョイッと持ち上げました。




