第三百三十六話 初日の夜のお約束
クイズに答えて進む権利を得ていた人達からは喜びの歓声が、まだ答えられず敗退が決まった人達からは悲嘆の声があがりました。
「改めまして、本選から司会進行を勤めますユウリです。」
「同じく本選から司会進行を勤める朝霞です。勝ち残った皆さん、おめでとう!」
勝ち組から歓声が、負け組からは勝者を祝福する拍手がおこりました。負けた者は勝者に想いを託すのです。
「では勝者の皆さんは明日のクイズに備えて、敗者の皆さんは日本への帰国に備えてお休みください」
そう伝えると、悲喜こもごもの感情が混じった一団はスタッフの用意したバスに分乗してそれぞれの宿舎に移動しました。私と朝霞さんもスタッフの人達と移動します。
「これは、聞いていた話より過酷だなぁ」
「全く、聞くとやるとじゃ大違いだな」
スタッフさんは少ない人数で参加者の管理やクイズの後片付け、次のクイズの準備をしなければなりません。長らく歴史の途絶えていたクイズなので、手順は残っていますが手探りな部分もあるのです。
「子供の頃好きだったから終わったのが残念だったけど、これでは続けろとは言えないなぁ」
「私は見たことが無かったので何とも・・・」
私だけ放送を見たことが無いので話に加われません。少しだけ疎外感を感じてしまいます。勝者組と敗者組は別々のホテルに宿泊。私と朝霞さん、一部スタッフも敗者組と同じホテルに入りました。
そして草木も眠る丑三つ時、私達は動き出しました。全室の照明がついて室内アナウンスが流れます。
「おはようございます。敗者の皆さん、ロビーに集まってください。これより敗者復活戦を始めます」
敗者復活戦はこのクイズの名物です。夜討ち朝駆けも当たり前との事です。
・・・この番組、解答者にもスタッフにも鬼畜ね。
「ルールは早押し。ロビーにある各自用の早押しボタンで解答権を得ます。3問正解で復活、先着4名が勝ち抜けとなります」
朝霞さんの説明を聞いて、解答者の皆が慌てて着替えています。さあ、問題を読みますよ。
「問題。イギリスの正式な国名は?」
1問目は簡単なボーナス問題です。こういったクイズに出る人達には常識レベルの問題なので完全に早い者勝ちとなります。
問題を読み上げてすぐに高校生くらいの女の子が走ってきました。上下を学校のジャージ着ています。ロビーに作られた自分の名前が書いてある早押し席について早押しボタンを押しました。
「グレートブリテン及び北部アイルランド連合王国!」
「正解!」
女の子は危なげ無く正解し、貴重な一勝を得ました。その後も次々と解答者が走り込んできてクイズは進んでいきますが、皆慌てていてすごい格好をしています。一応テレビに映るという事を忘れているのでしょうか。




