第三百十四話 ユウリのお宝
「今日のゲストはこの方です、どうぞ!」
「声優であり、マルチタレントとしても活躍中のユウリさんです!」
司会の方に呼ばれてセットへと出ていきます。見学者の人達からざわめきが起きました。予告されていたゲストとは違っていたからでしょう。ゲストの変更を告知しなかったのは番組側がサプライズを狙ったのでしょうか。
「ユウリさんはデビューしてまだ1年ですが、飛ぶ鳥を群れごと落とす勢いですね」
「たまたま良い役に恵まれましたから。それに、応援してくださる皆さんのお陰です」
紹介が済み、持ってきたお宝が布を被された状態で運ばれてきました。司会者の方にも何を持ってきたか知らされていないようで、早く見たいとウズウズしているようです。
「では、お宝オープン!」
台車から布が取り払われ、青く塗装された西洋甲冑が姿を現しました。観客席からも感嘆する声が上がります。
「これは大きなフィギュアですね」
「烏賊田さん、これフィギュアじゃないですよ!」
司会者の言葉をアシスタントの女性が改めます。全金属製で実用品だと気付いたようです。
「このお宝はどうされたのですか?」
「父の持ち物を借りてきました」
普段ならここでお宝に関するVTRが流れるのですが、今回は急遽決まったので間に合わずADさんが口頭で説明しました。(詳しくは番外編を参照)
一通りの説明が終わり、鑑定士の人達が鎧を検分していきます。
「人間国宝の山原雄海刀匠が鎧を作ったなんて初耳ですよ。本物なら凄い発見ですね」
「作った理由がちょっとアレですけどねぇ」
人間国宝の匠がコスブレ衣装作るなど、普通は思いもしません。そうこうしていうちに鑑定額が出たようで、鑑定士の先生方がそれぞれの席に戻りました。
「それでは希望鑑定額をお願いします」
「はい、三千万円で」
家が一件買えてしまいます。そんなにしないと思うのですが、両親の出した額がこの額なのでそのまま提示しました。
「では、オープン・ザ・プライス!」
電光掲示板に0が並んでいきます。百万の位を超えても止まりません。一体いくらまで上がるのでしょう。
「一億五千万です!」
表示された金額は億を越えました。弾痕のついた中古の鎧に、豪邸一件建てられる値段がついてしまったのです。
「人間国宝山原雄海刀匠の作に間違い御座いません。いい仕事してますね~。玉鋼で作られた唯一無二の逸品。これでも安いと思います」
「普通の鎧の相場は250万~300万です。それに人間国宝の作であること、ギ○ンのフィギュアとしても秀逸であることを加味して、この値段にしました。キ○リア様に献上するに値する一品だと思います」




