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第三十四話 由紀との攻防

「そろそろ帰るわ。長居してごめんね」


 帰ると言いつつも、残る未練を隠さない友子。それでも帰るべく立ち上がるのだから、理性では帰らなくてはならないとわかっていても欲望が納得しないというところかしら。


「まぁ、こうなると思ってたから構わないわよ。そうそう、明日は休むから明後日学校でね」


 ついでに、明日休む事を伝えておきます。会えると思ったのに会えないからうちに突撃するとか、友子ならば平気でやりそうです。


「休むって、お仕事?心配だから私も着いていっていいかしら?」


「仕事ではなく、高校にバイトの申請に行くのよ。学校側に隠して声優活動とか、まず無理でしょう」


 仕事でないと聞いて露骨に残念そうな顔をする友子。もし仕事でも、連れていくなんて出来ないから同じなのですけれどね。


 家の外まで友子を見送りに出て、姿が見えなくなったので家に入ろうと踵を返したその時。背後からこのタイミングで聞きたくない人物の声が聞こえてきました。


「お姉ちゃん、ただいま。どうしたのこんな所で」


 声の主である由紀は、玄関先に立っていた私を不審がっています。


「友子が来てたから、見送ってたのよ」


「友子お姉ちゃんが来てたんだ。私も会いたかったなぁ」


 由紀は友子と同類な為、私よりも話が合います。話していたら夕御飯までは言うに及ばず、明日の朝まででも話題が尽きる事はないでしょう。


「明日も学校なんだから、仕方ないわよ。私は休むから良いけど、友子や由紀はそうはいかないんだから」


 一応、友子の親友は私という事になっているので、由紀との話の間にも私がいなければならないそうです。私としては放置しておいて欲しいのですが、布教活動の一環ということで同席しなければならないと言われています。


「え、お姉ちゃん明日学校休むの?」


「高校に行く用事が出来たのよ。遊びじゃないのよ」


 由紀には学校を休む事を言っていませんでした。友子が来た理由を追及されたくありませんでしたし、隠す理由も無いので素直に高校に行くと言うと興味を無くしたようです。 


 由紀に続いて家に入りリビングでくつろいでいると、制服から部屋着に着替えた由紀が降りてきました。


「平日なのに友子お姉ちゃんが来るなんて、珍しいわね」


 由紀はまだ、友子が来た事に違和感を覚えているようです。平日の放課後にうちに寄る事は殆どないので、何かあると邪推しています。


「帰り道で明日休むと伝えたら、何で休むのかと説明を求められたのよ。だから高校に行くと説明したわ。それと友子の受験の話ね」


「友子お姉ちゃん、お姉ちゃんと同じ学校志望よね。レベル高いから大変ね」


 私は推薦が決まっているけど、私が行く高校は学力の高い進学校。本当なら勉強浸けになるのだけれど、友子もかなり頭が良いので楽勝みたい。


「あの子は大丈夫よ。由紀は再来年どうするの?」


「私には無理よ。テニスが強い高校を狙うわ」


 即答する由紀。親の方針がやりたい事をやるというものなので、テニスで名を広めている由紀はテニスでの推薦入学は規定路線です。


「それが良いわ。やりたい事をやるのが一番よ」


 とは言ったものの、私が一番やりたいのは何でしょう。勉強?声優?思わず考え込んでしまいます。


「お姉ちゃん、どうしたの?」


 いきなり黙り込んだ私を心配する由紀。姉を思いやってくれる、優しい妹です。だけど欲を言うならば、もう少しアニメへの布教を控えてくれると姉は嬉しいのですけれどね。


「ああ、ごめんね。何でもないわ」


 今は考えない事にしましょう。今私がやるべき事は、正体を隠しきって「悪なり」の収録を全て終わらせること。


 出来れば、この子にそれを打ち明ける前に終わらせたいのだけれど。アニメの収録って、どれくらいの期間がかかるのでしょうか。今度桶川さんに聞いてみましょう。





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