第三百十話 Who are you?
何とか徹夜の危機を乗り越えた翌日、今日は学校を休んで1日仕事です。遊のまま電車に乗って事務所に向かいました。
吊革に掴まらなくても体が微動だにしない混雑に閉口しながらも最寄り駅に到着します。こんな混雑を毎朝耐えるサラリーマンのお父さん方の忍耐力はチート級だと思います。
受付を遊用の身分証を見せて通り、ユウリの控え室で身支度を整えます。社長室に行くと、すでに桶川さんとフーちゃんが待っていました。
「おはようございます」
「おはよう。早いわね、ユウリちゃん」
「ユウリさん、おはようございます」
挨拶をかわした時、ふと違和感を覚えました。しかし、直ぐには言及せずに今日の予定を確認していきます。
「ユウリちゃん、どうかしたの?」
「何でもありません、続きをお願いします」
私が不審感を抱いた事を悟ったのか、桶川さんが聞いてきました。それを聞くのは後でも支障はないので、ここで聞いて時間を食うよりも仕事が一段落してから聞くことにしました。
「では行くわよ。今日は件数が多いから覚悟してね!」
「桶川さん、くれぐれも安全運転でお願いします。フーちゃんにトラウマ植え付けないで下さいよ!」
事前に釘を刺しておこうと思ったのですが、桶川さんは顔をそらしフーちゃんの顔色は青くなりました。可哀想に、フーちゃんも既に洗礼を受けていたようです。
多少のスリルを味わいながらも仕事先に移動しました。桶川さんの辞書に安全運転という言葉は無いようです。
「ユウリさんお疲れ様でした。飲み物をどうぞ」
フーちゃんは仕事を終えた私にドリンクやタオルを出してくれます。仕事先での顔繋ぎも特に問題なく、今日の日程は恙無く消化されました。
奇跡的に事故にあうこともなく事務所に帰還し、社長室に落ち着きました。
「ユウリちゃんお疲れ様」
「ユウリさんお疲れ様でした。先輩の仕事ぶり、大変参考になりました!」
桶川さんとフーちゃんから労いの言葉をもらいます。そんな彼女達に笑顔で応えます。
「ありがとう。桶川さんとフーちゃんもお疲れ様でした。ところで、1つ聞きたいんだけど良いかしら?」
「はいっ、私に答えられる事ならばなんなりと!」
答えてくれると言ったフーちゃんに、私は朝から思っていた疑問を投げ掛けました。
「そう。それでは聞くけど、貴女は一体誰なのかしら?」
「「えっ・・・」」
私の質問を受けた2人は、答える事なく固まりました。




