第三百十七話 とりあえず顔合わせ
新たな仕事を受ける事になりましたが、既に入っている仕事を疎かには出来ないのでスケジュールを調整してもらいます。明日以降まとまって開いた時間を撮影に回す事になりました。
「開いた時間全部撮影だと、学校へは・・・」
「暫く行けないわね。病欠という形にして誤魔化しましょうか」
学校に行けないのは残念ですが、やると決めたのは自分なのでお仕事優先でいきます。お母さんに電話して事情を説明すると二つ返事で了承してくれました。
その後は本日入っていた予定通りのお仕事をこなします。取材にトーク番組、ドッキリの仕掛人と今日の仕事を消化していきました。
「ユウリちゃん、すっかりこっち側の人間になったわねぇ」
「本当ですよ、去年はブラウン管の向こう側の人間だったのに」
昨年の私はテレビを見る側でした。しかし、今の私は見る人間ではなく、見られる人間となっています。
「ユウリちゃん、今ではブラウン管なんて無いわよ?」
「そこツッコミますか!それ言ったらレンタルビデオとかファミ○ンショップもアウトですよ!」
などと漫才じみた会話をしながら帰宅しました。桶川さんとならばお笑い界への進出も出来そうです。
そして翌日。朝から桶川さんと映画の撮影へ向かいます。現場は昔飛行船の係留に使われていた川原でした。
監督さんと顔合わせをし、台本を受けとります。と言っても殆どは格闘シーンで、そこは全てアドリブです。覚えるセリフは本当に少ないのでその点は楽そうです。
その後共演する人達に会わせて貰いましたが、濃い人ばかりでした。
赤い鉢巻したカラテカさんに、赤い道着を着た金髪お兄さん。迷彩服着た軍人みたいな人。この辺はまだ良いのです。隈取りしたおすもうさんに仮面付けて長い爪持った人、腕を延ばせるヨガの達人も居ました。極めつけは、緑色の肌の野性味溢れる人です。
皆さんには演舞という事で皆の得意技とか披露してもらいました。
クルクル回りながら数メートル飛翔、その間回し蹴りとか。しゃがんだと思ったら3メートルほど蹴りながら飛び上がるとか。素早く前転してきて鋭い爪を突き出すとか。格闘家と言うより軽業師という方が合っていそうな気もします。
こういう人達とガチで闘えと言われたら、殆どの女優さんは逃げ出すでしょう。この企画をだした人間の正気度を問われても文句を言えないと思います。
その後私に逆立ち状態から飛翔しながら回し蹴りを出来るかと問われたのでやって見せました。
人間、やれば出来るものです。他にも幾つか使う技を教わり、しっかりとマスターする事が出来ました。次回から本格的に撮影に入るそうです。




