第三百二十六話 やれる事とやらなくてはいけない事
「弾丸かわせる程だから回避盾も出来るし、盗賊系もオッケー。気功使えるから前衛も出来そうね」
「言っておくけど、魔法は使えないわよ」
生産系だと調理・鍛冶・木工・彫金・調薬は出来ますが、まだ錬金術は出来ません。習得には時間がかかりそうです。
「それだけ出来たら、十分にバグキャラよ。大体、ゲーム内じゃなく現実で出来るっておかしいわ」
「それは両親からの遺伝と、教育の賜物ね」
私はあらゆる事に努力してるだけです。習得までの時間や程度の差はあれ、同じような真似は誰でも出来るはず。
「人外な遊の事だから、魔法も使えると思ってたわ」
「人外って失礼ね、流石に魔法はまだ使えないわよ!」
私は携帯小説に出てくる壊れキャラな主人公ではありませんから。人外認定は心外です。
「いくら遊でもそこまでは無理よねぇ・・・え゛っ、ちょっと、『まだ』って?」
「魔法陣の構築がまだ甘くてね。かなり難しいのよ」
魔力を練って陣の形を保つのは結構難しいのです。あれ?友子さん、口を開けたまま私を凝視してるのは何故でしょうか。
「私、遊の事を知ってるつもりだったけどまだまだ甘かったのね」
「他人の事を完全に知るなんて不可能よ」
「遊の辞書に不可能なんて言葉は無いような気がするわ」
ため息をつく親友を残し、電車で事務所に向かいます。今日も楽しくお仕事です。いつもなら桶川さんのお迎えが来るのですが、今日は経営会議があって来れないとの事。ちゃんと社長業もやってるのだと安心しました。
ユウリに変身して社長室に行くと、桶川さんの姿は見えず白い壁がそそり立っていました。その壁の向こうから悲痛な叫び声が聞こえてきます。
「デスクワークなんて嫌!現場に出たい!」
桶川さんは壁の向こうに居るようです。よく見ると壁は紙の束の山でした。恐らく、桶川さんが処理する必要がある書類なのでしょう。
「桶川さんおはようございます。凄い量の書類ですね」
「ユウリちゃんおはよう。いつも書類おしつ・・・やってる専務が風邪でダウンしたのよ。軟弱よね!」
・・・桶川さんが書類仕事押し付けてる専務さんがダウンしたので、本来やる仕事をやる羽目になったようです。これは同情の余地は全くありません。
「今日のスケジュールはちゃんと把握してます。電車で移動するので、桶川さんは心置きなく書類仕事に邁進してください」
「ちょっ、この地獄から私を助けて!ユウリちゃん、お願いよ!」
絶叫する社長さんを放置して部屋から出ます。部屋の中からは何かが崩れるような音がしたようですが一切関知いたしません。
桶川さんを振り返る事なく見捨てた私は、専用の控え室で軽く変装してテレビ局に向かいました。




