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第三百六話 後輩声優

「フーちゃんを社長室に寄越して頂戴、ユウリちゃんとの顔合わせさせたいから」


 どうやら私の希望は聞いてくれないようです。まあ、会社の上司というかトップの命令なので聞かないといえ選択肢は初めから無いのですが。


 少しして入ってきたのは、黒髪を肩で切り揃えた小柄な少女でした。小刻みに体が震えているのは緊張してるからでしょうか。


「ユウリちゃん、この子が新人のフーちゃん。あなたと同様プロフィールは非公開にするわ」


「は、はじめまして。今年デビューしたフーです。ユウリ先輩の元で色々と勉強させていただきます!」


 ぺこりと頭を下げて挨拶するフーさん。先輩と呼ばれる事に感慨はありますが、私もまだ声優となって一年しけ経っていない未熟者です。


「先輩と言われても、私もまだ2年目だから新米よ。これからよろしくね」


 にっこり微笑んで右手を差し出すと、両手でしっかりとホールドされました。私を見つめるフーさんの顔が上気しているように見えます。


「ユウリ先輩は確かに2年目かもしれません。でも、ロザリンド役やクラウン役をしっかりと演じてクイズの司会までしてるんです。新米とは言えませんよ!それにあの声!あれだけの使い分けはユウリ先輩以外で出来るのは朝霞さんだけです」


 誉めてくれるのは嬉しいのですが、その勢いに引いてしまいました。助けを求めて桶川さんを見ますが、苦笑いするだけで助けてくれる様子はありません。


「フーちゃんはユウリちゃんのファンだと常々言っていたのよ。その本人に会えたのだから、舞い上がるのは仕方ないわね」


「社長のお陰で夢が一つ叶いました。桶川プロを選んだ、当時の私を誉めてやりたいです!」


 聞けば3年前から声優養成所に通い、声優として修行を重ねてきたそうです。高校生になったこの春から声優の活動を親に認められデビューしたと嬉しそうに教えてくれました。

 デビューは私の方が先ですか、声優としての基礎知識は彼女の方が豊富そうです。


「ところで、そろそろ手を離してくれないかな?」


「ああっ、すいません、すいません、すいません!」


 手を離し何度も謝るフーさん。言わなければいつまでも手を握っていたかもしれません。


「ユウリちゃん、あの仕事受ける事をメールしたら原作者さんやスタッフさんが会いたいんだって。今から行くわよ。フーちゃんもね」


「はい」


「はいっ。お荷物お持ちします!」


 嬉しそうに荷物を持ち着いてくるフーさん。と言っても大した荷物は無くて、念のため持っていく遊の着ていた学生服の入った鞄くらいです。


 都内某所にあるアニメ制作スタジオに車で移動しました。近くのコインパーキングに車を停めて建物に入ろうとした時、それは起こりました。

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