第三百十三話 代打のお仕事
「最悪、創造主である友子に押し付けるわ。この後仕事だから着替えて行ってくるわね」
謎物質の事は一旦忘れて、お仕事に頭を切り替えます。ユウリの姿になって帽子とサングラスで変装します。歩きで駅前に出てタクシーを拾いました。
「テレビ塔京までお願いします」
普段は桶川さんのお迎えで仕事先に向かうのですが、今日は直接テレビ局に向かいます。安全安心の運転で何事もなくテレビ塔京に到着し、そのままスタジオに向かおうとしたのですが呼び止められました。
「すいません、入館許可証をご提示下さい」
変装したままだということを忘れていました。帽子を取って長い髪を上着から出し、サングラスを外します。警備員さんはそれで私がユウリどと認識してくれました。
「ユ、ユウリさんでしたか。失礼しました!」
「いえ、変装したまま入った私が悪いのです。お仕事お疲れ様です」
深々とお辞儀する警備員さんにお辞儀し返し、スタジオに歩きます。その番組への出演は初めてですが、場所は予め聞いておきました。
「これはこれはユウリさん、いきなりの依頼に応えていただきありがとうございます!」
スタジオに入るとすぐにプロデューサーさんが駆け寄ってきました。この仕事、予定されていた物ではなく出演者が急に来れなくなったので代役で呼ばれたのです。
「プロデューサーさん、よろしくお願いします。ゲストの方が急に来れなくなったとか。大変でしたね」
理由はもちろんあるとは思うのですが、ドタキャンなんて誉められた行為ではありません。せめて代役をその芸能事務所で手配するとかすれば良いのですが、それも無かったそうです。
「ありがとうございます。相手が大手のプロダクションで、強く出れないんですよ。その点桶川プロさんは大手にも関わらず無茶を言ったりしないし、協力もしてくれます。本当に感謝してますよ」
問題があるとはいえ、桶川さんは基本善人てす。あの人が無体な事をしたりする訳はありませんし、困っている人がいれば助けようともするでしょう。
勿論、こうしてコネを作れば仕事が増えるという打算もあるとは思いますが、芸能事務所の社長としては当然の判断です。
「ではお宝を鑑定人に預けてきますね」
この番組はゲストや視聴者こ持ち込んだお宝を鑑定人の人が調べて鑑定額を算出するという番組です。お母さんから預かってきたお宝は鞄に入っているので、スタッフさんに預けます。
「おお、お願いします。それではまた後程」
プロデューサーさんと別れ、お宝担当者にお宝を預けました。鞄から鞄以上に大きなお宝が出てきたので担当者の方が目を白黒させていましたが、突っ込みは無しでお願いします。




