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第二百九十八話 うっかり京華さん

 チョコピーチを一口噛ります。甘いチョコレートにほんのり酸っぱい桃の味がマッチして美味しい一品に仕上がっています。

 私も由紀も完食し、家族揃って並ぶ屋台を見ていきます。桃ゼリーやピーチティー、桃のドライフルーツを買い込みました。


「いらっしゃいいらっしゃい、甲州土産に桃の木を使った一刀彫はいかが!」


 定番の招き猫や鮭をくわえた熊、大黒様など、色々な木像が並んでいます。どれも細部まで彫り込んであり、彫師さんの情熱を感じられました。


「これは見事だなぁ」


「まるで生きているようね」


 木像を売る店の最奥に、一際存在感を放つ像が鎮座していました。等身大の女性の像です。中国の仙女様のようで、穏やかな表情で私達を見下ろしています。


「見事でしょう、千年の樹齢を誇る桃の木から彫られた物なのです。時の帝が天下安寧を願って若い仏師に彫らせたという逸話が残っているのですよ」


「どこかで聞いた事がありそうなお話ねぇ」


 由紀が首をひねりますが、こういったお話はありがちで類似して話はよく聞くものです。、気にしていたらキリがありません。


 イベント会場の中を一通り見回り、叔母さんたちと合流しました。そのまま叔母さんの農園に戻ります。


「強烈なイベントだったわね」


「他には無い刺激があったわ」


 由紀も染々と頷きます。特に食べ物系が個性的でした。方向性が著しく間違えてるとしか思えませんでしたが、このイベントを印象付けるという点では間違いなく成功と言えるでしょう。


 叔母さんの家につきリビングに落ち着きます。京華さんも居るのですが元気がありません。見兼ねた由紀がその理由を訊ねます。


「京華さん、どうしたの?」


「サイン、もらい忘れた・・・」


 京華さんは出掛ける前に「サインを貰う」と言って色紙を用意していました。しかし、私は彼女にサインをした覚えがありません。


「京華ちゃん、後で手に入れて送ってあげるから。だから元気を出しなさい」


「ユウリさんのサインなんて、簡単に手に入るはず無いじゃない!」


 お父さんが慰めるのですが、落ち込む京華さんは聞いてくれません。


「私たちはコネがあるから心配いらないわよ。・・・もしかして姉さん言っていないの?」


「俺は小説家で妻はイラストレーターなんだ。まあまあ売れて知名度もあるから、ユウリちゃんからサインを手に入れるくらいは問題ない」


 実際には目の前にいるので、サインをあげようと思えばあげる事は出来ます。しかし、例え親族でも不用意に正体を明かす事は出来ません。


「いくら小説家の先生といっても、タレントさんは畑違いなのだからコネは無いでしょう」


「ユウリさんと朝霞さんは声優よ、朝霞さんはお父さん原作のアニメにも出てたから懇意なの。これが何よりの証拠よ」


 スマホで正月に撮った写真を見せる由紀。家族の皆と朝霞さん、桶川さんが写っています。

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