第三百三十八話 過酷な定め
班分けされた他の解答者の人達もトラックに分乗し、クイズが開始されました。
「では問題。あらゆる物体を透過し、恒星から微量に放射される事から太陽の活動の指標にもなっている物質は?」
少し難しかったのか、少々の間を開けてボタンが押されました。回答権を得たのは3号車に乗る男性です。
「ニュートリノ!」
「正解です。3号車、一歩リードです」
一問目が終わり、続けて勝ち残りを賭けた激しい戦いが繰り広げられます。あらゆるジャンルから出題されるクイズが難なく解答されていきました。
「こんなバラバラなジャンルに答えられる解答者の皆さんは凄いですね」
政治・経済・歴史・科学・化学・人物・人物・雑学と問題作るのも大変と思うのですが、作成側は資料を見ながら作ります。しかし、それを答る回答者さんはそれらを覚えているのです。
「脳力試験でトップの回答率を誇ったユウリちゃんがそれ言う?」
「「「「「「「全く!」」」」」」」
スタッフさんと解答者さんが声を合わせて同意しました。それはそれ、これはこれと言う事で流して下さい。
そんな細かいやりとりを挟みながらもクイズは続き、いよいよラスト問題となりました。4号車が答えれば勝ち残り、替わって1号車が敗退するという状況です。自分達で正解しなくてはいけない4号車は崖っぷちに立たされました。
「最後になります。船のそく」
出題途中で4号車の回答者がボタンを押しました。正解ならば逆転勝ちという場面ですが、果たして正解する事は出来るのでしょうか。
「ノット!」
願いを込めて叫ぶ回答者さんでしたが、望みは叶いませんでした。間違いと告げるブザーが無情にも鳴ったのです。
「残念、1号車どうぞ」
次にボタンを押していた1号車に回答権が移りました。ここでも誤答ならばまだ4号車にも勝ち抜けの可能性が残されます。
「1.852キロメートル!」
「正解。船の速度を表すノット。1ノットはキロに直すと何キロが問題でした」
1号車の解答者は喜びに沸きました。反対に4号車は沈んでしまっています。勝者と敗者の差が僅差だったので悔しさはかなりの物でしょう。
「1号車の皆さん、私達の分も頑張って下さい!」
「ああ、優勝は俺達の誰かがいただく!」
それでも4号車の皆さんは自分達を降した1号車の皆さんに想いを託します。握手をかわす敗者と勝者に拍手が贈られました。
「さて、敗者の皆さんにラスベガス経由で日本に帰ってもらいます」
東からデコトラが走ってきて敗者の前に止まりました。このトラックで帰る事となるのですが、このクイズは素直に帰れるような甘い物ではありません。
「このトラックで帰って貰いますが、ガソリンは途中までしか保ちません。そのため、力が続く限りは押して行って下さい」
涙目になる敗者の4人。可哀想ですが、これが番組の決まりなのです。
「頑張れよ!」
「無事にラスベガスに辿り着いてね!」
西に行く敗者を見送り、勝者はモンスタートラックに乗り込み更に東へと走っていきます。去り行く敗者の姿が明日の我が身とならぬよう願い、勝者は次のクイズに挑むのでした。




