第二百九十四話 お祭りレポート
合流する為桶川さんに電話しようと携帯を取り出した私は、通話することなくすぐに仕舞いました。何故ならば、すぐ目の前に見慣れたワゴン車が停めてあったからです。
「お待たせしました」
「よくここに停まってるとわかったわね」
運のよさと偶然の賜物です。ご都合主義ともいいますが。ともあれ、車の中でユウリへと変わり桶川さんと会場へと向かいます。撮影スタッフとは主催者テントにて合流することになっているのです。
「おい、あれ!」
「ユウリちゃんだ!写メ撮らなきゃ!」
テントに向い駐車場から出た途端、あっという間に人だかりが出来てしまい移動し辛くなってしまいました。主催者テントに併設されていた警備用テントから来た警備の人が誘導してくれなければ、立ち往生していたでしょう。
「おおっ、本当にユウリちゃんが来たんですか!」
「今日1日よろしくお願いします」
どうやらスタッフさん達は半信半疑だったようで、私の姿を見ると驚いています。興奮するスタッフさん達を宥め、顔合わせと打ち合わせを終えました。基本的には気の赴くままに会場内を歩いてレポートすればよいとのことです。
「では始めましょうか」
機材を抱えたスタッフさんを引き連れ、気の向くままに会場を歩きます。色々な露天が出ていて見ているだけで楽しくなりました。
桃から作ったお酒に桃のドライフルーツ、桃のシロップ漬けにピーチティー。桃の木や葉っぱを使った工芸品もあり、レポートのネタに事欠きません。
「これより中央広場にてイベントを開催します」
「何かイベントを行うようです、行ってみましょう」
場内に流れたアナウンスを聞き広場に向かいます。そこには大きなモニターが設えてありました。既に多くの人が見物しており、私達はその後ろからその様子を撮影します。
「ではこれより『暴走上等、止まってなんかいられねぇ!桃の姫を救い出せ!』を開催します!」
大きな拍手がおき、モニターに見たことのある画面が映りました。おつきのキノコと共に何度も拐われる姫を助け出す世界的に有名なあのゲームです。
「ルールは単純です。右ボタンとBボタンが押したままになっていますので、ジャンプだけでゴールを目指してもらいます。長く生き残った方が優勝です。では予選スタート!」
次々と挑戦者が挑んでいきます。始めは順調に避けていても、歩いてくるキノコやカメに当たってしまったり穴に落ちて脱落してしまいます。
そんな中、最後まで走り抜けた強者が現れました。
「1-1をクリアする強者が現れました。なんと飛び入りの女の子です!」
壇上で手を振る強者を見て脱力してしまいました。妹よそこで何をやってるのかしら?




