第三百三十四話 お仕事への試練
「お母さん、私のパスポートまだ有効よね」
「大丈夫よ。海外に遠征(戦闘)に行くなら、お母さんお勧めのベレッタがあるわよ」
家に帰り、念のためパスポートの確認をするととんでもない事を言われました。
「ユウリのお仕事でアメリカに行くのよ。そんな物騒な物はいらないわ」
とは言いましたが、向こうでは護身用の銃は携帯できるので日本で所持しているより自然な事です。しかし日本から持ち出す事は出来ないでしょう。私は銃の所持の許可を所持していませんし、飛行機内への持ち込みなど出来ないので空港で逮捕されるのごオチです。
「心配ないわよ、いくらでも誤魔化せるから。ただ、出発が横田か百里か沖縄になるのが欠点ね」
「それってまともな渡航じゃないわよね!スタッフと一緒に行くのよ!」
出発や機内での撮影もあるので、私だけ別の空港から出国する事は出来ません。
「それでは仕方ないわね。でもパスポートはどうするのかしら、本名バレるわよ?」
言われてみたらその通りで、ユウリが北本遊のパスポート使えば本名バレてしまいます。
「それは困ったわね。かと言って、受けた仕事を今さら断る事はしたくないわ」
一度受けた以上、そんな私的な理由でキャンセルしたくなありません。しかし、本名がバレてしまうのは出来れば避けたいところです。
「そうね、行き先はアメリカのみよね」
「そのはずよ。北米横断スペシャルクイズの撮影だけだから他の国や地域には行かない筈」
そう答えると、お母さんは何人かの相手に電話しました。相手の名前が時々ニュースで耳にする政治家さんの名前だということは知らなかった事にします。
「問題ないわ。出発までにユウリの名前でパスポートを取れるから」
「ちょっ、芸名でパスポートなんて取れるの?」
普通は取れないはずなのですが、かけた相手が相手ですしお母さんのやる事なので常識さんが息をしていません。
「知り合いの与党党首と、白い家の主に頼んだから大丈夫よ。私とお父さんのサイン色紙2枚づつで手をうってくれたから安心しなさい」
白い家?直訳するとホワイト・・・考えたら精神的にダメージを負いそうです。結果だけありがたくいただけ事にしましょう。
「ありがとうお母さん。そういう理由で夏休みは家を空けるわね」
「仕事だから仕方ないわね。お母さん、あの番組好きだったのよ。遊が司会するなんて誇らしいわ」
軽く抱きしめ、頭を撫でられました。自分が好きだった番組を娘が司会するのが嬉しかったようです。少し親孝行出来たようで私も嬉しくなりました。
「準備は万端だし、期末試験で赤点取らないようにしないとね」
「遊にその心配はしてないわ。アメリカでの撮影、楽しんでらっしゃい」
お母さんの言う通り、期末試験を難なく終わらせた私は、朝霞さんたちと共にアメリカへと飛んだのでした。




