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番外編 夫婦の出会い⑲

「式はどうする?」


「資金次第ねぇ」


 結婚の具体的な話し合いの段階まで漕ぎ着けた俺達が次に考えなければならないのが軍資金の問題。バイトである程度の資金はあれど、一人での生活を想定していた為そう多くはない。


 彼女の方もイラストでの収入はあれど、趣味の戦場巡りで浪費してしまっていた。小説家という収入が不安定な職業なのだから、ある程度の余裕は確保しておきたい。


 結婚披露するのが数少ない友人や彼女の姉夫婦のみだから小規模ですむとはいえ、それなりの費用はかかるのである。しかし、女性にとっては一世一代の晴れ舞台である結婚披露宴をしないという選択肢はない。


「ここで頭を悩ませても仕方ないし、資金の確認をしましょう」


「そうだね」


 大体の所は把握しているが、正確な金額を知っているに越したことはない。俺達は銀行に赴き残高を更新して通帳を確認した。


「はぁっ?何だこりゃ?」


「間違えて無いわよね」


 通帳を確認した俺達は目を疑った。残っている残額の桁が変わっていたからだ。何度見てもその金額は変わらない。頬をつねってみたが、痛いから夢でもない。


「そうだ、どこから送金されてきたんだ?」


 通帳にある送金元を見てみると、そこにはカブ ジョウダンシャ との表記が。俺と彼女に多額の送金をしたのは俺のデビュー作を出版する冗談社だった。


「出版社か。セリカスタンで先行出版されたからその印税なのか?それにしては多すぎるだろう!」


「兎に角行ってみましょう!」


 確かにここでウダウダ考えるよりも、出版社に行って事情を聞いた方が早い。電車と人力車を乗り継ぎ冗談社へと乗り込んだ。


「いらっしゃいま・・・ちょっと、ちょっと!」


 強行突破されて慌てる受付嬢を無視して編集部へ向かう。階段をかけ上がり、目的の部屋へと走り込んだ。

 扉を勢いよく開けた俺達に注目が集まった。その視線を無視して編集部を見渡し、目的の人物を探し当てた。


「ちょっと聞きたい事があるんだが!」


「おや、これはこれは北本大先生。ご結婚なさるそうで、おめでとうございます」


 にこやかに微笑み拍手する担当編集。周囲に居る編集者も笑顔で「おめでとうございます」「お幸せに」と祝福してくれた。


「ありがとう、ありがとうございます。・・・って、嬉しいけど用件はそれじゃない!」


 俺は通帳を取りだしページを開いて突きつけた。この数字の理由を説明してもらわなければならない。

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