第三百三十一話 当事者の処遇
ザワザワと煩かった講堂は、校長先生の登場で静まりました。それを確認した校長先生か徐ろに口を開きます。
「今朝の報道により、若手芸能人のKUKIさんがわが校の生徒だと明らかにされました。門前には報道陣が詰めかけていますが、通常の学園生活をおくってください。では久喜さんどうぞ」
校長先生が下がり、久喜さんがマイクの前に立ちました。深々と頭を下げ、大きく息を吸うと意を決して言葉を紡ぎました。
「皆さん、お騒がせして申し訳ありません。性別を偽り芸能活動を行い皆を騙していた事をお詫びします。私は正体がバレた時点でこの学校を去ろうと思いました。しかし、校長先生から生徒達に審判を任せるように言われ、この場に立っています。私はどうするべきなのか、皆さんの判断をお願いします」
気丈に言い切った久喜さんでしたが、声に恐れと動揺が感じられました。世間を騙していた彼女への風当たりは厳しいと思われます。ファンの人を騙していたのですから、それは当たり前なのです。
まだ成人していない女子高生が世間から非難され、冷たい視線に曝される。それに堪えるのは難しいことです。自業自得といえばそれまでですが、社会には望まない事もやらなければいけなくなる場合があります。
私はそれを知っています。他ならぬ私も世間の目を欺き声優として活動しているのですから。なので私は行動に出ました。発言するため挙手をし、その権利を得ます。
「一つ聞きたいわ。性別の詐称はあなたの発案かしら?」
「違います。私が女の子からラブレターやお花やバレンタインのチョコを大量に貰うからと、男になった方が人気出るからと………」
どうやら久喜さんのトラウマ刺激してしまったようです。答える声が段々と声が小さくなっていきました。表情も暗くなっていくのが目に見えてわかります。
「2月になると女子の目が怖いのよ、血走ってて。男子は嫉妬に燃えた目で見るし、学校行くのが恐くなって。それを言っても両親や先生はとりあってくれないし・・・」
半泣きしながら小声での呟きでしたが、全部マイクが拾っていました。切実な声を聞いた生徒の目が生暖かく見守る目に変わっています。
「久喜さん、苦労したのね。大丈夫、私達は皆あなたの味方よ!」
「そんな苦労背負わせた大人が悪い!」
「久喜さんは私達の仲間よ!」
性別を偽ったのは己の意志ではなく、大人達が利益のために強制したものだと伝わったようです。久喜さんは皆に受け入れられました。
「皆の総意は了解しました。学校側としては、久喜さん擁護に動きます。では、これにて全校集会を終わります」
受け入れられた感動に泣き崩れる久喜さんを校長先生が後ろに誘導し、教頭先生が集会の終わりを告げました。
そう、彼女は感動していました。トラウマで鬱になんてなっていません・・・多分。




